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支援_名無し三流さま_赤い熊の苦闘
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取得中です。
788.
名無し三流
2011/02/04(金) 22:00:56
スターリンと愉快な同志達はどうしてるのかなー、と思って書いたSS。
主に35話や38話だったかどこかの内容が元になっています。
***
「 こ れ は ひ ど い 」
日本側――――実質的には夢幻会側――――から返ってきた返答は、
取引の詳細を知る、極僅かなソ連側の首脳部を上記のように嘆息させるものばかりだった。
提督たちの憂鬱 支援SS 〜赤い熊の苦闘〜
「何だね?このレートは。これでは我が方の旨みがあまりにも少ない。
それどころか逆に、向こうに随分と利している気がするのだが?」
クレムリンの主、スターリンは全身から不機嫌フィールドを展開させながら言う。
「おそらく対米戦が順調な事で強気になっているのではないでしょうか?
同志尾崎によれば、夢幻会内部にはこのようなレートを吹っ掛けるどころか、
我が国の兵器のスクラップも寄越してもらおうなどとと言う輩もいるようで・・・」
例によって傍らに控えているベリヤが額に汗をかきながら付け足すと、
スターリンはもう我慢ができない、といった表情で机を叩いた。
「賢しい小人が付け上がりおって・・・!!
同志ベリヤ、連中がそんな事を言い出すのであればこちらにも考えがあるぞ・・・」
歯軋りをしながらスターリンはベリヤへ書類を手渡した。もし夢幻会の人間がその書類を見たら、
(
*1
)
)
とスターリンの精神構造に冷や汗を流したに違いない。
事実、これに目を通したベリヤの額の汗はさらに増えていた。
789.
名無し三流
2011/02/04(金) 22:01:29
「農業用トラクターに工作用機械・・・拳銃小銃、そして・・・"タイプ96"を要求・・・!?」
ベリヤは"あんた正気ですか"と言いたくなるのを抑えるので精一杯だった。
「ふん、少し驚かせすぎたか?
目には目を、歯には歯を、だ同志ベリヤ。我々も大祖国戦争を遂行するため、
手段など選んではおれんのは分かっているだろう?」
スターリンはこれでもかという程のドヤ顔をしている。
どうやら辻らの吊り上げたレートが相当気に食わなかったようだ。
「はい、よく分かっておりますが・・・果たして受け入れられるでしょうか?」
「最初から必要最低限の要求をしては、それ以下の水準の成果しか得られん。
最初に多少吹っ掛けておけば、相手の譲歩のスタートラインを下げさせる事ができる。
このくらいは外交の初歩というものだ。それに・・・
我々は日本の工場が必要としている資源をわざわざ提供してやるのだ。
その対価として工場での製造物を我々が受け取るのは、至極当然な事ではないか?」
いよいよ赤い熊の本領発揮である。ベリヤはうんうんと頷く事しかできない。
そして一通り自分の案(ソ連側大幅有利なレート)の有効性を羅列した後で、
ようやくベリヤの質問に答えた。
「・・・が、その可能性は多いにあるな・・・」
と呟くと、自身の不機嫌フィールドをさらに濃密にさせつつ、
机の中から一枚の紙を取り出した。彼は怒っている時や不本意な事をしなくてはいけない時、
その不機嫌フィールドの出力を上げるという習性がある。どうやら今度は後者のようだ。
「万が一両者の満足する妥協点が見出せなかった場合・・・連中が日本側有利案へしがみつく場合は・・・
決して夢幻会の上層部以外には見られないように、この紙の内容を向こうへリークするのだ・・・」
ベリヤはその紙に目を通すと、額にさらに汗を浮かばせ始めた。
密室の中全体に広がる不機嫌フィールドと、その紙の内容でもう気絶寸前である。
『ソ連共産党上層部は水面下で対独和解を検討中。
検討の結果と状況によっては独ソの長期的協力関係への発展も有り得る』
「まさかドイツと・・・」
「そんな事は断じてしない!!これはブラフだ!!」
スターリンはベリヤを一喝した。彼の特徴的な生え際には血管が浮き出ている。
「悔しいが我が国に今切れる有効なカードはもう残されていないのだ!
極東軍は大祖国戦争に大部分を引き抜かれて骨抜き状態、肝心の戦況は泥沼状態。
その他国内の事情がどうなっているかは貴様もよく知っているだろう!ならば・・・」
「シベリア鉄道でナチの兵を極東に回させない代わりに、
シベリア鉄道で日本の食糧をソ連へ運ばさせろ・・・と、
そう日本へ言うのですか?」
ベリヤも長年スターリンの傍に控えているだけあってこういう理解力は高い。
要はツーカーである。スターリンは我が意を得たり、と不機嫌フィールドを少し緩和させた。
「機械類もな。今のソ連には工業力がどうしようもなく不足している。
先にも言ったが我々が生き延びるには、使える物は何でも使わねばならん。」
「了解しました・・・努力します」
一通りの対日交渉計画を立て終えて、
部屋から退出しようとするベリヤにスターリンは付け加えた。
「それと、そろそろ同志尾崎以外のパイプも作っておかねばならんな。
KGBには既に話を通してある。NKVDの人員も動員して、
共同でさらなる協力者の確保を急ぐのだ」
「・・・かしこまりました」
こうして日ソの物資取引協定に関する交渉はさらに侃々諤々とした物になっていったのだが、
ソ連の人間達はある事を見落としていた。そう、自分達に有利な取引にしようと画策すればする程、
協定締結までの時間が長くなり、そしてその分だけ悪化した食糧事情の犠牲者が増えると言う事を。
だが、だからといって誰もその失策を責められはすまい。
彼ら赤い熊達とて、先の見えない現実という名の暗がりの中で闘っていたのだから・・・
〜Fin〜
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