984 :New ◆QTlJyklQpI:2012/05/20(日) 23:28:40

支援SS ~羊たちの咆哮~

戦後のある日、イタリア陸軍の演習場ではイタリア戦車史上エポックメイキングと言える戦車が疾走していた。

「これがアリエテ重戦車か・・・」

見物に訪れていた統領やパドリオ元帥らもこの戦車の疾走する姿を見て興奮を隠し切れていない。

第二次世界大戦後、イタリアは常に戦車に悩まされていた。
数的な主力と言えるカルロ・アルマート中戦車シリーズは47mm戦車砲に最大40mmの装甲など
このサイズの戦車としてはそこそこの性能を有していたが対英日戦での(環境の影響もあるが)稼働率
の低さに泣き、独ソ戦に至ってはT-39などのソ連戦車の前に歯が立たず、ドイツのⅣ号中戦車に乗る羽目に
なった。それでも後期型のT-39やT-44、IS-2重戦車が出てくるとイタリアはパンターかティーガーの
購入、またはライセンス生産を画策する。

しかし、唯でさえパンターは数に余裕がなく、ティーガーもパンターの穴埋めとして有効なので売る物はなく、
ライセンス生産もドイツ製工作機械を多用した精巧な設計にイタリア陸軍の技術者も匙を投げた。

そして独ソ戦が終結すると今度はサンタモニカでの軍事パレードで日本戦車の威容を見せつけられ、
完全に時代遅れとなったと実感したイタリア陸軍+統領は独日に対抗可能な戦車の開発を急がせた。

しかし、史実のP26/40重戦車に近い物が出来たが(独日戦車に比べても)短砲身の75mm戦車砲であり、
装甲も溶接が一部しか用いられず早々に時代遅れとなるのは必定だった。
戦車開発が暗礁に乗り上げたが統領のとある一言で状況は好転することになる。

「T-39やT-44を生産できないか?」

この一言にその場にいた陸軍関係者は一斉に噴き出し、「「「無理です」」」と返答した。
パンターなどを回せなかったドイツは派兵に答えてくれたイタリアに配慮し、かなりの数の鹵獲戦車を
イタリアの贈与していたが「赤い悪魔(イタリア製手榴弾)の方がまだ使える」という作動不良や
装甲、砲の質の劣悪さにガラクタ押しつけられたと怒りを覚えていた面々にとっては
あんな危ない物に兵士を乗せれなかった。
しかし、統領は良質な部品を選りすぐった戦車(本当に僅かなレア物)はスペック通りの高性能を示し、
何より”あの”ソ連軍でも一応生産され稼働していた単純な設計を指摘。

「すべてコピーしろとは言えないがこの戦車を元に新型を作る方向で考えてくれ」

統領のその言葉をイタリア陸軍関係者らは協議し、有用であると判断し戦車開発は再開する。
全体的な設計は単純であったためイタリアの道路や輸送に合わせて車体は小型化され、
居住性を上げるために車高をやや上げ、砲弾などの配置も変更されている。砲塔については鋳造
は不可能だったので溶接砲塔とし砲の仰角を取るために大型化され、前面に傾斜装甲を使用したため
史実のアリエテ戦車に酷似した形状となった。
そして搭載する砲は当時イタリア陸軍が装備していた53口径90mm戦車砲を搭載、エンジンについては
高馬力ディーゼルエンジンの開発が困難だったのでドイツのティーガー用のガソリンエンジンの改修型を
ライセンス生産することとなった。こうしてイタリア陸軍最強の戦車、アリエテ(牡羊座)重戦車が誕生した。

アリアテ重戦車 
全長:6.18m 全幅:2.98m 全高:2.49m 重量:31t 乗員:4名
エンジン:フィアットSPA V型12気筒液冷ガソリン 550馬力(マイバッハHL210のライセンス生産品)
最高速度:時速54km 航続距離:180km
装甲:砲塔前面100mm、車体前面90mm、側面50mm、背面50mm
サスペンション:トーションバー方式
武装:53口径90mm戦車砲Da90/53×1
   8mmブレダ38機関銃(同軸機銃含む)×2
   煙幕弾発射筒6基

無論、問題がなかったわけではなく、特に重いギアチェンジなど操縦性の悪さが指摘され電動式の
サーボ機構を装備するなどあったが今までの戦車と比較にならない重装甲に砲撃力、更に単純な構造から来る
改修のしやすさやコストの安さなど非常に使い勝手のいい車両に仕上がった。

他国では「イタリア製ソ連戦車」と嘲笑されたが、その潜在能力と使いやすさを知ると瞬く間に羨望を集める事になった。
大量に輸出され、中南米からテキサス、中東などでも使われ独自のカスタマイズも含めて多様なバリエーションを
生み出しベストセラーとなり、日本では「今度はイタリアが赤軍に」と夢幻会メンバーの呟きが聞こえたらしい。

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最終更新:2012年05月22日 16:45