434 :ひゅうが:2016/07/31(日) 23:13:05

神崎島ネタSS――幕間「帝国と人種偏見のもたらす化学反応についての一例」


――某所にて


「新国王は日本人に手を差し伸べるつもりらしい」

「なんということだ。もはや統一された強力な中華が存在するというのに!」

「宥和政策は、時間稼ぎにしかならないぞ。」

「かといって、国民は先の大戦のトラウマから戦争に消極的だ。」

「おまけにあのナチどもも最近トーンダウンしているらしい。ラインラント進駐一周年を機に、国境兵力の近隣への通知と相互連絡体制を整備するといってきたそうだ。」

「あのワイン業者ががなりたてていたのと違ってやけにやわらかい対応だな。」

「そのかわりポーランド軍のドイツ国境への前進配置を静かに周知しつつある。
手を切りつつあった日本人のやり口をまねたらしい。」

「悪知恵が働く奴らだ。いちいち反論するようになってからペキンやシャンハイの現地新聞でも報道のトーンが変わってきたそうじゃないか。」

「それを狙っているのだろうよ。控えめに言って横暴を極めていたマンチュリアでは軍の大粛清が行われた影響か、日本人官吏から現地人官吏への段階的移行がほかならぬマンチュリア政府の手により発表された。日本人は歓迎の意向らしい。」

「現金な奴らめ!マンチュリアをマサダ砦のようにするのではなかったのか。」

「それもすべて、あのゾルゲや大新聞の扇動に関連付けたらしい。」

「そんなわけないだろうが。ほかならぬ、愚かな日本人の望んだことだろう。」

「だからこそだよ。連中は、インペリアル・パレスから発せられた怒りに恐れおののいたのだ。」

「衆愚政治から帝政へか。ローマ帝国の劣化版だな。劣等人種にふさわしい。」

「おいおいそう言うな。我らの理想のもとでは万民が平等。かのツァーリ時代、ルーシにポーランド人の最高幹部なんて存在しなかっただろう。」

「人種的にありえんよ。…だが、我々の理想に逆行しつつある日本人には懲罰を加えねばならんな。」

「中国人は、アジアの裏切り者日本人を殲滅できれば我々につくといっている。」

「例の国共合作か。長続きさせられるのか?」

「対日戦がはじまればな。ナチどもが肩入れしすぎぬうちに国民党には退場してもらうべきだ。幸い、今なら数も限られる。」

「ナチどもは相変わらず日本人を舐めきっているが、日本軍の戦闘力は本物だ。16個師団のドイツ式軍隊ごときで打ち破れるわけがなかろうに。」

「そしてその背後から、第二次五か年計画の奇跡を達成したソヴィエトとその眷属がチャイナを席巻する。腐敗した資本主義の世は終わり――」

「わが祖国も革命される。せいぜいナチどもは欧州で共倒れするといい。」

「だがそれには――」

「順調に激突の道をたどりつつあった日本の針路を強引に転換したあの島が邪魔だ。」

「目下の問題は、ジャップのエンペラーと極めて近しい地位にあるアドミラル・カンザキという軍国主義者だ。」

「だが、彼のガードは堅い。」

「いや、だが――彼の妻の一人が、接近しつつある大英帝国において拉致され、言葉にできない行為を強いられて殺害されたとしたら?」

「これは傑作だ!日本政府が接近しつつあるわが大英帝国において殺害?
反感を持つあの軍国主義者と帝国政府の内部不和も煽れる。かの海軍力が潰しあえばなおよろしい。」

「さんざん大英帝国に世話を焼かせながらも独自路線をとろうとする裏切り行為がいけないのだよ。」

「だが…動物とヤる趣味の持ち主はいるまい?」

「労働者どもにいくらでもいるさ。」

「それもそうか。それでモスクワには?」

「言ってはいないよ。スペイン金塊の処遇について中立国監視委員会で責められているからね。」

「余計なことをしやがって…」

「おかげで前線は奇妙な停戦状態だ。バスク地方への爆撃計画も延期されたらしい。」

「まったくもって腹立たしい!」

「しかしながら、この働きが認められれば、我らはモスクワからの指令で動く操り人形でなく、将来の世界ソヴィエトの偉大な一員として来るべき未来に凱旋できるだろう。」

「まったく…あの島からわざわざ代表団が長居をしなければ不可能だったが、存外ウブなのだな。」




――また某所にて

「ええ。その通りです。共産主義に人種偏見は不要。あいつらはそれをはき違えています。
…はい。ですが日本人に警告は必要。はい。はい。ではそのように。
光栄です。直接指令をいただける栄誉に属するとは。失礼します――同志ベリヤ。」

435 :ひゅうが:2016/07/31(日) 23:16:23
【あとがき】――書いててかなりアレでした。優位主義ってこわい(戒め)。

446 :ひゅうが:2016/07/31(日) 23:29:21
ヒント――最後の電話をしていた男は…本来ならスペイン内戦の取材のために現地にいたはずでした。

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最終更新:2023年11月15日 20:45