83 :四〇艦隊の人:2014/02/25(火) 00:44:04
さて、日本大陸×恋姫のその四が完成したので投稿したいと思います。
今回は戦闘オンリーです。
陣地を張って待ち構えている重機関銃装備の現代歩兵に真正面から突っ込んでったらどうなるか?というのを表現できたとは思います。
……にしても戦闘になるとサクサク指が動いた気がする……。

84 :四〇艦隊の人:2014/02/25(火) 00:45:16
平原を騎兵と猛獣の群れが三群に分かれて移動していた。
先頭は大日本帝国陸軍第一一剣虎兵大隊第一一一剣虎騎兵中隊総勢三一七名。
日本亜大陸群の原産種である日本汗血馬の一品種、北方で生まれた漆黒の巨馬、黒王種に騎乗した彼らは、肩から五五式自動騎兵銃を、腰には四九式軍刀を提げ、一人ひとりが携行無線機を携帯している。
その後に続くのは一三九頭の剣牙虎。
学名をマダラオオキバネコというこの生物は、非常に高い知能と強靭な身体能力を併せ持つ、今や日本亜大陸群にしか生息していない生物種である。
剣牙虎の群れは先頭の黒い騎馬隊の群れに付かず離れずの位置に随行している。
そこから少し遅れる位置に張文遠率いる并州騎兵隊五〇〇騎の姿があった。


【ネタ】北郷一刀君と一〇〇〇人と六〇〇頭の愉快な仲間たちは外史に放り込まれたようです【その四】


霞は部下達の不調を敏感に感じ取っていた。
理由ははっきりしている。馬だ。
剣牙虎という大型肉食動物の存在と黒い巨馬たちの繰り出す無言の威嚇が馬達を神経質にさせている、要するにビビッているのである。
話がずれるが剣牙虎はもちろん、日本汗血馬もきわめて頭のよい動物で、なおかつ草食動物としてはきわめて獰猛な生物である。
かつて野生種だった時代は時に剣牙虎や大和大犬といった大型肉食動物達を蹴り殺し、助走をつけた体当たりで縄張りを荒らした怒涛鳥や陸亀を蹂躙し、時代がずれて元寇の頃には、やっとの思いで上陸した元・高麗連合軍の兵士達の肉と血で砂浜を舗装した。
一九一二年のストックホルムオリンピックから五大会連続で表彰台を日本勢が独占した理由の一つにはこの日本汗血馬があるとされ、諸外国の選手からは「あれはHorseではない、UMAだ」と言われたこともある。
もちろん并州騎兵の操る馬達もおとなしいとは言えないが、それでも黒王種の醸し出す威圧感は桁違いだ。
例えるなら、文系大卒一年生を熟練の土方連中やとび職達の仲に放り込んだような格好である。

(アカン、威勢良く出てきたはええけど馬が怯えきっとる……。こりゃ戦果は期待できそうに無いわな……。にしても、あいつらホンマ良え馬乗っとるなぁ……二、三頭ぐらい譲ってくれへんかなぁ……)

并州騎兵隊を率いる将、張文遠は戦闘開始直前までそんなことを考えていた。

「何がどうなってやがる!?」

并州に侵入した黄巾賊五〇〇〇を率いる男が声を荒げるが、その取り巻きたちは答えることができなかった。
先日派遣した偵察隊が一人も戻ってきていないのだ。
官軍にやられたのか、逃げ出したのかそれすらもわからない。
黄巾党、あるいは黄巾賊と呼ばれる集団には大きく分けて三種類いる。
一つは『数え役満☆姉妹』と言うアイドルの追っかけ集団という、北郷達第一一大隊の面々が聞いたら「存在する時代を間違えているのでは?」と頭を抱えるであろう連中。
一つは漢王朝の施政に絶望し、『数え役満☆姉妹』のカリスマを神輿に、本気で世直しを企む連中。
そして最後は、騒ぎに乗じて自らの欲望を満たそうとする黄巾の乱が始まる前から賊だった連中。
この頭目と彼が率いる部隊は三番目に属する連中だった。
吠える頭目の下に先に走らせていた物見の兵がやってきた。

「お頭、なんか良くわからねぇ連中がこの先に陣地を張ってやす。数は五〇〇ほど」
「なるほど、てこたぁ偵察隊の連中を殺ったのはそいつらだな?よし、野郎共!一息に踏み潰しちまえ!」

こうして黄巾賊五〇〇〇は『真正面』から第一一大隊本隊の作った殺し間に突っ込んで行った。


85 :四〇艦隊の人:2014/02/25(火) 00:48:21
「敵軍、真正面から突っ込んできます!」
「一〇〇まで引き付けろ。その後一斉射撃。第一中隊に獲物を残しておいてやる必要は無いぞ。我々だけで皆殺しにするつもりで行け」

第一一大隊第二中隊と第三中隊の歩兵からなる本隊の指揮を任された荻窪中尉は、平野に作られた簡易陣地の中で部下にそう命じた。
荻窪中尉の傍らには彼の猫である『鳴牙(なるが)』が伏せている。
その顎を撫でながら荻窪中尉はこう思った。

(何でこんなことになったのかはわからないが、とにかく降りかかる火の粉は払わなければなるまい。幸い北郷大尉は信頼できる上司だ。彼になら付いて行ける。それに何より……)
「俺達が活躍できるのはこういう戦場だ……だろう?」

犬歯が見えるほどつりあがった唇で荻窪中尉が発した言葉に『鳴牙』が低く唸った。

「敵軍、距離一〇〇!」
「撃て」

静かな口調で発せられた荻窪中尉の命令で、殺戮が開始された。


黄巾賊の真ん中あたりで馬に乗っていた頭目の頭が消し飛んだとき、取り巻きたちはまったく気づかなかった。
次の瞬間陣地から猛烈な射撃が開始され、瞬く間に前衛が死んでいく。
取り巻きたちが頭目の指示を仰ごうと頭目を見たとき、前衛と言う『肉の壁』の無くなった黄巾賊の本隊に銃弾が降り注いだ。

「イカンな、敵が崩れるのが予想以上に早い」

本隊の陣地の中で荻窪中尉はそう呟いた。
黄巾賊の前衛は既に殆どが死体となって地面に散らばり、本隊も既に指揮を執っているものが居ないのか右往左往と言った動きを見せている。
後方の敵騎兵は見るからに何が起こっているのか理解できていない様子だ。
荻窪中尉は一瞬だけ悩み、そして決断した。

「第二中隊射撃中止、着剣、突撃用意。第三中隊は第二中隊の突撃を支援せよ。剣虎兵、前へ!」


「張文遠殿!張文遠殿はいずこか!?」
「ここや!アンタは?」

前方から騎兵が五騎戻ってくるのを見て霞は馬足を緩めた。

「自分は第一一一剣虎騎兵中隊の岩崎剛軍曹です。状況が変わりました。当初の挟撃は中止、このまま最短距離で敵軍に殴りこみます。以降自分が第一中隊との連絡役を勤めます」
「どーゆーことや?」
「本隊の迎撃で予想以上に早く敵が崩れました。敵が散って逃げる可能性があります」
「もう崩れたんか?んなアホな……」
「とにかく第一中隊は突撃を開始しました。文遠殿も急がれよとの事です」
「わかった。全騎駆け足!!急ぐで!!」


「奴等を一人も逃がすな!!陣形、槌の一番!!剣虎騎兵、前へ!!」

北郷の命令で第一中隊は突撃陣形へと移行した。
ちょうどハンマーのヘッドの部分に猫達が二列横隊を作り、その後方で騎兵達が二列縦陣ををとる。
さらにその後ろから張文遠率いる并州騎兵隊。
総勢八一〇騎と一三九頭が敵軍後方でどうするべきか迷っていた黄巾賊騎兵に対し突撃を開始した。


黄巾賊騎兵の隊長は何が起きたのか理解できていなかった。
彼は本隊に伝令を走らせて指示を仰ごうとしたが結局彼がその返答を聞くことは無かった。
彼が伝令を走らせた直後、右翼から飛んできた銃弾が彼の頭を吹き飛ばした。


黄巾騎兵の側面に占位した第一中隊、并州騎兵隊は猫を先頭に突撃を開始した。
剣牙虎の横隊が黄巾騎兵に接触する直前まで第一中隊は銃撃を加え、約一弾倉を打ち切った後、肩から提げた騎兵銃を背中に回し、軍刀を抜いた。
剣牙虎達が黄巾騎兵に接触し、馬を追い散らしては彼らを馬から引きずり落とし、その牙で次々と致命傷を与えていく。
混乱する黄巾騎兵達にまず第一中隊が、そしてそれに続くように并州騎兵隊が襲い掛かった。
こうなれば、もはや多少の数の優位など関係ない。
わずか一〇分で黄巾騎兵は全滅した。
黄巾騎兵を相当した第一中隊と并州騎兵隊はそのまま黄巾賊本隊に背後から襲い掛かった。
その頃、黄巾賊本隊は第二中隊の突撃と第三中隊の銃撃により既に壊滅状態になっていた。
戦闘開始からわずか四五分、并州への侵入を図った黄巾賊五〇〇〇は、わずか一五〇〇に満たない敵に蹂躙され、文字通り全滅した。


86 :四〇艦隊の人:2014/02/25(火) 00:51:47
以上ここまで。
今回の戦闘に対する詠と霞の動きは次回にやります。
……それにしても書き始める前と後とで、荻窪中尉に対する味方が一八〇度変わってしまった……。
 

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最終更新:2015年02月21日 16:53