972 :ひゅうが:2012/02/01(水) 13:23:24


銀河憂鬱伝説ネタ――「共同宣言と経済効果」(短説明文)


――皇紀4249(宇宙暦789=帝国暦490)年3月1日


この日、フェザーン自治領に到着した日本帝国の正式な全権委任代表団と、銀河帝国のノイエシュタウフェン公を団長とする代表団は、数時間の討議を経てそれまでの実務者協議により作り上げられていた「共同宣言」を承認するに至った。

要旨は下記の通り。

1、 日本帝国と銀河帝国は互いに国家ないしはそれに準じる団体であることを承認する。
2、 日本帝国と銀河帝国は双方に大使を派遣し外交関係を構築する。
3、 両国の関係については基本的に平和裏な協議により決定されるものとする。
4、 自由惑星同盟に対する日本帝国の態度については銀河帝国は一時棚上げとする。
5、 両国は経済的関係を構築するものとする。

このような「日本・銀河帝国共同宣言」の内容はとりあえず外交関係を構築し、経済関係についても同様、という風のものだった。
当然だろう。
銀河帝国側の強硬派は「日本帝国の服属」を要求し、日本側も「自由惑星同盟の承認を前提とした平和条約の締結」を提唱していたのだから。
そのために、銀河帝国は日本の国家元首を「伝統の守護者」として遇するも日本政府の扱いはフェザーン自治領以上銀河帝国政府以下という微妙な扱いをとることになる。

対する日本側も、銀河帝国については「銀河連邦継承国家のひとつ」として扱い、フェザーン自治領と別個の外交交渉を開始している。
一部の帝国貴族が企図したような、日本製品(特に美術品)を用いたボロ儲けの線はこれで阻まれることになる。
もっとも、日本企業と同盟企業が合弁企業集団を形成しはじめるとフェザーン資本も必死の競争を余儀なくされており彼らの付け入る隙はほとんどなかったのであるが。

この動きに対して、帝国の中央貴族と辺境貴族の間では不協和音が生じつつあった。
フェザーン回廊を通してもたらされる同盟側と日本企業製品による恩恵は大貴族所領を通るたびに値段が関税で上乗せされ、彼らはその恩恵に浴すことができなくなっていた。
しかし、航路としてはイゼルローン回廊を通った方が日本帝国にははるかに近い。
ゆえに辺境貴族は、停戦とイゼルローンの航路解放を主張したのだ。
対する中央貴族は、奔流のごとく流れ込む日本製品に最初は脅威を感じたが、関税収入と自己の経営する御用企業での販売も許可されていることからのちにその恩恵にあずかる側に回った。
彼らは、関税に加え、日本に対する軍事圧力とあわゆくば同盟側対日貿易からの締め出しと新たな所領獲得をもくろみ、イゼルローンからの同盟辺境星域への出兵を考え始めた。
この動きに乗る帝国軍の一部と、内務省や国務省などの政府の主流派との対立があわさり、さらには共同宣言直後に公になった現皇帝フリードリヒ4世の退位の意向もあって銀河帝国は混沌の中の平和を享受することになった。

ここで特筆すべきなのは、真に大貴族ともいえる人々は自重を考えていたということである。
しかしそれは、長い放漫経営の果てにフェザーン資本に半ば乗っ取られていたような状態だった中小の貴族たちにとっては、目の前につるされた肉を取り上げられるような行為だったのである・・・。

不満はたまり続ける。爆発の時を迎えるまで――

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最終更新:2012年02月01日 20:30