197 :ひゅうが:2012/02/12(日) 05:20:15

銀河憂鬱伝説ネタ 本編――「6月の新政府」 その0(ver.2)


――「戦争とは大きな利害の葛藤であって、流血によってはじめて解決をみるものである。そしてまさにこの点のみ戦争は他のものから区別される。
(このように)戦争は一般に技術とは比べるべくもないが、それでも比較的近い技術を尋ねるなら、それは貿易であろう。」

                     カール・フォン・クラウゼヴィッツ



――宇宙暦789年6月、最高評議会議長の伝家の宝刀「解散権」の行使によって自由惑星同盟は総選挙を実施した。
そしてその間、いつも選挙期間中に発表される銀河帝国フェザーン高等弁務官府の声明はついに発表されることがなかった。
不安に思ったらしい報道機関が代替物とばかりにハイネセン駐在日本大使に取材を行ったものの、「内政干渉になってはいけないが、我々もまた注視している」というコメントを発表したにとどまった。
6月14日深夜、2週間にわたる選挙戦の結果として議会においてはその3分の2を超える議席を前議長ジョン・ハッブルと彼に合流したヨブ・トリューニヒト、そしてロイヤル・サンフォードや連立与党から離脱したウォルター・アイランズらの所属する「同盟党」が獲得。

それまでの「共和党」と「自由戦士党」「民主市民党」の3党体制の崩壊と、再編成による国民政党「同盟党」の誕生はこうして同盟市民の承認を得たのであった。

そしてこの新政権において再び首班の地位についたジョン・ハッブル率いる最高評議会と同盟政府は就任早々に重大な案件を処理しなければならなかった。
第1に同盟・フェザーン自治領間で締結されていた経済貿易協定の対象を「銀河帝国内の法人」にまで拡大するいわゆる「同盟・帝国経済基本法」の制定。
第2に皇帝フリードリヒ4世の退位に伴い提案された大規模な捕虜交換の実施と、近年の連戦で消耗していた同盟軍の再編、これに伴う辺境星域の大規模な開発。
第3に、日本帝国および銀河系内郭国家連合(UNIG)から自由惑星同盟へ派遣された正式な返礼使団の受け入れである。

これに加え、捕虜交換をバーターとした帝国前皇帝の同盟領内通過という難題も加わって同盟の新政権には強力な指導力が期待されていた。
期待を込めてマスメディアが「6月の新政府(ニューガバメント・オブ・ジューン)」と呼ばれる新政権は選挙戦により敗北した旧野党や与党の最右派や最左派もひとまずの協調を申し出たこともあり、事実上の「挙国一致内閣」といってもよいだろう。

自由惑星同盟は、新たな熱気をもって国家の改革に着手しようとしていたのである。
もっとも、その陰で相対的に地下へと逼塞を余儀なくされた者たちも多いし、経済的な突発事態で地獄を見た通商業者や軍需企業の姿もあった。
彼らや、そのさらに奥の暗闇に隠れた者たちが何を考え行動するかはいまだに未来の事項に属する。

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最終更新:2012年02月15日 08:32