223 :パトラッシュ:2013/08/10(土) 07:58:41

earth様作『嗚呼、我ら地球防衛軍』と某作品のクロスオーバーのネタSSの勝手な続編PART17

五反田蘭SIDE

 うちの食堂の鉄板メニュー『業火野菜炒め』をおいしそうに食べる一夏さんを、私は一秒も見逃すまいと凝視した。初めて会った日から「未来の夫」と決めていた人は、ほれぼれずる格好よさと大人の魅力にあふれていて、いまや完璧な理想の男性像を体現している。一夏さんが行方不明になったと聞いた日は、お兄にジャーマンスープレックスをかけた悲鳴でやっと現実だと悟り、しばらく部屋にこもって出なかったけど。
 あれから私の人生は灰色に塗りつぶされていたが、一夏さんが別の世界へ転移していたとのニュースで一気に色彩を取り戻した。その一夏さんがうちに来ると知らせなかったなんて、お兄はよくよく命いらずだわ。後でコブラツイストと卍固めと延髄斬りの練習台にしてやろう。しかも、留学先のIS学園では女の園に男は一夏さんひとりで、あの頃から色目を使っていた中国人の鈴までいるという。なら……。

「決めました。私、来年IS学園を受験します。簡易適正試験で判定Aなので、問題はすでに解決済みです。入学したら、い、一夏さんにはぜひ先輩としてご指導を……」
だけど一夏さんは短く首を振った。
「残念だけど約束できないな。来年はおろか二学期も、俺がIS学園に通っている保証はないから」
「な、なぜですか、一夏さん、一学期で退学すると?」
「俺は軍人だ。本国で戦争が起こったら、すぐ出征しなければならない。俺の住む世界は過去十数年にわたって戦争続きだったし、今この時も遠い宇宙では異星人同士の戦いが続いている。とても平和とはいえない状況だよ」
 途方もなく重い話に、私は言葉を失った。一夏さんのいる世界は人類の大半が滅亡したほどの宇宙戦争を経験したとは聞いていたが、お兄の好きなゲームかハリウッド映画のようにしか思っていなかった。だ、だけど……。

「い、一夏さんはISを学ぶために留学しているのでしょう。ISはアラスカ条約で、あくまでもスポーツのために行われるもので、戦争に使わないと決めたのでは」
「どうやら蘭は何も知らないらしいな。あの条約はISの乱用を抑えるための最低限の決まりでしかない。現にほぼ全部のISが各国の軍か軍事企業に属しているし、国家代表候補以上の訓練は軍の仕事だ。日本では浜松の航空自衛隊第1航空団の担当だし、鈴も中国人民解放軍の基地で訓練を受けたそうだ。学園の外国人留学生も全員が軍の紐付きだよ」
「留学生もって、じゃあ一夏さんも――」
「ああ、俺が留学しているのはISを軍事利用できないか研究するためだ。どの国もそれは承知している。何しろ俺は、唯一の男性IS操縦者だからな」
 あっさり常識をぶち壊す一夏さんの断言に、お兄や母さん、お客さんまで呆然としている。お爺ちゃんの取り落とした包丁が、カランと床に転がった。
「話を戻すけど蘭、お前がIS学園に入りたいのなら、自分で選んだ人生を止めはしない。だけど名目やきれいごとを簡単に信じるな。それにISを学ぶのなら真剣にやれ。あれは生きるための訓練でもあるからな」

 食後、一夏さんがお兄とエアホッケーに出かけてしまうと、ようやく放心状態から戻った母さんとお爺ちゃんが顔を見合わせた。
「蘭、やっぱりIS学園の受験は考え直すべきじゃないの。一夏さんの言う通りなら、お前が戦争に駆り出されるかもしれないし」
「一夏って子は軍人だから戦う覚悟があるだろうけど、蘭にあるのか?」
 何と言われても決心は変わらないわ。八歳年長になって本物の戦争まで経験してきた一夏さんを奪うには、私も大人にならなくちゃ。最高の男が簡単に手に入るとは思っていない。一夏さんのような宇宙戦争とはスケールが違うけど、これは男を奪う女同士の戦いよ。最初から負けを認めてたまるものか! とりあえず、お兄が帰ったらパイルドライバーとブレーンバスターとバックドロップをかけて気分を落ち着けよう……。

※原作で蘭が比較的まともに見えてしまうのは、彼女がIS学園で一夏争奪戦に参加していないからでしょう。従ってそばにいる弾は、常に犠牲者であり続ける運命ということで。

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最終更新:2013年09月07日 21:03