380 :名無しさん:2013/05/03(金) 10:47:06
前書き
 本編を読み返していたらふと思いつき書いてみました。ポーランド自治区であったかもしれない大変幸福で少し不幸なお話です。

酒場にて
「あいつかい、うらやましいとは思うが代わりたいとは思わんよ」


提督たちの憂鬱 支援SS ~幸福なポーランド人~

 彼は自由ポーランドの兵士である。週一の楽しみである安酒を買って軍の寮に帰ろうかとしていた時、
ふと空き地で行われていた難民キャンプの炊き出しを見ると一人の少女と目があった。

「え!?」
「お、お兄ちゃん?」
「お前生きていたのか」
「う、うんポーランドからここまできたの」

二人はその場で熱烈に抱き合い喜びあった。生死定かでなかった兄妹が生きていたのだからこんなに嬉しい事はない。

「そうだ、お兄ちゃんちょっと待っててみんなも呼んでくるから」
「なんだ、まだいるのかよ!誰だ」
「みんなだよ」

それだけ言い妹がキャンプの方に走っていきしばらくするとゾクゾクと来た。

片腕が無くなっていたが弟がいた。
「兄さん、これ凍傷でなくなって……」
「お前が生きていてくれただけで嬉しいさ。大丈夫、なんとでもする」

母が来た。
「しばらく見ない間に立派になって」
「ああ、母さん」

父が来た。こちらは足を怪我したのか松葉杖で歩いている。
「世話になるぞ」
「大丈夫、その足でも出来る仕事なんていくらでもあるよ」

祖父母が来た。
「飯はまだか」
「ごめんね。爺さんボケちゃてところであんた倅の若いころに似ているね」
「…………」

「二人ともしばらく前からこの調子なの」
妹が祖父母について説明してくれた。
「ははは、何はともあれ無事だっただけでもみっけもんだ」

そう笑う見知らぬ男性、親戚のおじさんだろうか
「久しぶりだね覚えているだろうか」
「はあ、おぼろげですが」
「そうだろうね。なにせあったのは君が赤ちゃんの時だ。それはそうと仕事があったら
紹介してくれないか、こっちに来てからなかなか決まらないんだ」
「」

最後に子供が一人後ろの方に隠れてこちらを見ていた。
「息子だ、親戚のお兄さんに挨拶しなさい」
「……こんにちは」
「……ああ、こんにちははじめまして……」

「うちの親戚はみんな無事本当に良かった」
「ウン、ホントウニヨカッダ」妹の言葉に彼は辛うじて答えた。

本当に幸福だ、同朋には家族全てを失った者もいるだろう。
一人くらい分けて欲しい者もいるだろう。彼も一人くらい分けてあげたい。
なにせ、これからこの人数を食わせなければならないのだから。

彼は神に感謝している。家族を助けてくれたのだから、ただ自分も助けて欲しいと祈るのだった。
             ~ fin ~

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最終更新:2013年05月12日 21:24