731 :ハニワ一号:2013/03/23(土) 22:16:16
日本大陸SS 征夷大将軍の憂鬱  その2

―――天保12年(西暦1844年)―――

徳川慶喜はお忍びで水戸の夢幻会が集会場に利用している屋敷を訪れていた。

そこで紹介された転生者の面々をみて慶喜は驚愕するのだった。

(あの人物は結城朝道だと!!それに諸生党と天狗党の重要人物が転生者だと)

水戸藩の執政である結城朝道は史実で最初は徳川斉昭や天狗党からも好感を受けていた人物だったが尊皇派と次第に対立を深め、
水戸藩の実権を掌握した後は専横の限りを尽くした悪名高い人物であった。諸生党と天狗党も幕末に藩内抗争を展開して水戸藩を混乱させるのみならず、
特に天狗党に至っては天狗党の乱を起こすなど幕末の混乱の一因となり、慶喜も迷惑を蒙った悪名高い組織だった。

慶喜が知る世界では激しく対立していたのがこの世界では和気藹々と集まっている姿を見るにつれて、元の世界との差異に慶喜は混乱しそうになっていた。

(どうしてこうなったのか夢幻会や転生者、水戸藩の現状について説明してもらわなければ)

「まさか、慶喜さま本人が転生されるとは報告を聞いて驚きました。」
「本人が転生する件はそれほどに珍しい事なのか。」
「これから先に転生者が増えれば慶喜さまのような件は増えると思いますが、このような件は少ないです。」

慶喜は実は転生者であった結城朝道を説明役に夢幻会や転生者について説明を受けることになった。結城朝道が語るところによれば、
同様の組織は日本大陸各地に存在していて幕府や朝廷、雄藩などに影響力を持っていて本部は江戸に置かれていること、転生者は確認されているところで
二つある列島日本の未来の平行世界(史実、憂鬱)から来ていること、二回の転生経験を持つ転生者がかなりの数で存在していて夢幻会という転生者組織を
整備できたのは二回目の転生経験を持つ転生者の働きのおかげということを慶喜は知ることになる。

表向きは上士層を中心とする諸生党(保守派)に属する転生者たちを登用するなど、天狗党とのバランスをとって諸生党に配慮するなど、この世界では結城を
はじめとする転生者の面々が諸生党(保守派)と天狗党(改革派)の対立を防ぐための調整と融和に奔走していたこともあって。この世界の水戸藩では藩内抗争に
展開するほどの深刻な対立は発生していないようだった。

732 :ハニワ一号:2013/03/23(土) 22:16:52
(夢幻会が調整に入ってくれるならば、藩内の対立は回避されて史実のように水戸藩が内輪争いによって荒れ果てる事は防げるか)

慶喜は故郷である水戸藩が史実のように内輪争いで荒れ果てることを憂慮していたが転生者の面々を見て安堵の念を抱いた。

「しかし、天狗党にいる夢幻会の同士が説得して、天狗党の大部分を納得させて抑えたとしても、天狗党の少数の過激派が上の言うことを聞かずに
暴走して脱藩して攘夷行動を行う危険があります。」
「やっぱり、問題はそこに行きつくか。」
「いかに入念に開国の準備を行って、朝廷からも開国の特許を得られてとしても、開国に反対する人は出ますし、開国しても問題が出ないといった事は
あり得ませんので重箱の隅をつついて幕府を批判して自分だけの都合のいい考えの元で行動する人たちは確実に存在します。」

げっそりと慶喜は当時の幕末の時代に味わった苦労を思い出して憂鬱な気分になってしまった。

(まあ、あの時とは違い夢幻会という協力者の存在がいる。協力者の存在と未来の知識や技術がある分、マシになるが・・・。大変な事には変わりはないな。)

「それから慶喜さまにお願いしたい事が・・・。」
「言わずともわかっておる。この徳川慶喜の協力を得たいのだろう。私の方こそ夢幻会の協力を頼む。この世界の日本を良き未来に進ませるためにも」

それからいくつかの話し合いを終えた慶喜は、未来からきた転生者によって、この時代に手に入る素材で再現された未来の料理とお菓子を肴に身分の上下も
ない無礼講の宴会を楽しんでいた。

「安道名津とかという菓子は美味しいな。脚気予防として広まっているとか。」
「江戸城内でも評判になっていて、将軍後継者の世嗣である徳川家定さま自ら安道名津をつくっているそうです。」
「あのお方は史実でも菓子作りが趣味だったしな。夢幻会によって菓子料理の幅が広がって喜んでいるそうだ。菓子作りに詳しい転生者を指南役に取り立てて新しい菓子作りを学んでいるとか」

様々な問題がこれからも降りかかってくるのが予想されながらも彼ら水戸の夢幻会は史実では見られなかった諸生党と天狗党の重鎮たちが仲良く肩を並べて慶喜と共に一時の安息の時を楽しむのだった。

733 :ハニワ一号:2013/03/23(土) 22:17:30
あとがき
征夷大将軍の憂鬱その2をお届けします。
転生者の努力によって水戸藩の内ゲバや暴走を阻止できるといいのですが上のいうことを聞かない過激派の存在も予想されるので水戸夢幻会の憂鬱な日々はこれからも続きそうです。
征夷大将軍の憂鬱は週刊連載のペースで出せるようにしたいです。

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最終更新:2013年03月24日 20:13