289 :ひゅうが:2012/01/24(火) 21:58:40
乙です!
私もネタ(とするには少し重いですが)として小論を投下いたします。


 ネタ――いつか来るかもしれない日?~技術革新による対策、その一例~

――宇宙暦790年 自由惑星同盟 首都ハイネセン

「では、賛成の方は挙手を――」

自由惑星同盟最高評議会では、委員全員が出席した会議が開かれていた。
審議されている議案は多岐にわたる。
中でも目玉とされていたのは、同盟憲章改正の発議に対する政府案であった。
そのほかにも、税制や地方行政法の改正案など32法案が上程されている。
その中に、この法案はあった。

「賛成多数と認めます。よって、『母体衛生保護法』改正案は成立しました。」

法案は成立した。

この『母体衛生保護法』修正案には、発議者の名をとってサンフォード条項と呼ばれる項目が含まれていた。
その骨子は、「不妊治療における人工子宮による代理出産」を可能とすること、そして「兵役経験者の精子・遺伝子バンクへの強制登録」と「対宇宙放射線遺伝子修復の許可」であった。

これは、それまで自由惑星同盟の人口増加を抑制していた慢性的な戦死者に対する救済策として提案されたもので、遺伝子工学と生命工学に関する遺失技術を保有していた日本帝国の存在があって成立したものであった。
人工子宮に関しては議論が多く制限が課されたものの、日本側技術による細胞バンクを利用しての精子や卵子の生成や宇宙放射線による生殖細胞損傷の修復に関してはこれといった反対がなく、法は多数の議案の中に埋没することになる。

しかし、成立にあたり、人口増加に対する貢献をもって減税措置をとっていた同盟の方針も維持されたことや非嫡出子扱いながら細胞片が残っていれば亡き伴侶の子を授かれるという技術的な進歩もあり、生臭い理由ではあったが自由惑星同盟の人口は横ばい状態から一転し増加に転じる。
この「790年代ベビーブーム」は、その後の諸改革とあわせ、自由惑星同盟の復活の端緒となったのであった。

この風潮に「日本人は未亡人の涙も金に換える」「倫理を無視して市民を戦争機械とする」・・・といった批判が提起されたものの、大半の人々の一睨みで沈黙を余儀なくされたのは、少なくとも自由惑星同盟という国家にとっては幸いだったのだろう。
宇宙暦830年には、銀河系サジタリアス腕の総人口は、200億を突破しなお増加を続けていたのだから――

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最終更新:2012年01月30日 20:00