217. ひゅうが 2011/11/19(土) 00:10:31

>>208
  そのネタで一筆掌編をば。

――ネタSS  「第3次聖杯戦争にあの人+αが乱入するようです」


――194X年  日本帝国  冬木市


「冬木か・・・」

神祇院事務次官をつとめる加藤保憲は、最近このあたりを通り始めた特急列車を使って赤レンガの駅舎に降り立った。
川を挟んで北側の深山町と南側の冬木市。この二つは南北を山に囲まれ、西の海をのぞむ風光明美な地だ。

「なるほど。来ていて気持ちがよくなる土地だな。」

「感心していないで・・・仕事なのでしょう?」

「そう拗ねないでくれ。目方事務官。」

「そうはいいますけどね加藤次官。」

加藤恵子、旧姓を目方恵子は少し不満そうな表情で薙刀入れを地面に置いた。
海老茶の袴と萌黄色の和服は、既婚の女性が使うにしてはいささか奇妙だ。が、彼女が言うには「仕事場ではこれでいい」とのことであった。
それに、普通の袴ではなく事実上のズボンのようなもので、動きやすさも考慮されている。

あるいはこの格好がしたいから、神祇院の職員名簿には「目方恵子  総局事務官」として記載されているのかもしれない。

「そりゃあ夫と旅行にいくのはよいですよ。でもそのことごとくに仕事が介入してくるのは、これはいけずのひとつもしたくなります。」

「ははは。悪い悪い。いくら主上にまつろったとはいえ、こちとら葛城や出羽の瀬に降る土蜘蛛が末裔(すえ)だ。困ったことに遼東で根絶やしにされかけた北元の巫女の血まで混ざっている。それは頭の中がご一新以前で止まっている連中は警戒するだろうからね。」

「だから将門公の御使いを侍らせ、かしこき所とお伊勢の上意を携えて訪問すると?
生臭いですね本当に。」

「霞を食って生きるわけにはいかんからな。一応魔人といわれてもこの世のしがらみからは逃れられんよ。」

二人は笑いあった。



「ゆこうか。」

「ええ。」

二人の役目は、ひとつ。お山の森の中で危険極まりない毒をニトログリセリンに混入しようとしているような焦った一族にもの申すこと。

それが不可能であれば、彼とともに冬木に入った土御門が一族と四国の平家が末裔、さらには熊野に眠る地祇と、恐れ多い伊勢の大神までもが介入する予定だった。
まさにドリームチームといえる。

帝都ではかしこき処が準備を進めつつあり、外務省経由で英国とイタリア中央部に談判状が叩きつけられている。
下手をすれば浅間(せんげん)の姫が顔を青くするほどの大戦(おおいくさ)になりかねないが、加藤は心配していなかった。

彼の背を守るのは、これ以上ないくらいに信頼する「相棒」だったのだから。
225. ひゅうが 2011/11/19(土) 00:29:07
>>217
続きが抜けてた・・・ので追記します。


――同  冬木沖  帝国海軍  第0機動戦隊旗艦  大巡「富士」


「ううん。何で俺があのアツアツ夫婦のかわりに軍艦に乗らなければいけないんだろう・・・」

「辰宮さん・・・それ何回目ですか?」

「これで48回目になりますね・・・ああ、なんでわが愛する人と引き離さなければならないのだろうか・・・!」

「仕事して下さい。」

「わかった。わかりましたよ黛少将。」

この人は・・・と黛治夫少将は怒りを通り越してあきれていた。
数日前に臨時編成されたこの第0機動戦隊は、こともあろうに日本近海で待機させられている。
軽空母とはいえ祥鳳型と護衛空母各1隻と富士型大巡を1隻割き、巡洋艦5、駆逐艦10で編成されたこの機動戦隊は実質的に1個艦隊に等しい。
妙に歯切れの悪い横須賀鎮守府と、乗り込んできたこの変人官僚。疑問は尽きない。

「実はですね。ちょっとあの地で危険物が見つかっておりまして・・・」

ニヤリ。と辰宮は笑った。

「最悪の場合、あそこを丸ごと吹き飛ばす羽目になるかもしれません。」

「なっ・・・」

「そうならぬように、うちの上司が交渉という名の脅迫にいっているところです。さて、どうなるか―――」


――異様な緊張の中、第3次聖杯戦争ははじまる・・・のだろうか?

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最終更新:2012年01月01日 21:25