408. 攻龍 ◆N7DVv.HogQ 2011/08/07(日) 17:51:08
フィンランドスキーさんのお許しが出ましたので、
主に発動機で疑問に感じたところを自己解釈でいじってみました。

フィンランドスキーさんの原作があったので、文章にするのがとても助かりました。
最後になりますが、許可を下さいましてありがとうございます。
…「こんなの許可した覚えなど無い!」とお怒りになりましたら、削除スレにお願いします。

409. 攻龍 ◆N7DVv.HogQ 2011/08/07(日) 17:52:07
>>389-396
で無事?スウェーデン国産戦闘機としてデビューした『FFVS J22−2』だったのだが…
試験運用部隊でのテストが無事終了し、その後の実用部隊での機種転換訓練を行っていた頃から少々問題が発生するようになっていった。
最初は機種転換中に付きものの不慣れゆえのトラブルと楽観視されていたのだったが、やがて同機関係者を震撼させる問題へと発展していった…。

最初発生したのはエンジンの異常振動だった。
プラグを確認すると真っ黒に煤け、調整不良を疑わせたのだったが、問題はそれだけではすまかった。
愚図るエンジンに悩まされつつも飛行訓練を行っていた部隊から次から次に"発動機不調"の苦情が上がってきたのだった。
症状は…"シリンダー温度異常"や"全開運転時の異常振動"、"全力負荷時の異常燃焼音""飛行性能がテスト数値を大きく割る"…挙句の果てには"シリンダー溶解"や"エンジン焼付"まで発生した。
ところがこれらの問題は低負荷状態ではあまり発生せず、高負荷時のみ重症化していた。
これは、日本製の金星を搭載した機体でも…いや、日本製ほど激しかった。
スウェーデン製だけならまだしも日本製でも発生したこと、問題を起こした機体の一部はテスト時代からの機体であり、きちんと稼働していた過去があるうえ当時の整備に問題がなかったことも判明していたことから、原因は自然と特定されていった。

そう、使用する油脂類…具体的にはガソリンが問題となっていた。
スウェーデンで使用される航空燃料は92オクタンと聞いていたのだが、日本側での成分鑑定の結果…85オクタンを割り込み、最悪80オクタン相当すら使用されていたのだった。
元々金星は日本での使用前提だったので設計オクタン価は100〜100/130グレードと"超高性能"燃料を使用するエンジンだった。
それをスウェーデンの国情に合わせて92オクタン仕様に"デチューン"していたのだったが、実用部隊では設計オクタン価92どころか遙かに下回る"粗悪品"が使用されていたことが今回の問題の原因だった。
そのため低負荷時には問題が発生せず、全開運転で異常が相次いだのだった。

だがコレはスウェーデン側の虚偽報告ではなかった。
当初は国内のガソリン生産プラントの能力拡大の上で使用するはずだったのだが、大戦後長引いた欧州不況、さらには国内不況も追い打ちとなり、計画の進捗すら困難となっていたのだった。
結果、試験部隊には何とか供給されていた"高性能"燃料が、実用部隊では供給量不足から割増用に薄められたりした挙句"粗悪品"が使用されていたのだった…。

この結果、金星エンジンは本来の性能どころか信頼性すら失う騒ぎとなりかけていたのだった。
改めて現状に合わせた改良を行おうにも、流石にここまで低品質の燃料だととても必要な性能&信頼性を満たすことはできないので、関係者一同を大いに慌てさせたのだった。
なぜなら、既に貴重な生産ラインを金星用に用意したスウェーデンにとって、さらなる新規投資は困難…というよりほぼ不可能であったのだ。
その金星が使いものにならない…などという話になったら、空軍の国防政策が空中分解するおそれさえあったのだからスウェーデン側の悩みがいかに深刻であったかがお分かりいただけるかと。

一方の日本側もまた完全予定外の結果から青ざめていた。
このままでは(たとえ原因があちらにあったとしても)日本製品の信頼性に悪影響が出かねないだけでなく、貴重な欧州での影響力すら失いかねない問題であった…。
とはいえまさか軍秘扱いの"栄"を輸出するわけにはいかず(仮に出来たとしてもスウェーデン側の生産能力があったかは甚だ疑問)、どうしようかと悩んでいたのだったが…起死回生の一打は意外なところからもたらされた。

三菱のエンジン開発部門が倉崎製"栄"の保険として自主開発していた"火星"(金星のロングストローク版)がそれであった。
拡大型のため排気量に余裕があり、低品質燃料対策を行っても出力低下は抑えられる上、かなりの部品共有が可能なので現在整備した設備はほぼそのまま使用できると良い事ずくめ。
ただ本命の"栄"が成功したことから保険扱いの"火星"は輸送機等の発動機として生産されることとなり、戦闘機用としての開発が行われなかった結果、そのまま搭載しても高空性能などで大きく見劣りするという問題を抱えていたのだった。
結果、基本設計の見直しは日本で行い、以後のセッティングはスウェーデン側で行うように話が組み上げられた。
410. 攻龍 ◆N7DVv.HogQ 2011/08/07(日) 17:53:01
さて、山田君が本国に呼び戻されてしまい、その後釜として急遽長期出張を余儀なくされた鈴木君。
山田君と打ち合わせをした際、「これで今度の文化祭に参加できる…」と不穏なセリフを聞いてジト汗を流しつつも「今回は無理か…」と同じ方向の発想をしていたのは流石MMJ、というべきか。
ともあれ遠路はるばる"火星"の設計図を持ってスウェーデンを訪れたのだったが…到着一番に聞かれたのが山田君の事だったのにはすごく驚かされたものだったらしい。

日本側の問題解決策として提示された火星換装案だが、やはりすんなりとは受け入れてはもらえなかった。
戦闘機用としての運用実績がないため、それでなくても暗雲立ち込めてきかけた戦闘機開発計画への悪影響を懸念したものだった。
とはいえ元々の原因がスウェーデン側にあり、他に有効な策がなかったこと。また性能回復が必須だったことや必要な投資が最低限で済みそうなこと…などから最終的には同案で落ち着くこととなった。

元々火星が金星のロングストローク版(…というか史実金星と異なり、憂鬱版金星は火星のショートストローク版)だけあって発動機の素体製造はスウェーデンでも何とかなった。
ただやはり問題はライセンス生産で製造法を学んだ(というよりぶっちゃけコピーした)2段2速過給器と水エタノール噴射装置とのマッチングであり、コレばかりは地道なトライ&エラーを繰り広げていかなければならなかった。
この結果、当初の生産開始時期からずれ込むこと半年…最悪、再度のソ連進行に間に合わなくなることさえ覚悟しかけた時期になってようやく"スウェーデン製火星"は実用化の目処がたち、発動機無しで虚しく並んでいた"首なしTunnan"へと無事に取り付けられることとなった。

実はこの頃には航空燃料製造プラントも(日本からのテコ入れもあり)能力強化が図られ、以前よりは航空隊に供給される燃料の品質は改善されていたので、金星のままでも良かったのではないか…との批判も聞かれてはいたものの、それらは火星搭載型Tunnan『FFVS J22-3』の飛行結果がすべて拭き払ってしまった。
92オクタンの燃料を使用した結果、火星は離昇出力1900馬力ながら公称2速(高度7000m)で1800馬力と馬力低下すること無く回り、日本製金星すら大きく引き離す高馬力を得たのだった。
85オクタンの燃料を使用した場合でも、離昇出力1600馬力、公称2速で1350馬力と列強でも有数の高出力を叩き出し、当初懸念されていた燃料品質問題を完全に一掃することに成功したのだった。
また日本に輸出後"栄"に換装された機体と比べても、"J22-3"は絶対出力で劣るものの発動機が軽量なことから運動性能で勝り、同等の燃料と操縦者を使用した場合は"栄"搭載機でも"J22-3"相手には空戦での勝利は覚束ない始末であった。

火星搭載型Tunnan『FFVS J22-3』
機体諸元はJ22-2型に準ずる(自重のみ300kg増加)
最高速度:645km/6500m    上昇時間:高度8000mまで9分30秒  (いずれも戦備重量時)
<補足説明>
・発動機の大型化(直径1220mm、720kg→1340mm、900kg)にともないカウリングの変更およびバランスの再修正を行う。


最後に、文化祭出場を諦めた鈴木君だが、その憂さを晴らすべく現地で地道な布教…いや、活動の結果"文化祭"開催に漕ぎ着けるまでになり、スウェーデンでの"萌の神父"扱いされるまでになったとか…。

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最終更新:2011年12月31日 00:42