990. earth 2011/11/12(土) 20:21:41
ふと思いついた一発ネタです。続きません。


  『異邦人の集い』  

  居酒屋『とりっぱ〜』。平和なはずの平成日本から突如として異世界に飛ばされた者たちが集まれる場所である。
  そんな場所に一人の老人が足を踏み入れた。

「ビールを」

  老齢の店主にそういってカウンターに座ったのは大日本帝国海軍大将・嶋田繁太郎だった。
  嶋田の右隣に座っていた男は、嶋田の顔を見て楽しそうに笑う。

「おやおや、久しぶりですね、嶋田さん」
「なかなか、こちらに来る時間が取れなくてね。全く戦争と言うのは勝った後が大変だというのがよく判りますよ」
「それはこちらもですよ。全く、プラントを叩き潰したのに、ユーラシアや東アジアは物騒だし、宇宙でも海賊が煩いしで大変です」
「しかし貴方の力なら余裕を持って対処できるのでは?  何しろアズラエル財閥やロゴスは原作よりも強大で、協力者も多い」

  それを聞いた男、前ブルーコスモス盟主にしてアズラエル財閥総帥、そしてロゴス最高幹部を務めるムルタ・アズラエルは顔を顰めた。

「無茶言わないでくださいよ。こっちだって出来ることと出来ないことがあるんですよ。おまけに秘書は無愛想だし、仕事で出会うのは
  腹黒の年寄りばかり。全く……」
「どこも同じですな。こちらも腹黒い同僚に苦しんでいますよ。全く、あの連中はどこまで仕事を作れば気が済むのやら。
  穏やかな年金生活が来る気配がない……はぁ〜」
「まぁ仕事を任されるうちが華と思うしかないでしょう。ま、ここは楽しみましょう」
「確かに」

  こうして2人は飲み始める。それでも時折、仕事の話になり愚痴りあっていたが……。
  そんな中、新たな男が現れ、嶋田の左隣に座る。

「おお、議長じゃないですか。どうです、そっちは?」

  この嶋田の問いに地球防衛軍統合参謀本部議長を務める男はため息を漏らしながら答える。

「相変わらず地味な仕事ばかりですよ。全く、モブの意地を見せようかと思っているのに……」

  そういうと議長はコップに入った日本酒を飲み干す。

「全くお二人が羨ましい。悪役とか色々と言われていましたが、少なくとも名前がある。キャラが立っている。
  それに引き換え、私は原作では精々、ヤマトの行動を邪魔した程度のキャラで、名前さえないんですよ」

  議長の背中に哀愁が漂う。モブゆえの苦悩がそこにはあった。

「まぁとりあえずは順調じゃないですか、デザリアム戦だって準備万端ですし、防衛軍は原作より遥かにまともに戦えますよ」
「そうです。CEと違って他銀河にさえ出れるんです。人類が繁栄すれば、議長も評価されますよ。偉人伝にも乗って目立てますよ」
「……そうですね」

  嶋田とアズラエルは議長を宥め酒を勧めた。
  こうして異邦人たちの夜はふけていく。

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最終更新:2012年01月02日 20:13