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支援_yukikazeさま_ハワイオワフ島
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yukikaze
2010/07/23(金) 19:41:29
久方ぶりに支援SSをば
1942年6月中旬。この日、ハワイオワフ島にある将官の官舎で、二人の男が久闊を叙していた。
「久しぶりだな、ビル。輸送任務ご苦労だったな」
そう言って、コップに酒を注ぐ男に対し、ビルと呼ばれた男は、面白くもなさそうに
「ガキのお使いじゃないんだぜ。ハズ」
そう言って、注がれた酒を一息で飲み干すと、にやっと笑みを浮かべる。
「もっとも、輸送任務果たしたことで、こんな上手い酒を飲めるのは役得だがね。キンメル太平洋艦隊司令長官閣下」
下手なウインクをしながら、コップを突き出す友人に、キンメルは苦笑いを浮かべながら友人に返答する。
「肩書きで煽ててもムダだぞ。ハルゼー中将」
「で・・・俺を呼んだ本当の理由は何なんだ? ハズ」
二人だけの酒盛りが一段落したとき、ハルゼーは真面目な顔でキンメルに問いかける。
「輸送任務の成功を労うんなら、艦隊司令部で充分だし、飲み会をやるんだったら、別にここじゃなくてもいい筈だ。
何せここは、外の衛兵をのぞけば住人はお前さんだけだ。奥方がいるのならともかく、わざわざここで親睦会開く
というのは、第三者ならともかく俺から見れば不自然だ」
友人の鋭い指摘に、キンメルは軽く目を閉じ、そして彼を呼んだ本当の理由を告げる。
「近いうち、戦争が勃発するかもしれん」
どこと? という言葉はハルゼーからは出なかった。アメリカ海軍にとって闘うべき国は1つだけだからだ。
「始まるのはどのくらい先だ?」
「恐らく、今年中には始まるだろう。ワシントンは彼の国への締め付けを強化する方針を捨てるつもりはなく、
彼の国もコノエからシマダに総理を代えるそうだ」
「シマダか・・・。本気だな、向うも」
主に軍政家として知られている嶋田であるが、上海事変における彼の空海立体攻撃を策定した手腕は、アメリカ
海軍の一部からは「新時代の戦法」と高く評価されていた。
ハルゼーもまた、嶋田の事を「日本人にしては柔軟な発想力を持つ提督」と、高く評価していた。
「率直に聞く。現状でうちの航空戦力で日本と戦った場合、どんな結果がでる」
キンメル自身は大鑑巨砲主義者ではあるが、しかし制空権を取られた場合、艦隊行動に支障をきたすこともきちんと理解していた。
そのキンメルの問いに、ハルゼーはしばらくの間天井を見ながら考えていたが、やがて忌々しげに首を振りつつ吐き捨てるように言った。
「正直、3〜4倍の戦力差がない限り、制空権は望めんと言っていい」
その回答に、キンメルは再度質問する。
「機体か? 錬度か?」
「両方だ」
ハルゼーの返答は即決だった。現在の合衆国艦隊航空隊は、軍縮期の予算不足から機体の開発能力も、錬度も不十分なものであった。
海軍拡張に伴い、ようやく問題点にメスが入れられたが、これまでのツケが一朝一夕で回復できるほど甘いものではなかった。
「機体については、F4Fの後継機であるXF6Fが、初飛行段階にこぎつけそうだ。少なくとも、九六式とは互角の性能だと言うが」
「それが戦場に現れた時は、連中はもっと高性能の機体を繰り出しているだろうがな」
悪態をつきながら、ハルゼーは友人の見解に意見を加える。
「と、なると・・・行き着く先は航空隊の拡充と錬度の維持になる訳か」
それをなしえる為にどれ程の苦労が舞い込むのか、キンメルとしてはあまり想像したくない事ではあったが、だからと言って
投げ出す程、彼は無責任ではなかった。
「分かったビル。お前の意見を少しでも早く実現させるべく俺も全力を尽くす。それまでの間、お前は彼らと互角に戦えるよう
今以上に訓練に励んでくれ。これは艦隊司令長官の最優先の命令として受け取ってくれ」
「了解だハズ。俺も自分の部下が不甲斐ない状態では我慢が出来ないからな。ただ、さっき言った意見については頼むぞ」
そう言って、二人は強く頷くと、テーブルのコップを持ち、乾杯するとそのまま一気に飲み干す。
「次にここでこうやって飲む時は・・・」
「戦争に勝利した時だな」
だが彼らは知らなかった。彼らの未来が果てしなく険しく苦しい道であったと言う事を。
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