329. 攻龍 2009/12/04(金) 15:03:43
とあるジェット練習機開発事情
まだ日米開戦まで至ってはいないが緊迫度がかなりいい所まで高まっていた、某月某日某居酒屋でその話は持ち上がった。
「今倉崎が開発に躍起になっている新型戦闘機、かなり逝かれた戦闘機らしいぞ…」「オイ、ここでその話はまずいぞ…」「具体的な話しなけりゃいいって」………。
そんなかなりあぶない話をネタにしながらその日の居酒屋会議は進んでいき…。
数ヶ月後、誰もそんな話を忘れかけたある日…。
倉崎から新型戦闘機のモックアップが出来たので確認に来て欲しいと一本の電話が入った。
私は部下を連れて倉崎の開発工場に出掛けた。
そこで見たのは…今までに見たことのないフォルムをした戦闘機だった(無論設計段階から図面や模型では知っていたが、それらとは迫力が違っていた)。
社長自らが説明をする入れ込み様に少々押されながら、頭の片隅で私はかつてのあの日のことを思い出していた…。
私がこの部署に配属になる前、まだ一応現役パイロットをしていたあの日、自分達の部隊に新型戦闘機がテストの為に配備されたのだ。
当時の機体は93式戦、言わずとしれた複葉機だ。
そして新型戦闘機は後の96式戦。これも言わずとしれた近代的全金属単葉機だ。
そして…当然だがこの両機の飛行特性は大分異なっていた。
そして…情けない話だが、私はどうしてもそれに馴染めなくて現役から退いたのだ。
そんな話を思い出しながら、ふと数ヶ月前の居酒屋での話が蘇った。
あの時誰かが言っていた…「計算上、飛行特性は従来とはかなり変わる筈だ。なにせエンジンからして違うのだから」と。
私は冷や汗が出るのを感じた。そしてここにいる誰もその事実に気づいているようには感じなかった。誰も目の前の新型戦闘機の予想される高性能に呑み込まれていた…。
事務所に帰った私は大急ぎで現在進行中の練習機の開発計画を調べ直したが…残念なことに新型機に対応した練習機の計画書はなかった。
数日後、私は上司に先日の報告書とともにある緊急企画書を提出した。
タイトルは『新型機対応の高速複座練習機』
その内容は…
1.現在開発中の新型戦闘機への機種転換訓練が可能な高速複座練習機を求める。
2.機体性能は特に指定しないが、出来れば高速で、かつ練習機として必要な操縦性は満たすこと。
3.機体規模はなるべく小型が望ましいが実現可能なサイズであればいい。
4.実機完成は可能な限り早急に。出来れば新型戦闘機と同時期かそれ以前に。
………。
「かなり無茶な話だと自分でも思うのだが、是非とも間に合わして欲しい」と熱く各航空機メーカーにはアピールしておいた。
さて、どのような機体が出来上がりますか…。
いずれにせよかつての私のような思いをするパイロットが1人でも減ることを望むものだから。

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最終更新:2011年12月31日 16:39