164 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/10/02(火) 23:00:01

 憂鬱日本では言論に関する締め付けが必要以上には厳しくなかったこと、
また出版界、報道界の統合による大規模化、寡占、独占化を極力防いでいたことから、
実に多種多様な雑誌や新聞が産まれている。

 今回は、そんな新聞の中から1つの新聞の、1つの記事を切り抜いて紹介しよう。


        提督たちの憂鬱 支援SS ~雑誌、新聞のスクラップ・新聞記事編~


新聞『帝都新聞(※)』夕刊より抜粋


◆BUF代表日英の未来を語る 英国にて直接取材

記者(以下"記"):本日は私どもの取材を快諾してくださりありがとうございます。

モズリー(以下"モ"):遠路はるばるお疲れ様でした。こちらこそよろしくお願いします。

記:それでは早速本題に入りたいと思います。
  最近のBUF(イギリスファシスト連合)の英国政界への進出の著しさは、
  イギリスだけでなく我が国においても非常に大きな話題となっておりますが、
  第二次大戦中は壊滅寸前だった政党をここまで短期の内に復活させる支えとなった物は一体何でしょうか?

モ:主に経済界による助力が大きいですね。日本の皆様もご存知だとは思いますが、
  旧来の政党は国際戦略における失策が続きその手腕が大いに疑問視されている所でして、
  その分彼らの期待が我が党へ向かっているとも言えます。これが追い風となって、
  BUFという船が再び前進を始めたのだと考えています。

記:その後援者である経済界ですが、英国は諸外国との関係悪化により大変な苦境にあります。
  BUFとしては、どのような対策をお考えになっておられるのでしょう?

モ:まずは中小企業の統廃合を推進し、まだ力を残している大企業と合流させる事で、
  産業ごとの資金力と連携の強化を行いたいと思っています。世界経済が新たなブロックに再編される中で、
  市場を確保するには勿論軍事力というバックボーンも必要ですが、それ以上に企業そのものの基礎体力も大切だと思います。
  そのための統廃合と大企業合流です。当然痛みも大きいですが、必要な犠牲であるとBUFは考えています。

記:では、政権を取った暁には軍拡を進めていくつもりである、と?

モ:否定はしません。対岸にかつて干戈を交えた勢力があるのに、
  自分達だけ銃を降ろすという事は馬鹿げています。さらに、今喫緊の課題となっている失業対策ですが、
  軍備の規模を拡大する事は職に就けない若者達の受け皿を広げる事に繋がります。
  さらに軍拡には、ホーカー社、フェアリー社のような兵器メーカーの保護という側面もあります。

記:日本人の中には、BUFのこういった好戦的な姿勢や党の名前から、
  NSDAP(国家社会主義ドイツ労働者党)や国家ファシスト党(イタリアの独裁政党)などと、
  BUFを一緒くたに捉えて危険視したり、また不信感を抱く人も少なくありませんが。

165 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/10/02(火) 23:01:02

モ:我が党の理念が正確に伝わっていない事は、大変残念であると思います。
  おそらくこれらの原因は、イギリス人全体に対する不信感にも根ざすものがあるでしょう。
  しかしBUFが第一に考えるのはドイツでもイタリアでも、ましてやフランスでもなく、
  祖国イギリスの事であるという事を日本の皆様にもご理解頂きたい。
  万が一、万が一ですよ、ここイギリスが再び外敵の危険に晒される事があれば、
  BUFも私も、いちイギリス人として、武器を取りイギリスのために戦うでしょう。

記:第二次大戦中は、BUFはNSDAPのいわゆる出先機関のように見られ、
  当局による迫害を受けていましたが、それはとんだ見当違いだったという事ですね。

モ:Exactly(その通りです).BUFは言わば憂国の士であり、決して売国奴などではありません。

記:戦争以来すっかり冷え込んでしまった日英関係ですが、どのようにお考えでしょうか。

モ:イギリスと日本の間には確かに不幸な行き違いもありましたが、
  個人としても党としても、両国の関係は改善し、よりよいものにしていけると信じています。
  フランスやドイツなど、『近くて遠い国』を抱えるイギリスのこれからに、
  日本とその友邦は必要不可欠なパートナーなのです。そう、未来を共有する……
  私は、英日が『遠くて近い国』になるため、いかなる努力をも惜しまない所存です。

記:しかし、一度失われた信頼を取り戻すのは至難の技です。日本の経済界には、
  英本国の関税引き下げやイギリス勢力圏のさらなる市場開放など『有形の代償』を求める声もあります。

モ:イギリスにも養わなければならない人民がいるためあまり急進的な事はできませんが、
  ただBUFでは英日関係改善にカナダを通した物流ルートを有望視しています。
  バンクーバーなど、カナダ太平洋岸の都市を経由したイギリスと日本の物流ルートを開拓、拡大する事で、
  イギリス及び日本の企業、そしてカナダも互いにwin-winの関係を目指す事ができると思います。
  これを嚆矢として、津浪復興にも弾みを付け、イギリス国民に明るい未来の兆しを示すのがBUFの中短期的目標です。

記:なるほど、日英の関係修復には積極的に動きたいという事ですね。
  最後に、本紙の読者の皆様に何か是非、お伝えしたい事があればお願いします。

モ:はい。…親愛なる日本の皆様。悲しむべき事に、我が祖国は恥ずべき裏切りによって、
  日本だけでなく世界全体から笑い者となってしまいました。現在の英国政権は袋小路に入ってしまい、
  つまらぬ矜持によって進む事も退く事もできなくなっています。BUFが今ここで立ち上がったのは、
  衰弱した祖国を海峡の向こうの国へ売り渡すためでもなく、また私利私欲、虚栄心のためでもありません。
  私どもはそう、およそ70年の昔、貴方方の国で行われた素晴らしい革命…いや『維新』を謙虚に見習い、
  イギリスを再び世界に恥じる事のない国へと復活させるために活動しているのです。
  日本の皆様、どうかBUFの『British ISHIN』を見守り、そして応援して下さい。
  そして我が祖国の『ISHIN』が成って初めて、イギリスと日本は真のパートナーとなる事ができるでしょう。

                      (完)

166 :名無し三流 ◆Mo8CE2SZ.6:2012/10/02(火) 23:02:12
(※)
東京に数多くあった中小新聞社の1つ。中道右派を標榜している。
旅行・航空会社に多くスポンサーを持ち、それらの広告が多い。
戦前はスポンサーの支援を受けての積極的な海外取材を行っていたが、戦後は低調である。


今回の投下はこれで終了です。
モズリー氏の口調が気持ち悪いくらい丁寧ですが、まあ被取材モードという事で…

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最終更新:2012年10月16日 22:07