344 :フィンランドスキー(コブラも好き):2011/06/12(日) 23:24:24
ちょっと時機を逸しましたがフィンランドスキーの一人として一式戦闘機のネタを・・・




それはとある夢幻会の会合での出来事。

さて、今日の会合もお開きになろうという頃、近衛公爵がさらりと発した言葉に
伏見宮や辻といった面々があっさりと賛意を示した。
「ではフィンランドに一式戦闘機をレンドリースするということで」
「「「意義なし」」」
「意義な・・・って、チョッと待ってください!」
嶋田は総理大臣の激務からくる疲れで危うく流してしまいそうだった提案に待ったをかけた。
「ふむ、レンドリースの件は以前にでておったろう。」
「そうですよ嶋田さん予算の方も問題ありません。」
「議会の方もワシが抑えるから君に負担はかけんよ。」
「「「ウム、ウム」」」
夢幻会の重鎮ともいえる面子が、揃いも揃って畳み込むような賛意を述べる。
まるで事後承諾の見本ともいうべき会合の流れであった。
「・・・!!!(ちょっ!何考えてるキサマ等ぁっ)」
嶋田は自身の血圧がレッドゾーンに飛び込んだのを自覚した。


~ それは数ヶ月前の会合でのこと ~

「フィンランドに戦闘機を?」
「はい、北欧に影響力を残す意味では良い手段かと・・・」
嶋田は手元に書類に目を落とした。
そこには一式戦闘機が30機ほどピックアップされていた。
「(フィンランドに手を貸すのは良いとしても、さすがに飛燕はな・・・)」
嶋田が何か言う前に、やはりというか辻が待ったをかけた。
「しかし、なにも一式を譲らなくてもいいでしょう。中古の九六式あたりで十分なのでは?」
「いえ、九六式は現場からの要請が未だに強くて、なかなか・・・」
実際、九六式は前線のパイロットにとっては最も頼りになる機体であった。
たしかに改修を重ねた六四型でも、カタログスペックでこそ飛燕、烈風(隼)に劣ってはいるが
対地対空と戦場を選ばない使い勝手のよさと、長年の品質管理からくる信頼性の高さは
やはり前線では軽視できないことであったのだ。
また日本軍機の急激な進化も、現場が九六式を手放したがらない原因でもあった。
加藤や坂井といったエース級のパイロットなら、飛燕であろうと近日中にロールアウトする
烈風改であろうと乗りこなすであろうが、さすがに一般レベルのパイロットに同じ事を期待
することは酷であったのだ。事実、鬱日本では新型機のパイロット確保に、かなりの労力を
割かねばならなかった。
「なるほど、飛燕と九六式では特性が違いすぎるからな。現場も苦労されてますか。」
そう言って何気に陸軍の杉山の方を見やると、彼の口元にも苦笑が浮かんでいた。
「この一式は例の実験機の余剰分です。特に兵站上で帝国に支障はないかと」
「例の実験機?あぁ、あの新型風防の量産機ですか」(>>設定スレ296参照)
飛燕は開発当初から、史実のP-51を基本に開発を進められていた機体なのだが、そのまま史実の
P-51で終ってしまっては帝国技術陣の名折れとばかりに、F-16の様なほとんど窓枠のない
近代的な涙滴風防を装備しようとしたのが件の実験機である。
もちろん無茶な開発に伴う悲喜劇(すったもんだ)と対米戦争により宙に浮いた存在となっていたのだ。
「それでも高価な機体であることには変わりありません。値段の張る装備は外してもらわないと。」
それでも食い下がる辻に嶋田も賛意を示す。
「辻さんの言うとおりだ。20mmや無線機、他には照準機も最新型だったな。他には・・・」
「了解しました、できるだけコストを抑えるように念を押しておきます。」
「えぇ、お願いします。これでフィンランドが恩を感じてくれれば良い取引です。」
嶋田はそういって辻の方に話を振るが、彼は一度頷いただけでそれ以上は口を挟んでこなかった。
この日の会合はこれでお開きとなっていた。

345 :フィンランドスキー(コブラも好き):2011/06/12(日) 23:25:38
~ 総理の回想終わり ~

「何を企んでいるんですか近衛さん」
そう、嶋田にはこの案件に賛意を示している面子が何より不安だった。
「いや、すまなかった。君の負担を鑑みてのことだったのだ。」
そんなセリフを淡々と述べる近衛の表情が、例によって録でもないことを企んでいる時の顔であることは
不本意ながら付き合いの長い嶋田には一目瞭然であった。
それに気付いて賛成する連中を見渡すと、あわてて視線を外すまだ良識あるものや、そのままAAの様な
イイ笑顔を貼り付けたものなど、やはり何か裏であると判断せざるを得ない状況だった。
レッドゾーンに飛び込んだ脳細胞を冷却するため、温くなったお茶を無理矢理のどに流し込み
肝心のフィンランドに送る一式戦闘機の仕様に関する書類に目を落とす。
「・・・何かほとんど変わってないように見受けられますが?」
「いや、水メタノール噴射装置の設置に存外手間取りまして。
 武装に関しましても12.7mmは現行機の保守用以外には既に生産しておりませんし
 一式の場合、下手に弄るとバランスが崩れる恐れが・・・」
まるで当初から準備されていたような流暢な回答であったが、一式戦闘機の開発に携わった嶋田には
確かに納得のいく報告でもあった。最も水メタノール噴射装置については、劣悪な環境下での運用も
考慮に入れて、機体上でのスペースの確保と共用で採用できる装置の開発は済んでいた。
「それにドイツがフィンランドに接近しようとしているという報告がある。」
伏見宮が苦々しい口調で述べる(少々ワザとらしかったが・・・)。
「フィンランドに?アメリカ分割のこの時期にですか。」
嶋田の疑問を近衛が引き取った。
「ソ連への牽制かもしれないが・・・伍長殿の思いのままというのも面白くないな。
 未確認だが、すでにBf109が提供されたという情報もあがっている。」
ここに倉崎・三菱の技術者から意見が上がった。
「政治屋メッサーシュミット如きに遅れを取るわけにはいきません!
 ここは最高のレシプロ機である飛燕を提供することで、日本軍機の優位性を
 フィンランドという第三者の手で証明できます。」
さらに近衛がとどめと最後の意見を述べる。
「それに最近の国民感情が外国に対して排他的になりすぎているのも問題だ。
 日本から出たこともないような田舎政治家がこれを煽っているのは、いつかの無様な光景のようだよ。
 何としても早めに是正しなくてはならない・・・」
一国を預かる嶋田としては、今後の欧州・北欧との外交も考えると、フィンランドとの関係は維持して
おきたい所であった。提供する機体も、既に烈風改や疾風が待っている日本軍には特に問題ないだろう。
議会の方も、フィンランドに対する友好的な国民感情を考えれば抑えられるはずだ。
真剣に考え込む嶋田であったが、ここで辻が一言も口を開かなかったことに気付きさえすれば
後年の悲劇は回避できたかもしれない。

果して、フィンランドへの一式戦闘機の提供は決定された。
フィンランドでの運用にあたり、低オクタン価のガソリンを使用することを考慮して
水メタノール噴射装置が取り付けられたが、それ以外は国内仕様の機体と同等であり
間違いなく1943年時点で欧州最強の機体に仕上がっていた。

346 :フィンランドスキー(コブラも好き):2011/06/12(日) 23:26:29
場所と時は少し変わって、とある料亭の一室。
近衛に伏見宮そして辻といった主要メンバー他怪しい面々という、自称良識的な一般人である嶋田をして
悪の枢軸ともいえる面々が一堂に会していた。
そのうちの一人が近衛達に静々と、とあるものを献上した。
「お代官様、こちらがフィンランドに送る山吹色のお菓子、もとい飛燕の教本でございます。」
「フッフッフッ・・・越後屋、お主もワルよのぅ」
「いえいえ、お代官様ほどでは。はっはっはっ」
なんてバカな寸劇を近衛がやってる隣で、伏見宮と辻はできたてのインクの香りもほのかに漂う、夢幻会謹製の
教本とやらを食い入るように眺めていた。
「すばらしいですね。この時代にこれ程の4色オフセット印刷を実現できるとは!」
普段は毒舌しか吐かない辻も、この日ばかりは絶賛の嵐だった。
「それだけではないぞ!中身もカラー写真と漫画を組み合わせた画期的なものになっておる。」
やはり、こういう方面の悪の首魁である伏見宮も鼻高々だ。
そんな彼らが賞賛する教本の肝心な中身であるが、日本軍の飛行士訓練教本とはまったく異なっていた。
そこには、ディフォルメされたサイドポニーな日本人の少女が、これまたディフォルメされたツインテールな
北欧系の少女に、機体の説明や質問・疑問に答えるという形での対話式漫画が描かれていたのである。
見る人が見なくても、それはどう見たって某管理局の破壊神コンビであった。

「これで日本人といえば撫子という一遍なイメージを払拭できますね。」
一人のメンバーが声を挙げると、次々に賛同する意見が述べられる。
「型月な連中ばっか優遇されてちゃたまらんからな。」
「ボンテージなファッションに対する偏見も薄まりますな。」
「フェ○トちゃんにニーソを・・・」
一つ間違えば、危ない性犯罪者の溜まり場である。
そんな犯罪者達の首魁な連中は、できたての同人sイヤ、教本を手にヒソヒソと語り合う。
「いや、今回は嶋田さんに入って頂かなくて正解でしたね。」
「イヤイヤ、総理に無駄な負担はかけられんよ。」
ニコニコと怪しい会話を交わす近衛と辻であったが
「 さっさと戦争など終らせて、コミケを再開したいものだ。」
伏見宮のしみじみとした呟きに、場の雰囲気はしんみり(?)としたものになる。
こうして夢幻会擁する鬱日本は終戦という目標に向けて歩み始めることになる。
その目的が個人的な嗜好に偏っていたとしても・・・

この時にフィンランドに送られた飛燕とパイロット教本は、現在共に中央フィンランド航空博物館に保存されている。
特に一体型涙滴風防を装備した飛燕は、現存機がここにしか存在せず、その機数がそもそも少ないことから国内外から
多くのファンが詰め掛けることになった。
ちなみに戦後、とある著名な日本人が本博物館を訪れた際に教本の展示ブースの前で卒倒するという事件が発生したのだが
何故か本件は秘匿とされ、とあるフィンランドの地方新聞のみが本件の事実を伝えるのみであった。

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最終更新:2012年02月05日 20:06