429: 新人艦長 :2017/11/21(火) 18:52:35
<ヴァハト・アム・ライン:賭けの行方>
「おい、聞いたか?最近、俺たちの中にドイツ兵が紛れ込んでるらしいぞ。」
「いったいどこからの噂だ?」
「俺も直接聞いたことじゃないが何でも英語が俺たち以上にできるクラウツが紛れ込んで道標を変えたり、士官を暗殺したり、橋を爆破してるらしいぞ」
「そうなのか?」
「ああだから怪しいやつ見つけたら憲兵に突き出さないとな」
 そんな噂が流れ始めたのはドイツ軍が突然大攻勢を開始した直後からだった。
 始めはなんでも米兵の格好をしたドイツ兵の死体が戦線後方で見つかったことから始まった。
 それから色々な所で色々な噂が立ち始めた。
 曰く
「ドイツ兵はマックを暗殺しようとしてる」
 曰く
「とある将軍に化けたフリッツが部隊を率いてる」
 曰く
「偽米兵の中にはドイツに転向した兵士がいる」
 曰く
「偽物と本物は全く区別がつかない」
 曰く
「偽物は綺麗な軍服を着てるからすぐ見分けがつく」
 等々、多くの噂が前線でも、後方でも立った。
 この噂は尾ひれがつきそのうち一人歩きし始め、ついには魔女狩りの様相を呈し始めた。
 きれいな軍服を着ていたり見慣れない装備をつけていた兵士が”偽米兵”と思われ憲兵に拘束されたり中には現場の兵士によって射殺されたりした。
 遂にはオマール・ブラッドレー大将がこの混乱を使いマックを暗殺しようとしているやこの作戦をパットンは事前に知っていたなどと言う噂が広まり始めた。
 普段ならただの噂に終わるのだが、悪いことにブラッドレーがこの作戦の数日前に副官にマックを殺したいと話していたことが分かると疑念は確信に変わり、ドイツ軍の反攻から4日後の12月20日、司令部でマッカーサーの暗殺未遂容疑で幕僚共々拘束される事態となった。
 この噂はすべてドイツ側に仕組まれたものだった。
 ドイツ側作戦名「グライフ」
 この作戦は大混乱に紛れて偽のコマンド部隊の死体を敵に回収させ混乱を引き起こしさらに偽の米兵による噂の流布、破壊工作などを行うものだった。
 結果、よりにもよって最も大事な時期に指揮官を拘束され、さらに兵士同士の不協和音を奏で始めることになった。
 後にこの作戦こそが米第1軍の最大の敗因となる。

430: 新人艦長 :2017/11/21(火) 18:53:08
 2日目、3日目の間にドイツ軍は第1段階の最終目標、ナミュール付近に進出、マース川を渡河し始めた。
 この間独軍は南部で側面を晒していたが南のパットンが抑えとしてメッツ方面に釘付けにされ、独断で部隊を北に送ろうとしたがその途中のインフラが破壊されていたり、物資集積所を破壊され補給不足という事態になっていた。現代でももしこのときパットンが北上すればドイツ軍を逆に包囲できたと言われる。
 ドイツ軍は大量に手に入れた捕虜をどんどん後方に送りつつ大量に放棄された物資で補給したりしながら西進した。
 この間元々いた米軍は碌な反撃をできず各地で降伏するか撃破されていった。


 4日目、マース川を渡河した独軍は北上を開始、ここで連合軍は騙されたことに気付く。連合軍は敗残兵や後方部隊、予備部隊で編成された部隊をアントワープ全面に展開しつつありここで時間稼ぎしつつ北の英軍と南の米軍で挟み撃ちにするつもりであった。
 だがここで独軍の目標がアントワープではなくマースリヒト=アーヘン周辺に展開中だった米第1軍と知り、およそ数万人の兵士が遊兵となり、さらに第1軍の後方部隊がほぼ壊滅した。
 同日、マッカーサー連合軍総司令官暗殺未遂容疑でオマール・ブラッドレー大将とその幕僚が拘束された。


 5日目、ドイツ軍を防ごうと第1軍と英軍がなけなしの戦力を集めて作った戦闘団(およそ8000名、戦車20両)がサン・トロン(シント・トロイデン)で独SS第1装甲師団”ライプシュタンダルテ・アドルフヒトラー”とSS第2装甲師団”ダス・ライヒ”と激しい市街戦を開始。
 丸2日2個師団を釘付けにするもパイパーSS中佐率いるパイパー戦闘団とパンツァーマイヤーことクルト・マイヤー少将率いるSS第12装甲師団ヒトラーユーゲントに迂回、包囲され脱出を図るも全滅する。


 6日目、第1軍は必死になって独軍を食い止めようとし、第3軍も南部より独軍を攻撃するが、連携が取れない上に制空権を喪失、さらにブラッドレーとその幕僚が拘束され指揮系統に混乱が発生、そのため独軍に有効な打撃を与えられなかった。
 ドイツ軍の先鋒はマースリヒトの隣町ハッセルトに進出、ここで第1軍の必死の抵抗に遭遇するも粉砕。ここに砲兵部隊は陣を構えマースリヒトへ砲撃を開始する。
 ホッジスの第1軍は撤退を検討し始めるも、指揮系統の混乱により承諾を得られず、包囲されつつあった。


 7日目、サン・トロンの連合軍は全滅し、さらに作戦の最終段階、ハインスベルクにいた第116装甲師団と第14、16野戦師団(L)(マーケットガーデン後に再編成と再訓練が行われ優秀な歩兵師団に再編された)が手薄な前線を突破した。
 ここにきて第1軍は独断で撤退を開始するも撤退の起点となるマースリヒトに独軍が侵入し始め、撤退してきた米軍と激しい市街戦を開始した。
 マッカーサーはやっとブラッドレーの拘束を解き、独軍を撃破するように指示するもすでにドイツ軍は包囲を完成しつつあり各地で強固な陣地を設営しつつあった。


 8日目、ついにマースリヒトが落ち第1軍は包囲された。
 それはクリスマスの朝のことであった。

431: 新人艦長 :2017/11/21(火) 18:55:58
いかがでしょうか?
なんかグライフが史実よりエグイ…

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最終更新:2017年11月25日 11:07