703: パトラッシュ :2015/06/20(土) 12:11:15

earth様作『嗚呼、我ら地球防衛軍』と某作品のクロスオーバーのネタSSの勝手な続編PART67

ラウラ・ボーデヴィッヒSIDE(6)

「あ、あいつはアリス・トリップ少佐のヘル・ハウンドじゃないか! アメリカの国家代表が加わってるのか?」
「間違いありません、あれはテス・ダービフィールド先輩の専用機ですわ。まさかあの方が女性至上主義者だったなんて……」
「そんな、ジェルヴェーズ・クーポー大尉が軍を脱走したなんて、僕にISのイロハを叩き込んでくれた人が……」
「ソフィア・マルメラードワ中尉、やはりあなたは裏切り者でしたか……父親に娼婦の真似を強要された過去のせいなのですか」

 知り合いの乗るISを発見して、全員が愕然としている。ドイツ軍のシュバルツェア・ツヴァイクが地球防衛軍ISの猛攻に撃墜寸前まで追い詰められている光景を、私も凝視するしかなかった。
「なぜ、なぜあなたが……」
 思わずマゼランパフェの空グラスを握りつぶしたが、血まみれの掌には何の痛みも感じない。そんな私の手をとった織斑教官が、ハンカチで包んでくれた。
「ラウラ、あの機体はローザのものか」
「は、はい、ローザ・フレーリヒ中佐の専用機に間違いありません。現ドイツ国家代表にしてシュヴァルツェ・ハーゼ元隊長が国を裏切り、テロリストの仲間になっているとは……」
「私も期待していた優秀なISパイロットだったが。いや、それよりも信じられないのは地球防衛軍のISだ。これだけの数を、しかも男が操縦できるコアを完成させていたとは」

 スクリーンから聞こえてくるのは、圧倒的な性能を誇る全身装甲型ISに搭乗した男たちが、容赦なく女性至上主義派のISを叩きのめしていく歓声だけだ。撃墜されたり戦えなくなったISは素早く捕獲され、透明なチューブに包まれて身動き取れなくさせられる。捕らえられても男への悪口雑言をわめき散らしていたフランス軍パイロットは、巨大な斧に殴られて意識を刈り取られた。あれが宇宙を戦場とする軍隊の白兵戦技か。唇を震わせる私の隣に、いつの間にか嫁が立っていた。
「千冬姉、やりすぎと思うかな」
「……いや、戦場において無知は罪だ。あいつらは自分たちの力を過信し、地球防衛軍を侮った当然の罰を受けた。今日は世界の女尊男卑の風潮が葬られた日とされるだろう……まさか一夏、最初から狙っていたのか?」
「まさか、一介の大尉でしかいない俺は命令に従うだけさ。この作戦を立案したのは親父だよ」
「地球連邦の大統領が……つまり、お前たちは束のつくった世界の転覆を最初から考えていたと?」
「この世界の女たちは、ISという巨大な力を束さんから安易に与えられて舞い上がってしまった。力や権利って奴は、当然のように受け入れては簡単に暴走してしまう。その暴走の結果である女性至上主義を何とかしなければ、まともな話し合いもできないとは言っていたよ。親父の考えが間違っているかな」
 嫁の言葉に何も反論できなかった。尊敬する先輩は愚かなテロ集団に加わり、男たちのISに叩きのめされて惨めに捕縛されていく現実を前にしては。やがて襲撃側のIS全機が捕らえられ、ヤマトの前甲板に集められると古代艦長が声をかけた。
「さて皆さん、ご案内します」

 前甲板にはフレーリヒ中佐をはじめよく知るISパイロットが、厳重に拘束されて転がっていた。彼女たちから待機状態のISを没収しているのは、全身装甲型を着込んだ角刈りの兵士たちではないか。本当に男の操縦するISに敗れたのが信じられないらしい中佐は、呆然とされるがままだ。指揮官らしい大柄のいかつい男が、こちらに気付いて手を振った。
「よう古代、こいつらは本当に軍人か? 戦闘技術や体術はなっちゃいないし、捕まってもわめいて暴れるばかりの駄々っ子だぜ」
「仕方ありませんよ、斎藤先輩。自分たちは無敗のエリートと信じて疑わず、ISの力に驕ってまともに戦闘訓練もしてなかったのでしょう」
「織斑の言う通りなら、哀れすぎて言葉もないな。え、素人のお嬢さん方よ」

※ここで出てきた各国ISパイロットの名前は、米英仏ロ独の映画や小説に登場した男に破滅させられた女や、逆に男を食い物にした女の名を借用しました。wiki掲載は自由です。

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最終更新:2017年08月27日 09:48