175 :earth:2011/11/18(金) 21:05:37

 『猫神やおよろず』との『提督たちの憂鬱』とのクロスネタSSです。
 色々と突っ込みどころはあるでしょうけど、スルーでお願いします(爆)。
 猫神はアニメにもなった漫画なんですけど、知っている人いるかな(汗)。


 西暦200X年12月某日、古美術店八百万堂の居間には相変わらず神々が駄弁っていた。
 貧乏神こと財物部一級査察官である『しゃも』(外見は幼女)と、八百万堂に社を構える猫神の『繭』はコタツに
足を突っ込んで経済ニュースを流すTVを見ていた。

「全く、この程度で景気が悪いなんてナイーブすぎるの」

 しゃもの言葉に繭はすかさず突っ込む。

「貧乏神のいう台詞じゃないと」
「しゃもさんというの、このお馬鹿猫」

 しゃもの突っ込みで繭は即座に沈黙する。

「この国の官僚達や財界は手強いのよ。他国の官僚や企業なんて赤子みたいに感じられるくらい」

 そういうと『しゃも』は70年ほど前に相対した某大蔵官僚を思い出す。
 西暦1930年代の末、日本帝国の経済的繁栄を守るために帝都に張り巡らされている結界の要の前で、彼女は一人の官僚と相対していた。

「全く、帝国が特別に編成した防衛隊を突破するとは、さすがは一級査察官といったところでしょうか」

 高級そうなスーツをすき無く着こなした眼鏡を掛けた男の発する『気』に、神であるはずのしゃもは一瞬だが押される。

「そこをどくの。この国のいびつすぎる発展を止めないと途方もないゆり戻しがくるのよ」

 しかし男は平然とした顔で答える。

「どきません。これからが我が国の正念場なのですから。それを邪魔するのであれば、何者であれ、神であっても……ご退場して頂きます」

 男、大蔵省を仕切る魔王『辻政信』はそういうと懐から多数の札を取り出す。

「はるか昔、楽園の巫女や妖怪の賢者に鍛えられた術、お見せしましょう」

 そして両者はぶつかった。その結末は信じられないことにしゃもの敗北で終った。 
 だが貧乏神の最後の意地で、辻が守っていた結界に打撃を与える。

176 :earth:2011/11/18(金) 21:06:23

「困ったことを……」

 少し焦った顔をする辻。片や、しゃもは辻の表情を見て満足げだった。 

「人の子に簡単に負けてやるわけにはいかないのよ」
「確かに帝国の繁栄はいびつなのは判ります。ですが今はまだ帝国を成長させなければならないのですよ」
「その結果、さらに大きな破滅が待っているかも知れないのに?」
「バランスを気にしすぎて諸外国に負けるつもりはありませんよ。まぁ今回、結界が傷ついたのは痛いですね。どんなことが起きるか」

 そういうと辻は落ち着いた顔になる。

「保険を掛けておく必要があるかも知れませんね」

 しゃもは何気なく『保険』と呟いた男に寒気を覚える。
 何かが彼女に忠告するのだ。目の前の男は途轍もない、恐ろしいことを考えていると……。

「何を考えているかは知らないけど、馬鹿なことは……」

 辻はニヤリと笑う。その笑みはしゃもを戦慄させる。

「馬鹿なこと? 全ては貴方方、神々のせいではありませんか。それに私は『我々』の前に立ち塞がる者には……割と容赦が無いんですよ」

 そこまで思い出した後、しゃもは我に帰る。

(全く、あんな男が何人もいたら大変なことになっていたの)

 しゃもは自分の横で八百万の店主である柚子の料理を実に美味しそうに食べる繭をジト目でみる。

「全く、お子様は気楽で良いの」

 この国の繁栄に尽くした化物たちのことを思い出しつつ、彼女もまた柚子の料理に舌鼓を打つ。

「ま、今は次の仕事に備えて英気を養うとするの」

 何はともあれ、八百万堂は今日も平和だった。

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最終更新:2012年03月06日 23:51