645 :フォレストン:2014/02/09(日) 15:22:39
現実だったら無理ゲーにもほどがある…

提督たちの憂鬱 支援SS 憂鬱豪州海軍事情

英連邦の一つであり、南半球に存在する有力な国家。それが豪州(オーストラリア)である。
広大な国土に、豊富な鉱産資源、農業と牧畜も盛んであり、自らを賄って余りあるほどであった。

これだけを聞くと、何の問題も無さそうなのであるが、豪州は人口が少ないことに起因する国内市場の狭さゆえに、製造業の発展が立ち遅れていた。
農業国というほどでは無いのであるが、生活に必要な機材や消費財かなりの部分を輸入に頼っていたのである。
食糧を輸出し、引き換えに作業機械などを輸入するのが、豪州の貿易スタイルであった。

それゆえに貿易が出来ないことは、国家の死活問題であった。
このため、豪州海軍は早い段階からシーレーンの確保に乗り出していたのである。
そのこと自体に問題は無いのであるが、白人優越主義である豪州の行き過ぎた行動は、周辺のニューギニアやインドネシアと摩擦を引き起こしていた。

20世紀初頭からの日本の急速な発展拡大が、豪州の過剰な行動に拍車を掛けた感があるのは否めない。
有色人種の国家であるため、気に喰わないという感情的な面もあるのであるが、日本の日清、日露戦争の勝利は、豪州政府首脳部を警戒させるのに充分過ぎたのである。

1942年8月16日。
大日本帝国政府は米国に対して宣戦を布告し、太平洋全域が戦争状態となった。

豪州政府は、人種的にも心情的にも米国の支援に乗り気であり、様々な面で便宜を図るつもりだったのであるが、開戦直後に巨大津波で米国は甚大な被害を受け、その後も中国大陸では在中米軍は連戦連敗、さらに米海軍はアジア艦隊が壊滅させられたのである。

開戦前までは、想像もしていなかった日本軍の強さに、戦慄した豪州政府であるが、支援を頼もうにも、同じ白人国家である米国は既に津波による被害で半身不随であり、英国本国の反応も鈍かった。それどころか、余計なことをするなと暗に釘を刺してくる始末であった。

事ここに至って、結局最後に頼れるのは、己のみと悟ったかどうかは定かでは無いが、豪州は陸海軍共に、急速な軍拡に走ることになるのである。

646 :フォレストン:2014/02/09(日) 15:29:29
1942年の時点で、豪州海軍で最大の軍艦は、ケント型重巡洋艦であるキャンベラである。
元々、英国で建造されたこの艦は、植民地警備用であったため、航続力の長さに重きを置いており、その分装甲と火力が犠牲となっていた。

日本海軍の攻撃機による、アジア艦隊壊滅を知った豪州海軍は、経空脅威の増大に対応するために、英国を拝み倒して技術者を派遣してもらい、高出力機関に換装して、装甲と火力を増強することを目論んだのであるが、豪州の造船インフラでは無理無茶に過ぎ、結局のところ、対空機銃の増設だけでお茶を濁している。

外観上の特徴は、舷側にずらりと配置された、AN-M3 20mm機関砲である。
両舷合わせて、60丁が追加配置されており、これによる弾幕で、接近してくる日本機を叩き落とすことを狙っていた。

ちなみに余談ではあるが、搭載されたAN-M3 20mm機関砲は、本来フランスからライセンス供与を受けた、イスパノ20mm機関砲である。

1940年のノルウェー侵攻の際に、英軍がフランス軍艦隊に対して、最後通牒を突きつけたあげくに撃沈した事件が、英仏関係を致命的なまで破壊してしまった。
その後のフランスの対英感情の悪化にともない、イスパノ社からのライセンス生産権の剥奪と、技術的サポートの停止、無断で生産した際の懲罰的罰金の制定など、問題は拗れに拗れたのである。
そこで、米国がライセンス生産していた、AN-M3(実質イスパノMK-V)の名前だけ借りて生産を継続したのである。
後の米国崩壊後には、技術的資料その他機材も含めて、生産権を丸ごと接収し、きっちり帳尻を合わせていたりする辺り、狡猾な英国紳士の本領発揮と言えよう。


キャンベラ (ケント級重巡洋艦)

性能諸元
排水量:基準11150トン  満載13750トン
全長:192.02m  179.8m(水線長)
全幅:20.8m
吃水:4.9m

機関:アドミラリティ式重油専焼三胴型水管缶8基+パーソンズ式ギヤードタービン4基 4軸

推進
最大出力:80000馬力
最大速力:31.5ノット
航続距離:12ノット/13300海里 31.5ノット/3150海里
燃料:重油3400トン
乗員:679~700名

兵装 1942年改装時
    アームストロング Mk8 20.3cm(50口径)連装砲4基
アームストロング Mk5 10.2cm(45口径)単装高角砲4基&連装高角砲2基
ヴィッカーズ 40mm(39口径)八連装ポンポン砲2基
ボフォース 40mm(56口径)機関砲12基
AN-M3 20mm(76口径)機関砲74基(うち60基は両舷配置)
53.3cm水上魚雷発射管四連装2基

装甲 舷側:140mm(水線面主装甲)、63.5mm(機関区隔壁)
    甲板:35mm(水平面)
主砲塔:51mm(前盾)、38mm(後盾)
主砲バーベット部:25mm
主砲弾薬庫:25~110mm(壁面)
    航空兵装:水上機1~2機(カタパルト1基)

史実のキャンベラの両舷に60基の20mm機関砲を配置。
なお、同時期にパース型軽巡であるシドニーも、キャンベラに準じた改装を受けており、こちらは両舷に40基の20mm単装機関砲の増設を行っている。

647 :フォレストン:2014/02/09(日) 15:32:42
第1次大戦時に、英国がドイツのUボートの活躍により、干上がる寸前にまで追い込まれた例にもあるように、潜水艦による通商破壊戦術は脅威であった。
日本が潜水艦による通商破壊戦術を採用して、豪州を封鎖した場合、その結末が悲惨なものになることであろうことは、早くから予見され、豪州海軍上層部も対策に着手していたのである。

日本海軍の潜水艦対策のため、史実よりも早く建造された、英国のリバー型フリゲートの図面を手に入れた豪州海軍では、シーレーン防衛の名目の元に、1940年から全力で建造を開始しており、数が揃いつつあったのである。

戦時急増モデルとして設計されたため、船体は商船構造基準が用いられており、機関もコストと調達のし易さを考慮して、旧式なレシプロ機関が搭載されたが、ヘッジホッグや爆雷投射機などの対潜兵装は護衛駆逐艦なみの数が搭載されていた。


リバー型フリゲート

性能諸元
排水量:基準1370トン  満載1550トン
全長:91.74m
全幅:11.27m
吃水:3.96m

機関:三段膨張式往復動蒸気機械×2基 2軸推進
最大出力:5500馬力
最大速力:20.0ノット
航続距離:12ノット/7200海里
燃料:重油(搭載量不明)
乗員:140名

兵装 1943年
    4インチ単装高角砲2基
AN-M3 20mm(76口径)機関砲10基(うち4基は連装配置)
ヘッジホッグ投射機1基(爆雷126個搭載)

リバー型フリゲートの大量配備により、想定される日本海軍の無制限潜水艦作戦に、対応出来ると、海軍上層部は安堵したのであるが、彼らの想定した潜水艦の性能は、あくまでも第1次大戦時のUボートの性能から推定したものであり、当時の日本海軍の主力潜水艦であった、潜高2型潜水艦の性能は、その遥か上を行くものであった。

戦後、日本の潜水艦の性能を知った豪州海軍関係者は、そのあまりに反則染みた性能に卒倒したと言われている。

648 :フォレストン:2014/02/09(日) 15:37:04
日本海軍の本命とも言える、戦艦と空母への対策であるが、まともに殴り合おうにも、実働している艦艇は重巡キャンベラと軽巡パースを除けば、護衛駆逐艦がせいぜいであり、海上決戦など夢物語であった。

空母戦力も、今年に入って商船改造空母が就役したものの、訓練は未だ途上であり、しかも運用する機体は複葉機であるため、これまた論外であった。

どうしようもなく絶望的な状況であったが、この事が逆に海軍上層部を吹っ切れさせた。
まともな手段で敵わないなら、まともじゃない手段を使えば良いのである。彼らが出した結論は、地の利を生かした、多方面から同時襲撃であった。

接近されるまで島影に潜み、機を見て多方向から一斉に攻撃、戦艦と空母を撃沈して、日本海軍に出血を強いて、厭戦気分を盛り上げて早期講和につなげる。これが豪州海軍の基本戦略となった。

戦略というよりも希望的憶測に基づく願望といっても良い類であるが、彼らにはこれしか選択肢が無かったのである。

襲撃に使用する戦力であるが、短期間に大量に揃えられ、高速で運動性に優れ、かつ大型艦艇を撃沈出来る攻撃力を備えた艦艇が望ましかった。
そしてそのような要求を実現出来る艦艇が一つだけ存在したのである。

PTボート。
魚雷を搭載した高速モーターボートと言ってよいシロモノであるが、それだけに構造も簡易で大量生産が可能であり、攻撃力も(命中すれば)高かった。

英国本国に頼み込んで、ヴォスパー社が開発した魚雷艇の生産権を得た豪州海軍は、直ちに大量生産を開始したのである。

大量に生産された本艇であるが、想定される戦場であるサンゴ海、アラフラ海、ティモール海に存在する点在する小島に秘匿配備される予定になっていた。
日本海軍が接近するのを見計らってから配備する予定だったのであるが、結局無駄に終わってしまったのは言うまでもない。


ヴォスパー 72フィート6インチ魚雷艇

性能諸元
排水量:満載49トン
全長:22.10m
全幅:5.94m

機関:パッカードVM-2500×3基 3軸推進
最大出力:1350馬力×3(4050馬力)
最大速力:40ノット
燃料:ガソリン(搭載量不明)
乗員:不明

兵装 1943年
    533mm単装魚雷発射管×2
連装12.7mm ビッカース機関銃(50口径)1基

この時代の魚雷艇としては、最速の40ノットを発揮可能であったが、木製船体に高出力ガソリンエンジンの組み合わせは、火災に弱く、訓練中に火災が発生して放棄する事故が多数おきている。

649 :フォレストン:2014/02/09(日) 15:40:15
ハワイ沖海戦における一方的な虐殺劇や、ハワイ攻略に派遣した大艦隊の威容、とどめにメキシコへの原爆投下を見せ付けられた豪州政府であるが、それでも軍拡をやめなかった。

日本がインドネシアやニューギニア、ベトナムを分離独立させるとの情報が入ってきたからである。
それはすなわち、自国の周辺が、親日国家となることを意味していた。これまで散々、日本と敵対してきた豪州政府からしてみれば、とても許容出来ることではなかった。

しかし、現実問題として、英国からの支援は期待出来ず、米国も崩壊しているため、自国を支援してくれる国家は存在しなかったのである。
英国からの度重なる忠告もあり、豪州政府は日本に対して融和的な政策を取ることを決定。
以後、少しずつではあるが、歩み寄る姿勢を見せ、日本との交流を増やしていくことになる。

政府が宥和政策に転じる一方で、陸海軍上層部は強硬派が占めており、政府の政策に反発していた。
クーデターも辞さない覚悟の軍人も実際にいたわけであるが、そういった人間は、『不慮の事故』や、行方不明になったりしたため、事なきを得たのであった。

その後、日本海軍の支援を受けた豪州海軍は、世界でも有数の親日的な海軍となり、日本に親善航海を盛んに行うようになるのであるが、それはまた別の話である。


あとがき
というわけで、豪州海軍について書いてみました。
なんというか、はっきり言って無理ゲーですねw

史実以上に英国が疲弊しているので、回されるはずだった重巡や軽巡は英国防衛に使用されてしまい、米国は崩壊して頼れない。何をどうやっても詰んでいます。
それでも悪あがきをさせてみましたが、悪あがきにすらなっていないのがなんとも…(汗

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最終更新:2014年02月19日 22:33