447. yukikaze 2010/08/28(土) 18:23:35
提督たちの憂鬱  支援SS  帝国陸軍リストラ計画

第一次大戦が終了し、世界は仮初の平和を得ることになった。
無論これは喜ばしい事ではあるが、同時にそれは戦争によって肥大化した
軍事力を、平時に適合した状態にまで戻す必要があった。
そしてそれは、大日本帝国陸軍においても例外ではなかった。

「さて・・・問題はどういう形でリストラをしていくかですが・・・」
そう言って、会議室に集まっている面々を見渡しながら、真崎甚三郎陸軍大佐は
心中溜息をついていた。
逆行者であり帝国陸軍史に詳しい彼にとって、ここの舵取りを間違えれば、陸軍が
とんでもない方向に暴走しかねない可能性があったからだ。
「宇垣軍縮はまず無理でしょうな。あれをやるには帝国の領土は広過ぎる」
同じく逆行者で、第一次大戦にも従軍経験のある建川美次中佐が返答する。
史実と比べ、日本は北樺太やカムチャッカを領土として加え、その地域の防備の為に
戦力が必要であったからだ。特に北樺太はオハ油田が稼動していた事から「帝国の生命線」
として、何が何でも保持しておく必要性があった。
「だが、第一次大戦の戦訓を見るに、現行師団の規模では扱いづらい事は否めまい。特に従来の4単位制は利点が少なくなっている」
そう指摘するのは、寺内寿一陸軍大佐。
確かに4単位制は師団規模が大きく継戦能力は高まるものの、師団長と連隊の間に旅団が挟まっており、柔軟な戦力運用がやりづらく
かといって、旅団を廃止して師団長直轄にすれば、規模の大きさが災いして司令部機能がパンクしかねない欠点があった。
「と・・・なると、連隊を3単位制にして、旅団と一個連隊廃止にするのか?  ポスト削られた恨みが上原さんとこと組んだら厄介だぞ」
史実でも対ソ戦戦備の為に強大な常備軍編制を維持するよう主張した上原閥は、陸軍内にも一定のシンパを抱えており、仮にポストを
大幅に削減した場合、不満を持つ佐官以下の連中が一気に上原閥になだれ込まない保証はなかった。
「それについてはいい考えがあります」
真崎の心配に返答したのは、この会議の出席者において最年少の東条英機大尉であった。
「まず歩兵連隊の削減ですが、これについては従来の師団の輜重兵大隊を拡充して、兵站連隊を新たに創設します。
この連隊には、輸送・補給・整備・医療の各大隊を統合し、師団の後方支援能力を拡充させます。これにより連隊長
ポストの削減はなくなることになります」
それを聞いて、出席者からは納得を示すかのように頷くものが多数出る。
日清戦争この方、陸軍では後方支援をいかに機能させるかは最重要課題として研究されており、こういう拡充は必要であったし
また連隊長のポスト削減を防ぐ事ができるのも好都合であった。
列席者の好反応を見た東条は、内心安堵しつつ話を続ける。
「旅団については、原則廃止となりますが、その内の一名は副師団長とします。これは従来師団長が兼職されていた留守師団長職
を独立させ、留守師団の主な任務である教育と派遣された師団に対する人員補充を専門的に行います。残る一名に関してですが、
これは史実のような歩兵団を作成する事で対処します」
この東条のプランに出席者からは異論が出る。
「歩兵団は必要なのか?  正直無用だと思うのだが?」
「平素から常設する必要性は乏しいものの、作戦時、主力とは距離的・地形的に離隔した場所で
まとまった兵力を運用する場合などには必要なものなので、必ずしも無用の長物とはいえません。
それに、これらの歩兵団司令部は、従来の旅団と違い参謀長などの幕僚も付けますので、師団拡大時に於ける
人材のプールにもなります」
「それは分かるが、それだと人員削減は限定的ではないか?」
「ドイツのスケルトン師団のように、特定の師団を除いて、職業軍人だけにします。これにより兵卒に払う予算が
削減されますし、徴兵制から志願制への移行を言えば、世論は歓迎するかと」
「上原閥にはどう返答する?」
「「教育・訓練に時間を要する職業軍人を手元に残し、有事には一般市民を徴兵する事により、戦力の質的な維持を目指す」と言えば
問題ないかと。歩兵用火器は現状で充分ですし、砲兵もロシア向けに生産していたM1902 76mm野砲を史実のM1902/30に準じた改装をして
既に各師団に配備していますので、従来型よりも兵力が下がっても文句は言われないかと」

かくして、喧々諤々の議論を進めながらも、陸軍は可能な限り質を維持しつつリストラを行う事に成功する。
なお、この時の東条の活躍が、後に彼の出世への道を開く事になる。
448. yukikaze 2010/08/28(土) 18:52:40
で・・・言い訳。
これは設定スレでも言及されていたけど、第一次世界大戦後の陸軍のリストラは
どうなるかいなという自分の回答。

宇垣軍縮は、師団削ったために士官や下士官の数まで削減してしまい、日中戦争以降の拡大時に
偉い苦労することになるので、士官と下士官数は確保したい所。
故に師団削減ではなく大多数の師団における兵数削減してリストラを行う事で、予算圧縮しています。
勿論「ついでに士官と下士官も減らせ」という存在も出てくるでしょうから、これについては
徴兵制から志願制という餌で黙らせる事にします。

問題は、歩兵団における幕僚団ポストや留守師団長ポストを果たして大蔵省が認めるかどうかといったところですか。
ちなみに作中でのM1902/30 76mm野砲については、ロシアの兵器生産能力はかなり低い(後半は大分盛り返しましたが)
ので、第一次大戦中、ロシアの注文を受けて量産していて、その優秀さに日本陸軍も本砲を採用したと言うことにしています。
(M1897 75mm野砲でもいいんだけど、あれは間接射撃が出来ないという問題があるからなぁ)

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最終更新:2012年01月01日 01:46