46. 攻龍 2009/03/26(木) 23:14:54
『護衛艦』改造計画のその後

最近イギリスから帰国した同僚と飲みに行くことになったら、久しぶりなので大西洋組の連中を誘って飲みに行こうという話になった。
あのときの連中もいまでは皆それなりの立場にいる。集まるかどうかと思ったがかなりの数が集まった。戦友とはいいものである。
めったに会わない連中だが、その中にかつて第2次派遣艦隊にいた彼の姿があった。消息は聞いていたが、実際に会うのは久しぶりだ。だいぶ老けたようだ。わたしもか。
だいぶ前の人事改正で、最前線の声をだいぶ聞いてくれるようになった。彼はそこでの兵装に対する指摘が気に入られたようで、今では対潜兵器開発の部門にいた。私は船体の不満をぶちまけたら、なぜか護衛艦の設計をする部署にいた。まあいい。

彼と杯を交わしながら、昔話に花を咲かせた。ときどきヤバめな言葉も出たようだが、誰も聞いていない。独り言だ。
彼の部署が新型の水測兵器を完成させたらしい。かなりいい性能のようだ。でもかなり重いらしい。独り言だ。
後ろの席では新型の機関砲の試作品ができたようだ。ポンポン砲よりもかなり性能がいいらしい。だれだポンポンなんてふざけた名前をつけたやつは。でもかなり重いそうだ。独り言だろう。
…、…。どこかの「アヴァンティ」ではないか、まるで。  …、…。なんの電波だ、今のは?

翌日の昼過ぎ、艦政本部から改装設計案の認可が下りた。早速改装に入ろうか…いそがしくなるな。

それぞれ改装1番艦が出来上がった。この成績がよければ、予定ではすべての対象艦が改装に入る。
途中までは良かった。艦隊指令が興味を持ち、試験の様子を見ていただいたところ、問題点を指摘された。その問題に対して、試作中の兵器までが投入されることになった。ここからが問題だ。

だがあの指摘は鋭かった。私は背中に冷たいものがはしった。私がここに来た時のあの思いはどこに行っていたのだろう…。
なぜ、現在運用中の兵器をもとに性能を決めたのだろう。92式艦攻、94式艦爆、巡潜級…これらの性能上位程度相手に優位に戦えるレベルではダメだ。試作機、実験艦を一部試験に貸し出してくれるという。ありがたい。これからしばらくは家には帰れないが、その程度だ。このフネに乗った若人が帰れなくなるよりはよっぽどいい。
47. 攻龍 2009/03/26(木) 23:17:35
来週は模擬演習だ。我々の装備がどこまで有効か。そして次世代の新鋭兵器の性能はどのようなものか…少し楽しみだ。

試作機との対空模擬演習が終わった。何だ、あの性能は…、どうしろと。設計班の全員が頭を抱えていた。だが、来週は実験艦との模擬演習だ。その対策をしなければ…。
実験艦との対潜模擬演習が終わった。何だ、あの性能は…、どうしろと。設計班の全員が頭を抱えていた。まさかこの言葉を続けて言うことになるとは…。

新型機だが、とにかく速い。それだけなら対策はいくらでもある。だが爆装状態でも運動性が良い。近接時には機関砲でも追従がむづかしい。それどころかあの戦術は…攻撃側は明らかに安全だ。防御側は…輸送船は回避の時間すらない。駆逐艦でもぎりぎりだ。ロケットなどと併用されたら、防御など無理だ。
実験艦は、我々の予測を上回る静かさだ。新型聴音器でも辛うじてと言ったところだ。探信儀だと捕まえられるが、今度はこちらが危険になる。しかも水中速度と運動性が良い。これだと在来型潜水艦はタンカーだ。潜行限度も深いらしい。先ほど各開発部の連中も帰っていった。顔色が良くない連中が多い。

今までの計画の武装では、新型を除いてほとんど手が出ない。どうしろというんだ。これでは先の大戦で自分達が味わったあの思いを若人達にまた味合わせることになる。だが、今度はそれだけではすまない。何とかしなければ…。

あれからしばらくして、聴音器の改良型が仕上がったとの連絡があった。彼の顔色も悪かったな。
さらに、試作機関砲が制式採用になったとの連絡もあった。試作品よりも良い出来だそうだ。
念願の対潜用前投兵器が今回の改装に試験装備されることになった。「対潜爆雷砲(仮)」と呼ぶらしい。
そのほかにも、試験採用を含めてかなり融通を利かせてくれるようだ。整備は面倒だが、各部署から人員を出してくれるらしい。

これらをもとに、再度我々は設計図を書く。今度こそ、若人達のために。
改装第1案改定を進めていく上で、この前の「独り言」は非常にありがたかった。右往左往しなくてすむ。
この前の模擬演習の反省をもとに、更なる設計の煮詰めにかかる。

排水量がどんどん増える。水測兵器の入れ替えができたが、かなり重かった。近距離だがかなり性能のいい水上索敵電探がつけれることになった。これで潜望鏡を探して一日中海面を睨み付けなくても良くなる。対空機関砲も強力な新型がつけれる。しかしとても重い。STAAGをすすめられたが、絶対無理だ。高角砲を下ろすか…、そんなのでは足らないか。
それだけではない。これ以上排水量が増えると、船体の補強が要る。まぁこれについては、対策がある。また、凌波性はかなり低下した。復元性も原型よりはかなり悪化した。それでも海外のフネよりはマシだそうだ。信じられん。
48. 攻龍 2009/03/26(木) 23:18:09
だがこれでは、予算が心配になってきた…。いい加減に見積もり金額が増えている。新型艦を作ったほうが安いとまでは言わないが、予算の方は…大丈夫だろうか?  
上層部からの電話に私は言葉が出なかった。いや、計画中止ではない。むしろ、まだいけるそうだ。なぜ上層部は許可したのだろう。無論私ら設計班にとっては朗報であるが…この前の演習は、そんなに効果的だったのだろうか?

ようやくまとまった。残念だが、旧式艦ベースではここまでが精一杯だ。この先は、新型艦で実現させよう。


1等駆逐艦  「峯風」級  高速護衛艦第2案  
基準排水量  2200t      全長  103.0m    全幅  11.5m
主缶  重油専燃缶×4基    出力  40000馬力    速力  30Nt    燃料  500t    航続力  14Nt/4800浬
兵装  12.7cm単装高角砲×2基    40mm「ボフォース」連装×4(内2基には試作だが射撃用電探付)/(2)    (53.3cm魚雷4連装×1)    爆雷×55  対潜爆雷砲(仮)×1    聴音器×1  探信儀×1  対空レーダー×2  対水上レーダー×2

補足  高角砲は機力駆動    対潜、対空戦闘を徹底的に重視した。魚雷は必要に応じ装備する。
      
1等駆逐艦  「峯風」級  長距離護衛艦第2案  
基準排水量  2200t      全長  103.0m    全幅  11.5m
主缶  重油専燃缶×2基    出力  20000馬力    速力  24Nt    燃料  750t    航続力  14Nt/7000浬
兵装  12.7cm単装高角砲×2基    40mm「ボフォース」連装×4(内2基には試作だが射撃用電探付)    爆雷×100    対潜爆雷砲(仮)×1    聴音器×1  探信儀×1  対空レーダー×2  対水上レーダー×2
補足  高角砲は機力駆動      対艦戦闘を切り捨てて対潜、対空戦闘を徹底的に重視した。さらにボイラー2基を撤去し燃料を増載して航続距離を伸したモデル  


2等駆逐艦  「樅」級  長距離護衛艦第2案
基準排水量  1250t      全長  87.0m    全幅  8.2m
主缶  重油専燃缶×2基    出力  14000馬力    速力  25Nt    燃料  480t    航続力  14Nt/5500浬
兵装  12.7cm単装高角砲×1基    40mm「ボフォース」連装×3(内1基には試作だが射撃用電探付)    爆雷×60    対潜爆雷砲(仮)×1    聴音器×1  探信儀×1  対空レーダー×1  対水上レーダー×1
補足  高角砲は平射砲の改造品  対艦戦闘を切り捨てて対潜戦闘を徹底、さらにボイラー1基を撤去し燃料を増載して航続距離を伸したモデル

上層部の言った「速い、旨い、安い」とはだいぶかけ離れたが、あの性能の「敵」を相手にできるのならば「速い、旨い、安い」なのだろう。そういえばあのときの上司はなんと言っていたのだろうか。「吉野家」だった様な…。

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最終更新:2011年12月31日 16:25