591. ひゅうが 2011/11/18(金) 21:01:11
支援SS――東京五輪に・・・

――1936年某日  日本

裸電球の中、机を挟んだ男たちの息吹だけが響いている。

「これか・・・?」

「いや、これも・・・」

男たちは、何かをよりわけているようだった。

「だがそれは・・・」

「だったらこちらも・・・」

1時間ほどの後、雑多な服装をした男たちは一息つき、一座の長である初老の男に視線を送った。

「うん。これでいいだろう。」

安堵のため息が漏れた。

「ひこ○ゃんっぽいのとか日本列島を龍の形にしたのとか色々あるが、我々『東京五輪マスコットキャラ選定委員会』の答申としてはこれがベストであると信じる。」

男――元満鉄総裁、岸信介はニヤリと笑った。

「萌えも大事だが、我々ゆるキャラファンの力も忘れてもらってはこまるぞ!」



――ある日の夢幻会


岸信介がやってきたのは、都内(帝都復興とともに防空体制などの意味から都制が施行されている)のとある料亭。
夢幻会という秘密結社が定期的に行っている「会合」の席である。

本来夢幻会は最高意思決定機関である「会合」のほかに、多数の分科会が設けられている。
その中には文化的な事業を行う部門もあり、そこでは近衛公を筆頭にした男女が辣腕をふるっていた。


「マスコット・・・だと!?」

「そこは撫子たんで・・・」

「各々がた。撫子たんはあくまでも皇国そのもの。恐れ多くもこの八州を束ねられるお方に代わって国民に親しみを覚えてもらうためのものです。もちろん五輪と万博には登場していただきましょう。ですが――」

岸は言った。

「いずれ皆さま方の子孫の世代になり、あの盛大なオリンピックと万博を想起する際にマスコットキャラが必要と我々は考えました。」

「それが、この長野五輪のスノーレ○ツもどきやひこに○んもどきたちか・・・いや、マスコットはいいんだが乱立しすぎると・・・」

嶋田提督が冷や汗をかいているのを見てとった岸はたたみかけた。
彼がこの場では割と「萌え」に距離をおいていることを知っていた岸の絡め手だった。

「その通りです。この際、マスコットの選定基準から何から決めてしまおうかと。さしあたってこのマスコット選びからはじめては――」

「予算は出せませんよ。」

辻が口をはさんだ。

「分かっています。これは我々五輪マスコット選定委員会が夜なべして作ったもの。ボランティアです。」

辻が頷くのを見て、岸は深いため息をついた。最大の関門はクリアした。あとは――

「ここは秋田こまち嬢をだな・・・」

「いや、伊勢を通って聖火を渡すんだから伊勢の巫女をイメージした・・」

「ここは子供に愛されるような小さなキャラクターが必要だろう。」

「かといってモ○ゾーとかキ○コロみたいな某万能恐竜の相方とまぎらわしいのは・・・」

この、様々な「萌え」が混ざり合い、混沌とした状況で岸が愛する「スノー○ッツ」を採用させる大仕事が待っている。


――1940年に予定されていた東京五輪、札幌五輪、そして万博は大戦勃発により不発に終わる。
戦後ようやく開催された五輪と万博には、開催中止のポスターで涙を流していたマスコットキャラ達といつの間にか国家キャラとなった「撫子たん」が「ただいま!」と手をつないで笑った姿で登場。
平和の祭典を大いに盛り上げたという・・・
余談ながら、この会合でマスコットキャラ派にしてやられた「萌え」派は防災マスコットをめぐって岸たちと火花を散らすことになるがそれは別の話。
592. ひゅうが 2011/11/18(金) 21:02:50
【あとがき】――昭和の妖怪が何をやってるか気になったらいつの間にかできていました。
                この世界では高い金を払ってマスコットキャラをデザインすることはないでしょうw辻氏の高笑いが聞こえてきそうですw

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最終更新:2011年12月30日 23:46