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支援ss_辺境人さま_対戦車砲編
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8.
ham
2009/03/21(土) 17:11:36
<提督たちの憂鬱支援SS 対戦車砲編>
1932年(昭和7年)。
第二次五ヵ年計画により軍の予算も少しずつではあるが増大傾向にあり、あと数年で第二次世界大戦に備えた軍拡が控えていることもあり、これまでの軍縮の反動かあれも欲しいこれも欲しいと予算が降りる前から混乱する軍備計画を調整するため、夢幻会の会合の回数も増大する一方であった。
「今日の議題は対戦車砲についてだ。40年代になれば威力不足になるだろうがやはり30年代なら37mmクラスの砲は十分有効だ。ぶっちゃけ史実の九四式37mm速射砲をどうするか、という問題だと考えてくれ」
「素直にイギリスの2ポンド砲をライセンス生産すれば良いのでは? 同盟国同士で兵器の共通化しておくのは定石だろう」
「俺もそう思ったんだが……砲兵科の方からクレームがついてな」
「クレーム? どういうことだ?」
「重量だ。まだ完成していないが史実通りなら2ポンド砲の重量はおよそ800kg程度、ボフォースの37mm砲のデータは今年制式化されたばかりなので正確なデータで約375kgだそうだ。ちなみに九四式速射砲はそれよりも更に50kg程度軽かったらしい」
「……輸送と移動の問題か」
「そういうことだ。平野など道路のある所なら問題ないがソ連国境あたりの森林地帯や山岳地帯でトラックなどの牽引車が使えるとは限らない。人力での運用を考えるなら野砲と同じでなるべく軽い方が良いのでは、という意見があってな。確かに軽い方が九二式軽戦車や装甲車などの軽装甲車両に搭載するにも楽だし威力的には2ポンド砲の砲が僅かに上、程度でしかないので一理ある……そもそも2ポンド砲は史実でもそれほど評判の良い兵器じゃないしな。まぁ使われた時期と戦う相手と使い方が悪かったというのもあるが」
史実においてイギリス軍が使用していた2ポンド砲はいかにもイギリス的というべきか360度旋回できる凝った砲架をつけたわりに対戦車砲なのだから徹甲弾しか必要ないと榴弾が開発されず、対戦車陣地や歩兵を相手にする際にほとんど役に立たず北アフリカ戦線などでは最も損耗率の高い兵器となっていた。
夢幻会としてもこの砲にさほど期待はしておらず、軽戦車や装甲車の主砲に搭載する程度で75mmクラスの砲を主力砲として開発する予定であった。
「ボフォース37mm砲は確かイギリスだって購入するはずだろ? イギリスも保有する砲なら兵器の共通化という問題も解決されるんじゃないか?」
「確か開戦時の保有数は100門以下だったはずだ。それじゃ補給はアテにできん。やはり数的には2ポンド砲が主力と考えるべきだろう」
「どうせ将来にはドアノッカーになってしまうんだし、RPG2のような対戦車ロケット弾があれば37mmクラスの対戦車砲なんかいらないんじゃないか?」
「いやいや、それは極端だろう。重量を問題にするならロケット推進じゃない普通の無反動砲を開発した方が同じ重量でより強力な砲を使えるはずだ」
「見本なしで開発するいつ完成するかも分からん新兵器をアテにできるか。小手先のスペックに頼らず森の中などでも戦える手段を確立し、同盟国と兵器を共通化してロジスティックの負担を軽減するのが王道というもの……」
どの意見も一定の説得力があるが故に議論は一向にまとまらない。陸軍において歩兵科と並ぶ二大勢力である砲兵科(航空科と機甲科は夢幻会の後押しがあるとはいえこの当時は軍の比率的には弱小勢力でしかない)の意向も無視できるものではないのが一層問題を複雑にしていた。もっとも、最大の問題は将来はともかく現時点では乏しい予算が最大の理由だろう。金があれば小型砲の一つの開発でここまで喧々囂々の騒ぎになるはずもない。まして軍も官僚の一種、予算を確保したものが発言権を持つ世界で予算配分が熾烈になるのはどの国でも変わらない。
そうして議論は終わる気配もなく、深夜まで部屋の明かりが消えることはなかったのであった。
<未完?>
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最終更新:2011年12月29日 19:32
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