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支援2_ひゅうがさま_東北航空小史3〜萱場「かつをどり」飛翔〜
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548.
ひゅうが
2011/11/08(火) 14:42:37
※いろいろとお叱りをいただきましたので、日本のメーカーで一本書きました。
東北航空小史3〜萱場「かつをどり」飛翔〜
――1942年10月 青森県 三沢航空試験場
「テストをはじめます。」
担官がそう宣言した。
社主であり、技術者でもある萱場資朗はそれにうなづく。
彼らがいる、コンクリート舗装の滑走路の先には、ずんぐりしたデルタ無尾翼機が鎮座していた。
とはいっても、欧州でリピッシュ博士が研究しているようなロケット機ではない。
機首には空気取り入れ口があり、ショックコーンが突き出ている。
プロペラはない。
それは、この頃は日本とドイツでしか実用化がなされていない「噴流式推進機」、ジェットエンジンをこの機体が搭載している証だった。
「頼むぞ。鶴野さん。」
萱場の言葉に、キャノピーを開けたままの与圧服姿のテストパイロットは両手の親指を立てることで答えた。
機体の無線機に咽頭マイクからの線をつないでいない今、与圧服の中にいる相手からの情報伝達手段はこれしかない。
いずれは技術の発達で透明部分の開け閉めも容易になるだろう。
が、今は後世の宇宙飛行士のようにやるしかない。
この機体に耐えられるように開発中の「対G飛行服」はまだ洗練されきっていないのだ。
テストパイロットをつとめる海軍の鶴野少佐が乗り込むと、滑走路で待機している白衣の担当官や陸海軍の技術士官たちは機体の方から離れ始めた。
空気圧搾機車がエンジンに繋いだ管へコンプレッサーで圧縮された空気を送り込みはじめる。
「お前なら、やれる。『かつをどり』。」
萱場は念じた。
「だから、舞いあがれ。あの大空へ。」
――それは、美しいというよりどこか「可愛い」印象のある機体だった。
航空機用の衝撃緩衝脚(油圧によって着陸の際の衝撃を軽減する)において頭角を現しつつあった萱場製作所は、昭和初期から航空機開発にも着手していた。
シコルスキー式と後に呼ばれるヘリコプターやオートジャイロ開発などにおいても名を知られつつあった萱場は、その理想とする飛行機のためにグライダーや模型による試験を繰り返した。
そして、彼は「ラムジェットエンジン搭載の高速戦闘機」の開発を思い立つ。
ビール缶のような胴体内部に、じょうごのような形で空気を圧縮しそこへ燃料を注ぎ込み、点火し推進力を得るラムジェットエンジンを搭載し、高速域でも運動性が高い三角定規のようなデルタ翼と翼端の垂直尾翼というシンプルな構造だった。
ラムジェットエンジンを始動できる空気の流量が得られる速度域までは、ロケットブースターで加速する予定だった。
この構想は、「かつをどり計画」と呼ばれていた。
史実では、この構想は見向きもされなかったが、この世界では違った。
1940年、第2次大戦の情勢緊迫化により海軍航空本部と陸軍航空本部は、のちに
「疾風」と呼ばれるジェット戦闘機の開発を軌道に乗せていた。
が、高速を追求したジェット戦闘機を開発するには様々な困難が立ちはだかっており、軍はもしもの時のためのピンチヒッター機を求めていた。
萱場の「かつをどり」なら、元からラムジェットエンジンの搭載を予定しているためにエンジンの載せ換えも簡単で済む。
そういったわけで、萱場飛行機は軍からの補助金とエンジンの提供を受けてこの機体を完成させることができていた。
もっとも、彼らはただ搭載しただけではなかった。
軸流式ターボジェットエンジン「ネ‐330」の空気圧縮機の前段に圧縮機を一段追加し、さらにエンジン本体の外側に空気の流れを導くダクトを追加したのだ。
そして、エンジンの排気部で合流した空気の流れはそのまま排気されはしない。
酸素を追加されたほどよく温まった空気にはもう一度燃料が噴射され、さらに推力を増大させられるのだ。
アフターバーナー。再燃焼装置、リヒートとも呼ばれる機構だった。
さらには、得意の油圧装置を用いて中枢のエンジンへ空気を導くダクトを閉鎖。一定の速度に達したならアフターバーナーだけでの飛行もできる。
最終的には音速の突破も考慮されていた。
――夢幻会が見たのなら「それ何てSR71のエンジンだよ。」と突っ込みたくなるエンジンを載せ、「かつをどり」は離陸していった。
549.
ひゅうが
2011/11/08(火) 14:47:24
【あとがき】――首都圏は三菱や倉崎などの大会社が工場を構え、テストをできる場所が狭くなりつつありますので中小の企業は中部や東北地方へ工場を構えつつある、という考えで一本。
かつをどり計画については実在しますが、軍に無視されていました。ラムジェットエンジンのために開発が継続されていても苦労が伴ったと予想されています。
ですが憂鬱世界には軸流式ターボジェットが都合のいいことに40年代初頭に存在しています。
ジェット前提で設計された機体としては日本でもっとも早いこの機体に載せてみない手はないかなと。
また、ダクト直径が大きいため、ターボファンとアフターバーナーの相の子のような機構をラムジェットへのオマージュとして搭載してみました。
油圧機構は実用機ではオミットされるでしょうが(笑)
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最終更新:2012年08月03日 09:00
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