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支援2_名無し三流さま_アメリカ風邪に関するエトセトラ
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382.
名無し三流
2011/07/12(火) 19:21:15
北米大西洋岸における、いわゆる"アメリカ風邪"の流行。
この病気の由来は、『かつての米合衆国が秘密裏に研究開発していた細菌兵器が、
大西洋大津波によって研究所の外に流出、爆発的に増殖した』というのが定説となっている。
しかし、それも関係資料がその津波によって消失しているために証拠となるものは無く、
あくまで「状況証拠に基づいた仮説」の域を出ない。その為、この病気はこれ以外にも多種多様な仮説の存在を許した。
いや、許さざるをえなかったと言うべきか。人は原因不明の事態に遭遇した時、
何らかの「それらしい理由」を作り出す事によって心の平安を求める生き物である。
まして、肺ペスト系列などという一部の人間にとってはトラウマ級の病気の流行、
その「理由」を求める人間は生半可な数ではなかったからだ。
有名な仮説としては前述のものがあるが、その仮説はまた新たな謎を呼ぶ事になった。
それは、「なぜ合衆国は細菌兵器を開発しようとしたのか?」という事である。
細菌兵器とは生物兵器の一種であり、
「自分で増える」「自分で拡散する」という特徴を持つ(自分、という言い方には語弊があるかもしれないが)、
費用対効果に優れた兵器として知られている。しかしながら、「拡散の方向」「気象等の外部条件」などの
不確定要素が多すぎるため、通常兵器に予算を注ぐ方が有効であるとする学者も当時は多かった。
また、細菌兵器というのは、慎重に扱わなければ「飼い犬に手を噛まれる」ことになる―――――
今風に言えば、「バイオハザード」が発生する危険を常に孕んでいる。
であるから、世界の国の中でそのような物を開発しようとする国は実に少数派であった。
ドイツ第三帝国でも一部の施設で生物兵器の研究は行われていたが、
国家の体力を独ソ戦に奪われていた事と、仇敵である日英の通常戦力の進化への対応が優先された事、
また生物兵器よりも確実性、汎用性の高い毒ガスなどの化学兵器という選択肢もあった事から、
生物兵器の研究は早々に打ち切られている。
しかしその点、アメリカは第一次大戦、第二次大戦と本格的に参戦する事は無く、
国としての基礎体力も十分すぎる程あり、優秀な研究機関も揃っていたため、
生物兵器を開発する事のできる国としては合格していた。
383.
名無し三流
2011/07/12(火) 19:21:54
だが、ここで解せないのはやはりアメリカが生物兵器の開発を始めた理由である。
事そのものは秘密裏に運べばいいとは言え、当時の隣国メキシコに対しては通常兵器のみでも圧倒的優勢を保ち、
また仮想敵国日本についても、合衆国首脳部はメキシコよりは梃子摺る程度にしか考えていなかった。
つまり、生物兵器など使わなくても十分勝てるのに、どうして生物兵器を作ろうとしたのか?という事だ。
……『アメリカ風邪=米国の生物兵器』説を唱える者達は、
ここに苦慮した上で、以下のような仮設を新たに考え出したのである。
提督たちの憂鬱 支援SS 〜アメリカ風邪に関するエトセトラ〜
彼らが考えた仮設。それは、『アメリカ風邪は"生物兵器"としてではなく、
自国の医薬品の"宣伝の一助"として作り出されたのではないか』というものだ。
多少突拍子も無い感じがするが、驚いた事にこの説は現代において一定数の支持を得ている。
以下に彼らの述べる理屈を挙げていこう。
アメリカはまず、資本主義の国である。資本主義であるという事は、
資本…言ってしまえば"カネ"が国家国民にとって極めて大きな存在感を持っているという事だ。
そしてアメリカは、自由主義の国である。自由主義であるという事は、
国民の"経済活動の自由"、すなわち"カネ儲けの自由"を認めているという事でもある。
カネが物を言う国で、人々がカネを儲ける自由を手に入れたら、彼らはこぞってカネを求めるだろう。
それは生活のためかもしれないし、所有欲、名誉欲を満たすためかもしれないが、カネを求める心に変わりは無い。
そして国民とは民主主義国家の根幹を成す存在。国民がカネを求めるという事は、国がカネを求めるという事である。
アメリカ合衆国がその求めに対して出した答えが、ニューディール政策であり、
またアジアへの積極的な進出政策であったというのは疑う者のいない所である。
しかし、それだけでアメリカ国民のカネ儲けへのニーズを賄い切れるとは誰も断言できない。
何しろ人の欲望には限りが無いのだから。
384.
名無し三流
2011/07/12(火) 19:23:11
ここで最初に述べた『自国の医薬品の"宣伝の一助"』へと話が繋がる。
考えてもみてほしい。もし自分の国で、これまで見た事も無い疫病が流行し出したら?
そしてそれが極めて危険性の高い病気だったとしたら?人々は恐慌状態に陥り、政府は何とかその安定を図ろうとするだろう。
そこに別な国が、「自分達の国でその病気の特効薬が完成したので買いませんか」と申し出て来たら………
その特効薬が挙げる利益は、尋常ではないものとなるであろう。
かつてアメリカで人々が自動車という"新たな発明"に飛びついたように、
"新たな特効薬"に人々が飛びつくのは想像に難くない。
しかし自然というのは気まぐれなもの。そう簡単に新種の病気を発生させてくれる訳でもないし、
させてくれたとしてもそれに対する特効薬が常に作れるかどうかは分からない。
だが、"新種の病気"を"自分で作れる"としたら?
"新種の病気の特効薬"も"自分で作れる"としたら?
実にハイリスクハイリターンな、そしてとんでもない話である。自分で"新種の病気"を作って、
それを他国にバラ撒いて、その"特効薬"を売りさばく。武器商人が可愛く思えてしまいそうなレベルだ。
アメリカ合衆国は、それを狙っていたのではないか?
アメリカは、世界の中でも研究力ではトップクラスだった。
世界にペストの恐怖が蘇った時、アメリカが"救世主"として"降臨"しても、おそらくそれを拒む者はいまい。
むしろ嬉々として、あるいは渋々とそれを受け入れる、受け入れざるを得なくなる筈だ……
以上が、『アメリカ風邪=医薬品宣伝用素材』説の論拠となっている理屈である。
まことにいかにもな話であり、しかしながら多少突っ込み所のある話でもある。例えば、
>しかし、それだけでアメリカ国民のカネ儲けへのニーズを賄い切れるとは誰も断言できない。
>何しろ人の欲望には限りが無いのだから。
↑の部分にやや強引な感がある事
>国民がカネを求めるという事は、国がカネを求めるという事である。
↑なぜ国民がカネを求めれば国がカネを求めなくてはいけないのか、がはっきりしていない事
その手の話に関しての素人が主によく疑問に思うのはこの2つの点だ。
勿論他にも突っ込み所はあるし、この説を擁護するような補足なども色々と入ってくるのだが、
唯一確かなのは、『"アメリカ風邪の真相"は津浪と共に闇の中に葬られた』という事である。
第一、冒頭でも述べたように『アメリカ風邪=米が開発』説ですら今の所は"仮説"でしかないのだ。
日本のある歴史学者は、「この問題に決着を付けようと思ったら、それこそタイムマシンでも発明するしか無い」と発言し、
他の多くの学者もこれとほぼ同様の見解を示している。そしてこの真相を大真面目に追求するのは一部の物好きと、
センセーショナルな記事を求める大衆向け雑誌だけとなるのであった……
〜 f i n 〜
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最終更新:2011年12月30日 20:33
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