813. 名無し三流 2011/02/12(土) 23:04:05
なんか『ドイツ製珍機を何とかして憂鬱世界にも送り出せ!!』
とかいう電波を受信したので突貫工事したSS。後悔はしていない。



***



            提督たちの憂鬱  支援SS  〜珍機を求めて〜



「何だい、この図面は?」

  自身の執務室でドイツの軍需相シュペーアは部下の持ってきた図面にしかめ面をしていた。

「はあ、航空機メーカーの若手技師達が仕事の合間を縫って作ったそうです。
  何でもポーランド電撃戦の頃から、『こういう形の飛行機はより速く飛べるのではないか』
  という噂が技師の間でまことしやかに囁かれていたそうで、
  それを聞いた仲間達と協力してコツコツと図面を描き溜めていたとか」

  その図面にはメッサーシュミット社を始めとした、
ドイツの幾つかの航空機メーカーの若手技師らの署名があった。

「彼らはこれを新型飛行機開発プロジェクトとして発動する事を求めています」

  溺れる者は藁をも掴む。日本(夢幻会)が色々と荒らし回り、
度重なる戦争のせいで人的資源の不足していたドイツ国内の指導部には、
若手や部下の言う事も少しは聞いてみようかという人間が現れ始めていた。
アルベルト・シュペーアもその1人である。

「それにしても不思議な形だ・・・噂の出所はどこか分かるかな?」

「さあ、何しろかなり昔の話との事ですので、今となっては確かめようもありませんが・・・」

  その図面は確かに素人が見れば不思議かもしれないが、
少しばかり軍オタの入った人間ならばすぐにそれが何か分かっただろう。
図面上の機体には水平尾翼が無い代わり、主翼の前に小型の水平な翼があり、
エンジン及びプロペラは後方。その全体像は鴨の飛ぶ姿にも似ていた。

「まるでランツェ(ドイツ語で投げ槍)の先みたいな飛行機だね。確かに面白そうだけど、
  今の我々は1ミリグラムたりとも鉱物を無駄にすることはできない。そうだろう?
  こんな物を作る暇があったら、Me109の生産効率を少しでも上げなくては」

「・・・はっ、失礼しました。では彼らにはそのように・・・」

「そう落胆する事は無いよ。独ソ戦に余裕が出てきたら、
  この図面の事を総統閣下やルフトバッフェの人達に相談してみよう。
  あまり認めたくないが、私は兵器の事には余り詳しくないからね。
  だから彼らにはそれまで辛抱して、従来機の改良に従事してくれと伝えるんだ。」

  がっかりしていた部下は航空畑の人間だったのか、それとも技術畑の人間だったのか、
シュペーアの言葉を聞くとみるみるうちに明るい表情を取り戻して退出した。
814. 名無し三流 2011/02/12(土) 23:04:43
  所変わって日本は夢幻会上層部のよく利用する高級料亭。
そこでは夢幻会のメンバー達が顔をつき合わせていた。空気はあまり良くない。

「ドイツにエンテ型の構想が漏れていた事が何故今まで発覚しなかったんだ?
  しかも漏れたのはポーランド電撃戦よりは前だったと聞いているぞ。」

「口伝で伝播していったらしい、つまり書類とか図面の流出ではなかった事が大きいのでは?
  何せイギリスから『ドイツで航空機の画期的なデザインを確認』という情報がリークされるまで、
  誰一人としてこの事には気が付かなかったくらいですから」

「怪しいのは『神珍機研究会』や『独軍機同好会』辺りですかねぇ。
  一応倉敷の中でそういう事を考え付きそうなメンバーにも探りを入れてみましょうよ」

「それにしても流石は紳士の国ですね。
  我々との関係修復をしたいがために、そんな情報まで寄越してくるんですか」

「さしずめ新型機の名前は"シュワルベ"か?
  全く、史実ではドイツからジェット機やロケット機の発想を輸入していた日本が、
  今度はドイツに史実の"震電"開発における発想を輸出するなんて皮肉な事だな」

  口々に言葉が飛び交うのを、"大蔵省の魔王"辻が片手を挙げて制する。

「冗談じゃないですよ・・・未来の知識がこの世界において、
  いかに重要なファクターとなっているかきちんと認識できてない輩がいるなんて」

  続いて東条も眉間に皺を寄せながらたたみかける。

「辻さんの言う通りですよ。我々が他国に対してアドバンテージを得ているのは、
  この未来の知識のおかげなんですから・・・」

「とにかく今後、皆自身の持つ知識の取り扱いには十分注意して下さい。
  勿論ですが、何も知らない人間に知識を取り扱わせる時も教えるべき事は教えるように。
  こんな事が続くようでは、また"粛清"をせざるをえなくなりますよ?」

  東条の援護を受け、辻が止めの一言を刺す。



  その後、各国の情報部は日本企業(特に航空機メーカーの)スタッフと接触して、
それとなく何らかの知識を得ようとしては、大抵の場合失敗した挙句
「日本人ガード固すぎだろorz」と嘆く事になるのだった・・・



                        〜  終  〜

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2012年01月03日 00:28