685 :名無しさん:2012/02/09(木) 10:10:21
【降伏した人達の裏話】
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「ふむ、成る程、大体まとまったか」
満足げに山本は頷いた。
先だっての海賊討伐において、殆どの海賊は殲滅されたが、逸早く降伏して臨検を受けた者達がいた。
無論、彼らとて一緒に行動していた以上、海賊と何らかの関わり、おそらく当人達も海賊行為を行っていたとは思われるが、重要なのは彼らの持つ情報である。
第一悌団と名づけられた彼らはきちんとした統制を持っており、旗艦「イヴァンのばか」号の指示に従い、全艦が離脱、投降した。
また、彼らの旗艦が同盟軍の標準型戦艦であるなど同盟の艦船も多かった。
事前に手に入れた情報から薄々と察しながら取り調べを行った結果、彼らの大半は本来は同盟軍の正規軍士官であり、その殆どは冤罪や上官の罪の擦り付けなどやむをえず同盟軍を離れた者や或いは信望があった彼らについていった者達である事が判明したのである。
そうした彼らに対して、一つの提案が大日本帝国軍情報部よりもちかけられた。
『真っ当に生きるつもりはないかね?』
無論、タダではない。
彼らは当然ながら軍との繋がりが未だにある者も多い。
単純に同盟軍士官学校の同期生というものから職場での同僚など様々だし、親族が軍人という者もいる。
「あいつがそんな事をするはずがない」
そんな人望があればこそ、そうした繋がりは未だ生きているし、公的な海賊、所謂私掠船としての同盟軍情報部の繋がりもある。
無論、地方行政府との繋がり、同盟役人や政府関係者の悪行や弱みなども少なからず握っている。
彼らとてそうしたものがなければ、何時切り捨てられるか分からなかったからだ。実際、今回ある意味切捨てをされている。
また、彼らの中には豊富な実戦経験を持つ者も少なくない。
或いは下手をすれば軍用以上に詳細な航路データも存在している。
これらを捨てるのは惜しい、そう考えた者達がいた。
かくして、そうした経験や情報の提供の代わりに、彼らの前歴には目を瞑ろう、新しい名前や経歴も必要なら用意しよう、そういう話が持ち上がったという事だ。
この提案に彼らは乗った。
元々好き好んでこの道に入った訳ではない。
止められる者なら止めたいという者は多い。
それにもし、乗らなかった場合どうなるか?どう考えても良くて犯罪者扱いで処罰、悪ければ闇から闇へと葬り去られる運命が見えているとなれば選択肢がなかったとも言える。
こうして、元海賊の彼らは軍人となるか、民間人となる場合は一定期間の監視や定期的な報告を義務づけられる事になるが、安定した生活を得た。
実際、彼らの情報は大日本帝国にとっては大きな資産となり、また彼らも一度底辺に近い生活を知った故だろうか、実に真面目に働き、後に……さすがにこの世界の大手と呼ばれる企業には及ばないものの、立派に中堅と呼ばれる程度には知られるようになった企業を成立させた者もいたそうである。
「……じゃあ、この情報とこれはそちらにお任せしますよ(ニヤリ」
「了解した、まあそちらのご期待に沿えるよう活用させて頂くとしましょう(ニヤリ」
……尚、一部の情報に関して、貞子と腹黒紳士の間でこのようなやり取りがあったそうだが……。
紳士に渡された情報で同盟の一部がどうなったかは……我々には知る由もない事である。
最終更新:2012年02月11日 05:22