765: 第三帝国 :2016/12/08(木) 23:35:57
艦これ×神崎島ネタSS――――閑話「海大カリー事件」
「いい匂いですね。
何か作っているのですか?比叡教官」
海軍大学校。
そこは選ばれたエリートのみが通うことができる海軍の大学だ。
陸軍のように大学卒業が中枢ポストに昇進するのに絶対必要。
といわけではないが、
それでも東大よりも遥かに高い倍率を潜り抜けて入った兵学校。
さらに選抜され大学に入った彼らの社会的名誉は非常に高い。
そして男社会である軍隊の教育機関。
ということもあって、女っ気がない堅苦しい場所であったのが・・・。
「はい、厨房をお借りしたので、
皆さんにカレーを振る舞おうと思いまして」
割烹着姿の艦娘こと「比叡」がジャガイモを剥きつつ答えた。
神崎島から派遣された教官である彼女は見た目こそ10代後半の美少女で、教えを乞う側からすれば俄かに信じがたいことに戦艦「比叡」の仮の姿である。
当初は自分たちよりも遥かに年下の少女が教授することに、神崎島に関する噂である程度のことは知っているとはいえ抵抗感を覚え、一部では挑発すらしていたが・・・。
「気合!入れて!行きます!」
と艦娘としての本気を出した比叡に、柔道や剣道で大の大人達がボコボコにされたことで挑発するようなことはなくなり、何よりも「辿りつつあった本来の歴史」を知った以上、教える側の見た目が少女とかはどうでもよくなった。
- とはいえ見た目が美少女ゆえに、今では軍令の長門、艦政の明石、海大の比叡の海軍3大マドンナと将兵からの人気は絶大であり、駆逐艦神風やその他艦娘に対してもファンクラブが結成されつつあった。
もっとも、同時にその美女を侍らせている神崎提督に対する男達の嫉妬は凄まじく、(金剛に対抗するために彼女らも指輪を見せつけるようになったこともあって)藁人形と五寸釘の売り上げは日々記録を更新している。
「それは楽しみです。
時間になったら皆で食べに来ます」
「楽しみにしてくださいね」
前に一度比叡のカレーを食べたことがある淵田少佐が期待の眼差しと共に敬礼し、その場を後にした。
色々言われる比叡の料理だが、実のところレシピ通りに作れば問題ないのだ。
足らない材料と味を補おうとする土壇場での創意工夫が苦手でそのせいでトンでもない代物ができてしまうのだ。
つまりキチンと事前の準備が整っていれば問題ないのだ。
材料と調味料がレシピ通りのものがあれば・・・。
「あれ?
材料が足りないなぁ・・・」
悲劇の始まりはカレーの材料を偶々切らしていたことであった。
766: 第三帝国 :2016/12/08(木) 23:36:44
「う~ん。
お姉さまからはレシピ以外の作り方を禁止されているけど、
きっと問題ありません!比叡だって日々頑張って料理の経験値を上げてきたのですから」
第2の悲劇は比叡が妙なやる気を見せて、かつて味が濃すぎて神崎提督と金剛をトイレへの徒競走を強要させた、「レシピから逸脱したオリジナルの調理」に比叡が手を付け始めた点だ。
「おお、比叡。久しいな」
「あ、磯風さん。
お久しぶりです」
第3の悲劇は同じメシマズの磯風が大学で講演するために訪問していたことだ。
「ほう、カレーか。
私も手伝おう。
見た所材料は足らぬようだがそこは工夫できるはずだ。
ふふ、この磯風が重ねて来た訓練の成果を披露する時が来たようだ」
そして磯風がメシマズの烙印を押され、長らく浜風から教えを受けて自信を取り戻し、例えメシマズの要因となる「レシピを逸脱した調理」でも何とかなるとやる気を見せたことだ。
「さっすがですね~!
ではお言葉に甘えて手伝ってください、磯風さん」
最後に比叡が磯風の助太刀に賛同したことで悲劇はもはや避けようのない物へと昇華された。
後に「海大カリー事件」と称される出来事の詳細は関係者の悉くが口を固く結んでいるため今日も把握されていない。
しかし、確かにいえることはこの時大学に在籍していた生徒、及び教官の悉くを腹痛で医務室に送り込んだのは残されたカルテから判明している。
そして以後比叡単独での料理禁止、及び材料、調味料の在庫確認を徹底するように、特に磯風とは2人だけにするなと態々赤字で明記された通達文章が今日に残されている。
おわり
772: 第三帝国 :2016/12/08(木) 23:48:38
以上です。
比叡の調理スキルは
「レシピ通り作れば問題ない、ただしそれから逸脱するとダメ」
と解釈しています。
後、本日が開戦の日なのでそれに合わせて人物を登場させました。
この時期、丁度海軍大学に在籍していたようなので。
では
最終更新:2023年11月23日 13:37