897. ひゅうが 2011/11/05(土) 22:44:05
※ヤマトネタを依頼されましたので、一筆書いてみました。一発ネタみたいなものですw
――――――――――――――――――

「なぁ。何か困ったことはないか?」

「いえ?私は幸せですよ?」

「いや。何というか・・・」

「あなたと一緒にいられるだけで・・・私は幸せです。」

「あ・・・ええと・・・ありがとう・・・」

――嗚呼、我ら地球防衛軍  支援SS――「島の休日」




「で、私のところに来たわけか・・・。」

「は、はい。こういう話題に詳しい知人が・・・その・・・」

「いや。分かった。何も言うな。」

応接セットの向こうで唸るアースフォース・グリーン(地球防衛軍の上級士官用の軍装に使われるからこの名がついている)の軍服の男を前に、島大介は恐縮した表情になっていた。
現場の士官たちと気さくに会い、積極的に意見を聞くという評判を聞いて思い切ってやってきてみたが、いささかここに来るのはまずかったかもしれない。

彼の目の前にいる壮年の男こそ、地球人類を異星人の侵略から守る、地球防衛軍統合参謀本部議長。
周囲からはもっぱら「議長」、古いなじみからは「参謀」と呼ばれている男だった。
後方で辣腕を振るう印象から想像はできなかったが、議長のデスクの上には書類の山が1つと半分ほど築かれている。
要件を伝えてから気付いた島は非礼を詫びたのだが、議長は気にするなとヒラヒラさせて彼を迎えてくれた。
それがかえって島を恐縮させている。
議長の職務は想像以上に激務であるらしい。

「古代艦長代理は森君に集中攻撃をかけているところで、兄の古代代将(戦隊指揮官レベルの士官と将官の中間あたりに位置する。英名マスターアンドコマンダー)の方は女王陛下の王配となるかもしれない・・・それに悩みを知ったら盛大に茶化すだろう。ヤマトクルーの諸君は・・・まぁ似たようなものか。土方さんあたりは少々近寄りづらい。だからここへ来たと。」

「よく分かりますね。」

「部下の状態を知ることも上司の勤めだよ。それで――」

さすがは議長だ。と感心する島に、議長はずいと顔を近づけた。

「『テレサ嬢をデートに連れて行きたいが、どんな場所がいいか』だったね?」

島は真っ赤になって「はい」と頷いた。


――白色彗星帝国との戦争、ガトランティス戦役が終わり、ヤマトクルーは一息をついていた。
新たにデザリアム帝国という脅威が判明していたし、友好関係を結んだボラー連邦との関係も緊張をはらんだものになっていたが、それでも地球はまだ平和だった。
議長をはじめとする優秀な防衛軍スタッフの尽力で地球防衛軍は強化されつつあり、一時は過剰とさえいわれた太陽系の防衛網は新たな敵に対抗するのに十分とはいわないが頼もしいものだった。
ガミラス戦役の復興からシリウスやプロキオンへの移民特需まで、地球経済は爆発的な成長を遂げている。
899. ひゅうが 2011/11/05(土) 22:47:28
そんな中で、戦いからひとときの休息を味わっているヤマトクルーの間では時ならぬ職場恋愛ブームが起きていた。
地球に移住し、三浦半島の見える高台に居を構えたイスカンダルのスターシャ女王は、式典で侍従をつとめて以来親交を深めていた古代守と交際をはじめ、それに触発されたのか古代進が森雪に告白。
それに続くように相原や南部なども「港で待つ女性」候補を量産していたのだった。
そんな艦内の雰囲気にあてられたのか、テレザード星から脱出して以来なし崩し的にヤマトに出入りしていたテレサに島は惹かれていた。
だが・・・島という男は、純情というかウブというか・・・その手のことにどうも弱かった。
ただでさえ地球は遊星爆弾攻撃で数多くの人命もろとも娯楽文化は失われていたし、ガミラス戦役まっただ中に育った世代である島は、そういった若者らしい文化に触れる機会を持っていなかったのだ。
加えて、周囲の雰囲気からどうも言い出しづらいという理由もあった。
真田さんは・・・超光速メリーゴーランドとか作りそうだからちょっと怖い。

そういったわけで、藁をもすがる思いで島が向かったのは、かつては東京と呼ばれていた連邦首都メガロポリスの地下で執務をとっていた議長だった。
ガミラス戦役の絶望的な状況下で彼の乗るヤマト建造を推進し、地球の防衛に辣腕を振るう知謀の持ち主である議長ならば・・・という考えがあったのだが、議長は島の訪問に驚きつつ歓待してくれた。
そのため、こういった頭を捻るという珍しい光景を島は見ていたのだった。


「俺もその手の話にはあまり縁がなかったからな・・・うまいことは言えんが。」

「議長もですか?」

「昔からそういうのはな。それにガミラス戦役でな――」

遠い目をする議長に、島は「失言でした。」と頭を下げた。
議長も愛する人をあの戦争で失ったのだろうか。
もっとも、議長の方は「ヤマトのおかげで増えた仕事が忙しすぎてアテがない」と考えていたのだが。

「いや、気にすることはない。」

普段は怜悧な知謀で皆を導き、ヤマトクルーの尊敬を集める議長が悩んでいる。
その光景は島にとり少し新鮮だった。
実は議長はその時珍しく焦っていた。ここはヤマトファンの一人として一肌脱ぎたい。
だが、彼にはそういったアテについてまったく心当たりがなかったのだ。

『どうする?前世であったような処はあらかたなくなっているし、遊興も我々が満足できるようなところは――』
そのとき議長の頭に電流が走った。


「・・・そうだ、京都行こう。」

それは、彼が前世で密かにファンであったJR東○のCMのキャッチフレーズだった。


〜続く?〜

【あとがき】――テレサと島の恋路を支援しようと動き出す転生モブキャラ連合。
果たして「京都決戦」の結末やいかに!?

というわけで書いてみました。遊星爆弾攻撃は爆発ではなく放射能汚染が恐ろしい兵器です。
裏を返せば、こうして残った町や文化財が数多くあるんじゃないかなと思います。

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最終更新:2012年01月02日 20:14