593 :パトラッシュ:2013/09/28(土) 07:54:19

earth様作『嗚呼、我ら地球防衛軍』と某作品のクロスオーバーのネタSSの勝手な続編PART24

山本玲SIDE(2)

 当直勤務を終えた私は自室へ戻らず、一夏の部屋に向かった。新見少佐の『警告』を思い出し、ドアホンを押す指が震える。
「山本先輩――」
「一夏、加藤隊長と話したのでしょう。その件で」
「……わかりました、どうぞ」
 初めて入った室内には古い紙の本が何冊かと、鉛筆で描かれた素描画の額が壁にかかっているだけだ。あまり上手とはいえない筆遣いの、きつそうな面立ちの二十歳前後の女性像。絵の下には『Chifuyu・Orimura』とある。
「この人は?」
「姉です。俺が描きました……物心つく前に親をなくした俺は姉に育てられたけど、六年前に生き別れになってからは写真一枚もなくて」

 六年前といえば、地下都市への避難で大混乱だった頃か。ガミラス戦役以降、私のように天涯孤独な者も珍しくない。唯一の身内である姉と生き別れた過去が、十歳年上の女性に惹かれた理由なのか。だけど譲れない。ガトランティスとの戦いで弘樹を失ったとき、私は間違いなく後を追おうとしていた。それを強引に引き戻してくれた一夏はあの日以来、私の心に棲みついて離れなくなってしまった。彼がいたからこそ、私は生きようと決めたのだから。私は改めて、まっすぐ一夏に相対した。
「なぜ私でなく、あの人を選ぶの?」
「先輩が嫌いなのではありません。ただ、男として責任を取らなくては」
「当直前に話したけど、あなたが義務感で愛そうとするのに応えるつもりはないと言っていたわ」
「――聞かれたのならご存知でしょうが、理由はどうあれ新見少佐は俺に生きる力を与えてくれた人です。それに遊びで複数の女性と付き合うなんて、俺にはできません。先輩の気持ちは嬉しいけど……」
 目を上げた一夏は絶句した。私が制服のボタンをはずし、脱ぎ捨てようとするのに呆然とする。慌てて止めようとした手を払い、下着や靴もとって兄の形見のペンダントだけの姿で立った。
「一夏、見て。あなたに愛されたいと願っている私を」
「らしくない真似はやめてください、自棄になってるんですか?」
「誤解しないで。女にだって征服欲はあるわ。ライバルに負けたくないから、同じ位置に立とうとしているだけよ」
「……先輩はずるいです。女に恥をかかせたくなければ、先輩を抱くしかないのに」
「戦争は相手がどう動くか予想して、作戦を立てた側が勝つわ。あなたは私との戦いに負けたのよ」
 一夏は視線をそらさなかったが、何も隠さない自分を見られている恥ずかしさはなかった。
「やっぱり先輩はずるい人だ。敵の指揮官だったら勝てそうにないな」
「で、潔く敗北を認める?」
 一夏も黙って軍服を脱いでゆく。やがて生まれたままの姿の男と女が佇立した。
「傷だらけね……」
 傷痕や痣が散在する細身の裸身。最前線で戦い続けてきた証だ。「先輩こそ」と一夏の指が伸び、右肩から乳房まで伸びた打ち身をなぞっていく。彼の指が進むごとに体の奥がうずき、熱いものがこみ上げる。耐え切れず一夏に抱きついて唇を求めた。
「先輩……」
「玲って呼んで、お願い」
 ずっと求めていた肌のぬくもりに、私はすがりついた。初めて迎え入れた彼の激しさは信じられないほどで、何度も意識を飛ばした。濃厚なキスを浴びせ、繰り返し追い上げながら、一夏は力を失わなかった。今まで知らなかった快楽に突き落とされた私は、弘樹との夜には決して出したことのない声を上げ続けた。汗も玉となって全身から噴き出した。新見少佐の言った通り、女を狂わせるために生まれてきた男なのか。

「一夏、も、もう限界よ、許して……」
「だめだ、許さない。今夜は玲が起き上がれなくなるまで抱いてやる。仕返しだよ」
「そ、そんなあ……」
 髪を振り乱してあえぎながら、私はスケッチの女性を目の隅にとらえていた。ちふゆさん、だったかしら。そんな目で見ないで。あなたの弟を愛したことを後悔していないから……だ、だけど、さすがに……。

 ※玲ファンはスルーしてください。玲も薫も愛する人を失った直後の空白に、一夏が入り込んでしまったのですから。次回はコメディを書きます。wiki掲載は自由です。

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最終更新:2013年10月21日 14:48