452 :フォレストン:2013/09/03(火) 09:12:31

提督たちの憂鬱 支援SS 憂鬱北米ウィスキー事情

アメリカン・ウィスキーは読んで字のごとく、アメリカで生産されるウィスキーの総称である。
穀物が豊かに収穫されるアメリカは、その穀物の特徴を生かしたウィスキーを大量に生産している…というのは、史実の話であり、憂鬱世界ではまた異なった歴史を辿ることとなる。

禁酒法によりウィスキー蒸留所の閉鎖が相次いだ20世紀初頭。
同法が撤廃されるとアメリカンウィスキーの復興が始まったのであるが、州によっては州法として禁酒法が存続、さらに対日戦の勃発も逆風となり、そのペースは遅々としたものであった。
それでもウィスキー業者の必死の努力で、少しずつ復興も軌道に乗ってきたのである。
しかし、その努力も災厄によって無に帰すことになる。

453 :フォレストン:2013/09/03(火) 09:15:01
1942年8月16日 
ケンブレビエハ火山噴火に引き起こされた、巨大津波は東海岸のありとあらゆる物を破壊し尽した。
経済の中心を一瞬にして喪失したアメリカは、国家存亡の危機に陥ったのである。
その後シカゴに、ジョン・N・ガーナーを首班とする新政府が起ち上がったものの、対日戦の連敗と津波後の東海岸で猛威を振るうアメリカ風邪により、各州の足並みは乱れ、連邦制の維持が困難となった。この期に及んで対日戦のことしか考えていない、連邦政府の意向は各州に無視されてしまい、事実上アメリカの連邦制は崩壊したのである。

この事態にガーナーの後援であるアメリカ財界は西海岸に新国家を樹立することを決意した。
アメリカを解体して無事な西海岸だけで仕切りなおそうと考えたのである。
この財界の真意は、もちろん連邦政府側には伏せられ、表向きは対日戦のため、西海岸防衛の名の下に、人と資材を移動させることになる。

西海岸に移動された、人や物資は当然のことながら軍需・兵器関連、生産工場やその技術者が多かった。
しかし、それとは別のルートが存在したのである。財界の有志が、ウィスキー職人とその設備を西海岸へ移動させていたのである。財界の総意では無いため、出来ることに限りはあったが、それでも主要な蒸留所を移転させることに成功する。このとき、一部の職人と設備が旧テキサス州へ流れており、また別の道を歩むことになる。

西海岸に移転したウィスキー職人と設備は、戦後の混乱から立ち直ると生産を再開し、その後カリフォルニア・ウィスキーと呼ばれ、同じく禁酒法から立ち直ったカリフォルニア・ワインと共に、日本へ輸出されることとなる。折りしも日本はスコッチ・ブームであり、ちょっと毛並みの違う物を求める玄人に受け入れられたという。

テキサス残留組は、戦後テキサス共和国に優遇され、職人・設備・材料を割り当てられて、すぐさま生産を再開することが出来た。しかし、その大半は嗜好品としてドイツへの輸出に回されることとなる。
欧州枢軸に輸出されたウィスキーは、テキサンバーボン、テキサスウィスキー等と呼ばれ、少しずつ時間をかけて、市民権を得ていくことになる。その後イタリアを軽油して日本へ輸出されることになるのだが、それ故にマカロニ・ウィスキーと呼ばれることになる。

454 :フォレストン:2013/09/03(火) 09:16:47
あとがき
旧北米のウィスキー事情について書いてみました。
感想掲示板で盛り上がっていたので、書かないわけにはいかないなと思ったので、つい書いてしまいました(オイ

時系列的には憂鬱本編37話辺りです。『財界の有志』が迅速に動けば、アメリカ風邪で汚染される前に脱出は可能かと。実は移転させるためにマフィアを使うことを当初考えていました。
禁酒法といえば、マフィア。マフィアといえばアル・カポネですしw
史実では脱税裁判に敗れて収監されましたが、この場合は裁判に勝訴して、未だにシカゴで隠然たる力を振るっている設定にするつもりでした。蒸留所の移転は戦後の混乱で酒が暴騰する可能性を考えた、先行投資ということで。
しかし、おいらの腕では大物過ぎて動かしづらいのと、ファシズムとマフィアというのは相性が悪い、というかマフィアが一方的に負けそうなので、テキサス共和国では活動出来そうも無いし、かといってカリフォルニア共和国だと、日本との関係を重視した政府が、面子にかけて潰しにきそうで、戦後活動出来る余地が無いので、ボツとなりました。

テキサス共和国へ残留するのは、歴史を持つ古い蒸留所がメインになると思われます。
やはり拘りがあるので、おいそれと西海岸まで行かないでしょう。
逆にカリフォルニア共和国へは、歴史の無い新しいブランドが移転することになると思います。
ワイルド・ターキーやジャック・ダニエルズはイタリア経由で手に入れるしか無いでしょうね…(汗

追伸 2013/11/5
Wiki掲載にあたり、一部修正しました。

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最終更新:2013年11月05日 14:34