241 :yukikaze:2012/02/18(土) 23:13:13
では投下。




一年戦争verでのある貴族の行動について。
なお、同SSでは大日本帝国と同盟の邂逅を第五次イゼルローン戦役
終結後にまで遅らせております。ちなみに登場人物の名前は適当につけました。


不屈なる者


帝国歴484年に大日本帝国と自由惑星同盟の邂逅が銀河系に知れ渡った時、
オーディンの反応は鈍いものであった。
それもまた無理はないであろう。何しろ同盟の情報が正しければ、大日本帝国
の領域は同盟辺境領の更に奥地。門閥貴族からみれば、蛮地といってもよい
場所であったからだ。
大半の門閥貴族は「第五次イゼルローンの敗北でパニックになった叛徒共が、
国内対策のために土着の田舎政権を仰々しく飾っているのであろう」と見なす
のも無理はなかった。

だがそれも同盟から流されたデータと、皇帝の言葉によって吹き飛ぶことになる。
フェザーン経由で獲得したこのデータは、すぐさま軍や各省庁の官僚によって
分析されたのだが、その解析結果は「大日本帝国は高度な文明と国力を有し、
土着の田舎政権と侮るのは絶対に不可。なお捏造の可能性は絶無」というものであった。
そして皇帝が、皇帝のみが閲覧を許される情報として、大日本帝国が開祖ルドルフ帝
ですら一目も二目も置いていた存在であり、彼らが既知銀河から突然移住した際も、
ルドルフ帝はそれを邪魔することを厳禁し、そして彼らが帰還する際には、絶対に
安易な交戦は控えるようにせよと命じたことを暴露したことで、彼らは完全に
パニックに陥ることになる。

何しろ門閥貴族にとってルドルフ大帝は絶対的な存在である。
そしてそのルドルフ大帝ですら恐れた存在とあっては、彼らの想像を超えていた。
余談ではあるが、この「ルドルフですら恐れた」という件が、後にラインハルトの
無謀すぎる行動の動機になったのではと主張する史家も多いが、後の世の事はともかく
この時期の帝国政府は、正に頭を抱えたくなる心境であっただろう。
仮に彼らが同盟と手を結んだ場合、厄介なことになるのは火を見るより明らかであったからだ。
故に、帝国政府の中で、「取りあえず大日本帝国に使節を送って、彼らの国力の観察や反応を見る
べきでは?」という意見が出るのも当然ではあった。
無論、一部の貴族の中には「銀河帝国は全宇宙の支配者であり、こちらから使節を送るのはおかしい」
などという者もいたのだが、「大帝のお言葉を無視する気か?」という声の前に逼塞をすることになる。
そして紆余曲折と様々なトラブルの元、帝国と大日本帝国の間で会談を行うのが正式に決まったのが、
帝国歴485年の1月であった。

もっとも、会談の結果による影響はそれほど大きくはなかった。
最大のネックはやはり同盟の存在であった。
同盟側にしてみれば、せっかく強力な友邦となりえる存在が見つかったのに、
そんな彼らが帝国と結ぶなど悪夢以外の何物でもなかったからだ。
更に、同盟と帝国を争わせることが国家戦略となっているフェザーンも、
新たなプレイヤーの参入に良い顔をせず同盟のマスコミや企業に対して様々な工作を行っていた。
また、大日本帝国側も同盟と帝国の争いにわざわざ首を突っ込みたいとも思わず、最終的には
帝国に対して相互不可侵条約を締結し、双方に大使館を作るだけにとどまっていた。
帝国側にしてみても、「こちらから手を出さなければ、向こうは手を出さない」ことが分かっただけでも
十分であり、国家承認問題など厄介な問題は棚上げしたいというのが実情であった。

さて、こうして大日本帝国との交流が最低限であっても交わされることになった以上、
次に問題となるのが誰を派遣するかという問題であった。
そして帝国としては非常に頭の痛い問題であった。
何しろ向こうは、自分達が気の遠くなるような時代から続いている伝統ある国家なのである。
阿呆な門閥貴族を送りそこで失態など犯されたりしたら、帝国貴族全体が恥をかくのである。
だからこそ人選には細心の注意を払わざるを得なかった。

そして大使として選ばれたのが、マリーンドルフ伯フランツであった。
公正明大で人格者として知られ、更には教養も深いマリーンドルフ伯は確かに
うってつけな存在ではあった。
更に副使として、同じく識見・人望の厚いメルカッツ提督を置くなど、
政軍双方で可能な限り、非主流派で有能な存在を配置するようにしていた。

だが、そんな中にあって、一人だけ異色の存在がいた。
カール・フォン・フレーゲル男爵。ブラウンシュバイク公爵の甥である彼は、
後の世にこう書かれることになる。

『ゴールデンバウム王朝最後の貴族』『不屈なる者』と――――――

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最終更新:2016年08月21日 17:25