968 :ひゅうが:2012/02/01(水) 12:50:31


銀河憂鬱伝説ネタ――「演説(抄)」


――皇紀4249(宇宙暦789)年2月25日 銀河系 白鳥腕
  日本帝国 帝都宙京

「議長ならびに内閣総理大臣閣下、そしてこの国の総意に基づき国家元首としての義務と施政の内閣および議員への委任を成し遂げておられる今上陛下。
この新たな友邦の最高立法機関である帝国議会の席上で拙いながらも自由惑星同盟を代表し意見を述べさせていただくことは私の無上の喜びです。
この機会を与えてくださったすべての方々にこの場を借りて感謝を捧げます。

皆様、かつてアメリカ合衆国という国家が真に理想に輝いていた時代、ある大統領がこのような言葉を残しております。

「人民の、人民による、人民のための政治」。

また、欧州大陸のドイツではこのような言葉が残されています。

「自由とは、自由を共にするための自由なのである」。

いずれも歴史の皮肉であるのかその後の展開はご存知の通りですが、私はその理想が明治維新という大変革を経られた貴国にもたらされ、長きにわたって花を咲かせたと考えております。この議会政治を存続させていること、そして国風にあたって先端と復古が両立されていることはその証左であります。
対して地球統合政府と銀河連邦の両者が結局は腐敗を極め、理想を追う者は新たにわが自由惑星同盟を興しました。
貴国の言葉には「和魂洋才」というものがあると聞いております。
それが近代的な産業文明を受け入れるにあたって貴国が成し遂げたことを凝縮した言葉であるとも。

我が国は、銀河帝国の圧政から逃れた人々を市民とし、一から国を築き上げなければなりませんでした。
また、我が国は孤独でありました。
しかしながら、国交の締結とあわせ我が国は得難い友邦を得ることになりました。
我が国市民がルドルフ・フォン・ゴールデンバウムにはじまる銀河帝国により奪われた地球時代以来の文化的累積、そして科学技術上の発見などを政治的理由によって制限していない貴国のそれは、我が国にとって古代ギリシア・ローマの賢者たちの書を発見したヨーロッパの人々の感想のようなものなのです。

我が国はこれより貴国の明治維新のごとく、同盟の魂に則りつつあらゆるものを見直すことになるでしょう。

皆様。私たちは今どんな場所に立っているのでしょうか。
かつて、地球時代において文明の画期は異なる二者、そして異なる海が結ばれる際に生まれました。
今や、貴国の有する広大な海と、かつて銀河連邦が領有を試みながらも成し遂げられなかったわが自由惑星同盟のサジタリウス腕は経済的・文化的な交流をはじめようとしています。
そう、スエズ運河やパナマ運河によってなされたように。
かつての銀河連邦が領有した領域とは異なる二者の出現と交流により、人類史はまさに画期を迎えたと考えてもよいのではないでしょうか。
歴史的な必然によりこの貴国の最も新しい帝都の議場を発し、自由惑星同盟の首都ハイネセンに至る巨大な波は、その力の奔流をフェザーン回廊に到達させ、その末端は銀河帝国の辺境星系にまで到達することでしょう。

願わくば、日本・同盟の両国が今後も協同し、その魂の部分での交流をさらに深化させんことを。


さて、我々自由惑星同盟の特命全権交渉団は数週間後に帰還いたします。
帰還以後は、この旅程によって見聞した全てと収集した資料をもって同盟政府及び市民に対し貴国のことについて言を尽くして語ろうと思っております。

歴史がこの出会いにいかなる判定を下すかはまだわかりませんが、私はこれが喜ばしく輝かしいものであると確信するものであります。」


――トリューニヒト演説抄 より

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最終更新:2012年02月01日 20:25