100. ひゅうが 2011/11/17(木) 03:20:47
ネタSS「あの人が聖杯戦争に放り込まれたようです」

――その男は、何もかもが普通だった。
会社員というなら、それで通ってしまいそうなほどに。
事実、彼の行動もまた平凡そのものだった。
たとえ、聖杯戦争という非常時にあっても、彼は朝起き、朝食を食べ、TVを見、そして趣味に精を出す。
日本中のご家庭の多くの休日には、彼のようなオヤジ臭い男がいたことだろう。
そしてそんな彼の顔はいつも嬉しそうに輝いていた。
だからこそ、そんな彼は半分戦力外であり、また人生経験が濃かったからかその箴言は助言となって一同を助けていた。

だが――。



「王の命だ。退け。雑種。」

冬木の地下大空洞。
大聖杯のすぐそばで、男は相対していた。

方や、金色の覇気溢れる英雄王。方や、企業戦士の鑑のようなスーツ姿の青年。


「それはできないな。」

「なっ。神崎さん。なんでここに。」

「後輩を放っておいて昼寝ってのは大人の楽しみだが、世界の運命をかけた果たし合いとあってはそれは無理だよ。忌々しいことに。」

「無茶よ!あなたは戦闘力なんて・・・!」

「ああ。だからちょっとズルをする。」

男、神崎博之と名乗った男は、少し皮肉げに笑ってメガネをとった。
とたんに輝きが彼を包み込む。光がおさまったそこに居たのは・・・

「なっ。あ、あなたは・・・!」

セイバーが驚愕する。

「ねぇ衛宮くん。私、あの顔知っているんだけど。」

遠坂凛がひきつる。

「奇遇だな遠坂。俺も。もっというと歴史の教科書で。」

そして、衛宮士郎もひきつった。
101. ひゅうが 2011/11/17(木) 03:21:24
目の前にいる男は、もうただのサラリーマンではなかった。純白の第1種軍装に身を包み、肩には元帥海軍大将の階級章。その眼光はとぼけた風ながらもギラギラ輝いている。
怒りを隠しきれない様子で、男は宣言する。


「宝具・・・『大日本帝国陸海軍(インペリアル・フォース)』解放!」

輝く元帥杖の光とともに、現れる男たち。

「久しぶりだな。嶋田くん。」

「老骨にもう一度死に花を咲かせろとは、また無茶をいうな。」

日本海海戦の英雄を筆頭にした維新の英傑たちが、

「機動部隊閲兵以来ですな。閣下。基地航空隊もろともご厄介になります。」

「遊撃戦ならお任せを!水中高速潜水艦の威力、思い知らせてやりましょう!」

冬戦争以来の撃墜王たちや史上初の戦略空軍の搭乗員たち、そして世界最強のドン亀乗りたちが

「なんだかわかりませんが、戦ですね?」

「戦車戦は久しぶりですな!瀋陽以来の機動殲滅、ご期待ください!」

帝国陸軍最強の人間兵器と、戦車指揮官たちが、

「ハワイ沖で果たせなかった決戦、やらせてもらってもいいのですな?」

「思う存分に主砲を撃てる!そんな好機逃せませんな!」

20世紀の無敵艦隊を率いた男たちが、

「もういちどお前と肩を並べられるとは、靖国から来た甲斐があったな。」

「予算は今回限りは無視できますからね。まぁ私も大目に見ましょう。」

「腐れ縁だが、本物を使った特撮ができるのはうれしいね。」

「まぁ乗りかかった船だ。あの世へ帰省前の一仕事、ともにしよう。お茶は零すなよ。」

「退路は我ら海保が確保する。・・・海軍軍人なんだがな私・・・」

そして彼の盟友たちが。
無数の男たちが彼に笑いかける。


「何だ。何だというのだ!!雑種がいくら寄ってたかって来たところで、我に勝てるわけがない!」

いつのまにかそこは大海原と大地がどこまでも広がる世界。
そこには無数の航空機、戦車、銃火器、そして鋼鉄の軍艦。
翼や装甲に日の丸。マストには旭日旗。
うなりを上げたそれらは、水平線か地平線か定かでない世界で鎌首をもたげはじめる。


「行くぞ、英雄王。総力戦の準備は十分か?」


生涯現役にされたため、死んだ後になってようやくとれた休暇を邪魔された男、嶋田繁太郎。
彼は、実にイイ笑みで掲げた右手を振り下ろした。





【あとがき】――以前聖杯戦争に嶋田さんが召喚されたらというネタがあったので書いてみました。
イスカンダルのアレみたく、一度こっきりで自分が関わった人材+太平洋戦争当時の兵器群を投入可能な宝具持ちとしてはっちゃけてみました。
なお、嶋田さんが聖杯に願ったことは「一度くらい朝から寝られるくらい十分な休みがほしい」ということで(爆)
熱出して寝床でうなってたら思いついたネタですので投下してみました。

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最終更新:2012年01月01日 21:26