595 :名無しさん:2012/02/23(木) 09:42:53
『ラインハルトと一緒?』その1
前皇帝となったジッキンゲン大公が街頭のTVに映し出されていた。
この後、前皇帝は大日本帝国から派遣されてきた大使、その随員の内帝国へと帰還する艦隊と共に大日本帝国へと二度と銀河帝国には戻らぬ旅に出る。
大日本帝国と共に、という点に関しては自由惑星同盟側の強い悩みがあった。
結論だけ言えば、自由惑星同盟政府は自国の軍を信用できなかったのだ。
もう少し詳しく言えば、ただの一人も前とはいえ銀河帝国の皇帝に対して砲撃する奴などいない、と確信を持てなかったとも言える。
これが大日本帝国艦隊なら良かった。
なぜなら、彼らとは戦争をした事がない。
つまり、彼らとの戦いで戦死した者はいないから、一部の馬鹿にさえ気をつければ良かったのだ。
ところが、今回は長年戦火を交え続けてきた銀河帝国の皇帝である。
そして、一発でも砲火が放たれれば……とんでもない事になる。
銀河帝国は怒って攻めてくるであろうし、大日本帝国もこんな事で戦火が再開したとあっては、銀河帝国に理があると敵に回られでもしたらえらい事になる。
かくして、自由惑星同盟は大日本帝国に頭を下げ、銀河帝国は銀河帝国でもし「銀河帝国の皇帝が叛徒に殺された」となったらと考えると大変だ、と了承し、大日本帝国もそれぐらいならば、と了承した、という訳だった。
もっとも、大変だったのは同盟だけではない。銀河帝国もであった。
当初、大公家の化粧領としての領地はごく小さいものである予定だった。
だが、ある官僚がリヒテンラーデ侯爵に書類を届けた際、軽く言った言葉から全ては始まった。
『もし、未来の大公殿下に浪費家が出たら大変ですね。そうなったらあちらの宮廷につぎの当たった服で出る事になりかねませんし』
当人は疲れているように見えるリヒテンラーデ侯への軽いジョークのつもりだったのだろう。
だが、笑えなかった。
そう、当初は名誉の代わりに領地は押さえると考えていたのだが、もし、金を制限しすぎたらどうなるか?
大公家は仮にも大日本帝国における銀河帝国の代表なのである。そんな当人がみすぼらしい格好をする事になったら……銀河帝国自体が嘲笑を受ける事になる!
かくして騒動に騒動が巻き起こり、最終的に領地は伯爵家並の裕福な領地が割り当てられた。
加えて、送金前に監査が入り、不正が行われていないか確認された上で一年ごとに送金が為される事になったのである。大日本帝国側には一切の借金を断るよう頼んで……。
後は信頼出来る者をその時その時で大使と共に派遣すれば、最悪の事態は起きないだろう、という訳だ。
さて、そんな事に関わりのないラインハルトは悩む事の多いまま、一人何気なくぶらついていた。
前皇帝の孫、現皇帝の甥となってから昨今は影に日向に護衛がつく毎日だ。
今も、プロの連中が気付かれる事なくついているであろう事をラインハルトは疑っていなかった。
以前にデパートのトイレで手早く服を着替えて護衛をまいとと思っていたら、実は全然まけていなかった、という事があって以来、諦めたとも言う。
今日はキルヒアイスは傍にいない。
共にいる事の多い二人とて常に一緒にいる訳ではない。今日はキルヒアイスは両親と共に出かけているはずだ。
アンネローゼは前皇帝という名の祖父の下にいるだろう。まだ色々と面倒な手続きが残っているからだ。
幸い、ベーネミュンデ侯爵夫人がアンネローゼとラインハルトとフリードリヒ四世の関係を知ってからは親身に接してくれている。不自由はあるまい。
しかし……。
なまじ、今まで皇帝を敵と看做して突っ走ってきただけに、急に世界がひっくり返った事が未だに受け入れられきれていない。
そんな思いを抱いたまま、ラインハルトは公園のベンチに座り……。
「「ふう」」
と溜息をついた所で、すぐ傍から同じような溜息が聞こえてきた事に気付いて、そちらへと視線を向けた。
相手も同じだったのだろう、ベンチの両側に座った二人は期せずして顔を見合わせる事になった。
護衛が通したという事は危険な相手ではないのだろう、と判断したラインハルトの視線の先にいたのは……一人の黒髪の美少女であった。
【夜にでも、その2投稿できたらいいな……夜勤あけなのでこれから寝ます】
最終更新:2012年02月24日 22:17