958: 第三帝国 :2018/01/15(月) 01:07:23
銀河連合日本×神崎島ネタSS――——――「合同信任状捧呈式Ⅳ」
松の間は宮殿内で唯一の板張りの部屋である。
分かりやすい装飾がなく、広々としているため豪華とは言い難い空間である。
が、壁面には若松文様浮織の裂地張りが施され、部屋を飾る装飾が少ないことが清潔感と落ち着いた空気を演出しており、同時に奥に鎮座する玉座が無言の威厳を主張している。
そう、この部屋こそが内閣総理大臣と最高裁判所長官の親任式。
新任の外国の特命全権大使の信任状捧呈式、勲章、文化勲章の親授式、などといった式典を取り扱う場であるため宮殿で最も格調高い場所と言ってもよい。
そして今日この日。
ティエルクマスカ連合と神崎島の2か国が共に信任状を今上天皇へ捧呈する。
前例のないやり方である上に方や星間国家、もう片方は二次元出身の国家と前代未聞だ。
知っていたとはいえ、この型破りな式典に部屋はいつも以上に緊張感と奇妙な高揚感が漂っており、ヴェルデオ大使とアイランズ大使、及びその随員に注目が集まっていた。
無論テレビ中継を通じて視聴している日本国民、そして世界の人々もその様子を固唾をのんで見守っており、警備本部のテレビから中継を見ている柏木、シエ、山本、セマル、それに艦娘達一同も加え今回警備に関わった全員もまたテレビに釘付けになっていた。
「サラトガさん、いいなぁ・・・」
シエと一緒に昆布茶をすすっている皐月が呟く。
信任状捧呈式の慣例で大使今上天皇の御前に参進して信任状を捧呈した後に大使と握手、会話をする。
その後さらに大使が率いていた随員もまた謁見と握手をする機会が設けられており、武官として赴任するサラトガは「初めて直接陛下と会った上に握手をした艦娘」という名誉と栄誉を頂くことになった。
「・・・べっつに、う、うらやましくないし!
大体俺は海で暴れるのが専門だから頭を使う武官だなんて肩がこるぜ!」
なんて言ってそっぽむく天龍。
分かりやすい(確信)
で、当然ながら・・・。
959: 第三帝国 :2018/01/15(月) 01:08:10
「あらあら、天龍ちゃん~。
強がっちゃってもバレバレよ。
天龍ちゃんが真っ先に武官を志望したの私知っているのよ~」
「た、龍田ぁ!?」
龍田の容赦ない暴露。
「ふふ、まあ、そうなるわね・・・日向風に言えば」
口元を抑える加賀。
「お約束やな!」
と龍驤。
「乙」「おつー!」
同じ言葉を口にする菊月と皐月。
そして、
「・・・・・・世界水準を軽く超えた武官」
ぼそりと初月がそんなセリフを口にした瞬間。
警備本部にいた全員の間に爆笑の嵐が誕生した。
「クククク、分カリ易イナオマエハ」
「・・・・・・・すんません、今ちょっと精神がヤバいのですけど、シエ姐さん」
にやりと笑みを浮かべるシエ。
態度で感情を表現するダストール人的にむしろ好ましい。
という意味で言っているのだが、天龍のライフ的には逆に止めを刺していた。
と、そんな寸劇をしていた最中。
テレビから新しい情報が入る。
『これより皇居正殿、松の間において、
ヤルバーン、ティエルクマスカ司令兼全権大使ヴェルデオ・バウルーサ・ヴェマさん。
及び、神崎島全権大使ウォルター・アイランズによる、信任状の捧呈が行われます・・・』
テレビ中継が緊張と興奮を混ぜつつもおごそかにアナウンスする。
「お、フェルだ。
・・・というか、すげー緊張しているな」
「ドレドレ・・・・プッ、
クハハハハハハハ!!!
アンナニ緊張シテイルフェルハ私モ初メテ・・・イテテ」
柏木が随員として参加しているフェルがガチガチに固まっているのを発見。
親友として長い付き合いがあるシエが再度腹を抱えて笑う。
が、罰が当たったのか途中で腹に受けた傷が痛み悶絶する。
等とわいわいやっている間に式典は粛々と進む。
式部官長の誘導によりヴェルデオとアイランズが並んで今上天皇の前に立つ。
方やティエルクマスカ流の礼をし、もう片方は深々とお辞儀をする。
今上天皇は、微笑を浮かべつつその礼を受ける。
そしてヴェルデオ、アイランズの順で今上陛下に信任状を捧呈する。
960: 第三帝国 :2018/01/15(月) 01:08:53
今上天皇は、それぞれ丁寧に信任状を受け取ると侍立大臣に渡す。
信任状捧呈式の慣例として必ず大臣が一人、侍立することになっており、これを侍立大臣と呼ぶ。
高貴な人間に付き従う役な上に外交に関わる式典であるため外務大臣が担当するように思うが、慣例として外務大臣以外でも可能で今回侍立大臣として総理大臣である二藤部新蔵が自らが担当している事実にその意気込みが伺える・・・。
2枚の信任状が二藤部総理が持つ書状盆に入れられ、確認して一礼して下がった瞬間。
日本国がティエルクマスカ連合と神崎島の大使を正式に認めた。
一連の式典を中継から見ていた国民はこの歴史的瞬間に歓喜。
居間で、会社の食堂で、ラーメン屋で、街の巨大液晶モニター前で、ありとあらゆる場所で万歳の声と共に盛大な拍手や歓声の声が上がった。
「よっしゃー!」
警備本部でも龍驤の叫び声を契機に様々な形で喜びを表現する。
そして式典では大使と会話、握手する場面に移り、
「これからも、良き仲になれることを切に願っています」
「ハイ、陛下」
「手のひらを上下に合わせるティエルクマスカ式の握手」で今上天皇とヴェルデオが握手を交わす。
「再会を祝福すると共に、良き未来を築くことを切に願っています」
「もちろんであります」
アイランズとは地球式の握手を交わす。
続けてティ連合、神崎島双方が連れてきた随員と随時謁見、握手をする。
その際、今上天皇は1人1人進んで丁寧に呼びかけ、会話を交わす。
思わぬことに気が動転したり、感激したりと色んな反応をする。
「け、結婚前提のお付き合いなのデスヨ!」
で、気が動転した筆頭格のフェルは柏木との仲を質問され、陛下を前にして飾る気もなく大声で本音を暴露する。
「はい、よろこんで。
その時は艦娘一同大いに歓迎いたします」
機会があれば神崎島へ訪問を希望する旨を伝えられ、感激するサラトガ。
普通、随員に対してもここまで深く会話などを交わさない。
しかし、それをしたのはティ連合と神崎島に対して今上天皇も非常に感心を持っていた、ということだ。
なんにせよ合同信任状捧呈式は大成功で終わりを迎えた。
おわり
961: 第三帝国 :2018/01/15(月) 01:12:21
以上です
楽しんでいただけたら幸いです。
今回信任状捧呈式については以下のを参考にしました。
参考文献
ww.mofa.go.jp/mofaj/press/release/17/rls_1213e.html
ttp://www.taro.org/2017/09/信任状捧呈式.php
では
最終更新:2018年01月17日 09:47