934 :New ◆QTlJyklQpI:2012/05/02(水) 12:33:00
支援SS ~ソ連軍の黄昏~

バグラチオン作戦。それは今まで攻められるままだったソ連軍が行った最初にして最後の反攻作戦である。
総兵力は防衛するドイツ側の3倍近い量を集め、額面だけ見ればソ連が圧倒的に優勢であった。
しかし、その作戦を指揮するジューコフらの表情は暗い。

「これでは戦闘にすらならんぞ」

実際、下から上がってくる「故障」「使用不能」の文字の羅列に霹靂するほどだった。
確かに数は揃えた。だが言ってみれば「数だけを揃えた」とも言えその結果不良兵器の山を送られ
前線では大混乱が起きていた。

「糞!また弾詰まりだ」
「そのアリサカ(三十年式小銃)をくれ!」
「馬鹿野郎、まともに動くのはこれしかないんだぞ」

ソ連兵らは弾詰まりか暴発を繰り返す小銃を渡され、その小銃すら足りずに「3人に1丁持たせれば、すぐに1人1丁になる」
という、どこぞの人民解放軍よろしく前線に立たされる状態になっている。

「?なんだあれは」
「一応、戦車・・・となっておりますが」

そして送られてい来る戦車も自称”戦車”のオデッサ戦車とハリコフ戦車といったトラクターに装甲と機銃砲塔を乗っけたのを
駆り出し、その鈍足で見事に戦車部隊の快速をスポイルしてしまっていた。
まともな戦車であるT-39やT-44にしても砲や機銃の作動不良やエンストに悩まされ、切り札であるはずのIS-2重戦車に至っては
1日故障がなければ奇跡とも言われているほどだ。

そして航空機に関してはもっと酷い。大抵は故障=死であるためパイロットらはせめて飛ぶ前に故障してくれと祈る始末。
それに輪を掛けて送られてくる一部の人員が士気を決定的に下げていた。

「彼らは?アジア系やアフリカ系の顔をしているが」
「満州と朝鮮から持ってきたそうです・・・・」
「奴隷・・・・・・・・か」
「・・・・・・”弾よけ”・・・・と言ってください。まだ士気が持ちますから」

死んだような眼で政治将校はジューコフに言う。少し融通が効かないが政治将校内では有能な部類に入り、
共産主義を心から愛する彼には祖国が人身売買をやってるの見て自殺したい気持ちなんだろう。

「武器はボロボロ、戦車も航空機も動けるかどうか、しかもその輸送を優先したせいで食糧も僅か。
なるほど短期で決めろと言われたのはそういうことか」

最早軍の維持さえ困窮する祖国の現状にジューコフは苦笑を浮かべる。

1943年、まもなくソ連軍の最後の戦闘が始まろうとしていた。

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最終更新:2012年05月02日 21:35