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支援2_ひゅうがさま_世界が滅びぬその為に
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601.
ひゅうが
2011/11/19(土) 23:33:55
>>598-599
の番外編のようなもの。こんな機関もあるかなと思って。
提督たちの憂鬱支援SS――「世界が滅びぬその為に」
――1943年 大日本帝国 能登半島 能登島
「遠いところをようこそお越し下さいました。」
「は・・・はあ。お招きありがとうございます。」
「まだまだこのあたりは冷えますからね。さ、中へどうぞ!」
5階建ての大きなビルの入り口で、案内されてきた記者たちは面喰っていった。
彼らは、大本営広報室を通じて以前から申し入れていた取材のため、バスに便乗してここまでやってきたのだ。
異様に厳重な――97式中戦車1個大隊と配備されたばかりのヘリ部隊、それに近隣には高価な自走対空砲部隊や近接航空支援部隊、海上には阿賀野型巡洋艦をはじめとした艦隊がいた――警備と何重ものチェックを受けてきた記者たちを迎えたのは、白衣を着たにこやかな男だった。
胸には、最近軍や警察などで採用されている写真とバーコード付き身分証明証がある。
「あ、自己紹介がまだでしたね!私、理研からこちらへ出向しております、
帝国疾病予防監視機構(Imperial Japanese Agency of Disease Control and prevention) 総裁(Muster Chief)の石井四郎と申します!」
腰の低い男は、人好きのする表情でにこやかに笑った。
「こちらで微細な埃を落として下さい。この先は陰圧になっており、外に空気が漏れないように低圧に保たれています。」
最近知られるようになった放射性物質ありのマークとはちょっと違う中心に「病」の字のあるマークの扉を通りぬけ、防護服を着用した記者たちはぞろぞろとその中へ入った。
「ここは、われわれが生物危険レベル4と呼んでいる厳重管理無菌実験室です。」
「レベル4といいますと?」
朝日新聞の尾崎記者が聞いた。
「人体もしくは動物に非常に危険で、感染すれば簡単に人から人へ感染する病原体を扱うところです。それも確実な予防法がほとんどない。
代表的なものでは、天然痘、狂犬病など・・・それに・・・」
「アメリカ風邪、ペストですか。」
「その通りです。」
石井は真剣な表情で頷いた。
分厚いガラスで仕切られた実験室の向こうでは、記者たちのそれに数倍するような厳重な防護服をつけた面々が顕微鏡をのぞきこみ、あるいは巨大な機械を操作していた。
「これが漏れだした場合、施設を封鎖、もしも手が付けられない場合、周囲に展開する軍の部隊により『消毒』されることが確定しております。」
記者たちはぎょっとなった。
「人が生きているのに、ですか?」
「その通り。帝国や人類滅亡の危機を招来するわけにはいきませんので。つまり、我々はその覚悟で研究にあたっているのです。」
石井の言葉は、記者たちに届いたようだった。
――はじまりは、アメリカ風邪に対する対応法について国会で嶋田首相が詰問されたことだった。
その議員は粗さがしのつもり半分だったが、嶋田首相は答えた。
「わが帝国国内で、これら危険な病原体の研究と予防・治療薬の開発が進んでいる」と。
これを受けた新聞やテレビジョン各社が共同でその施設の情報提供を求めた。
現在帝国国内では自然科学への知識欲が高まっており、それらの取材には軍や政府も積極的に協力していた。ことに、昨年行われた相模湾の海底への潜水調査へのTVカメラの同行は日本放送協会の視聴率が実に40パーセントにも達したほどだ。
この要求に、石井が率いる日本版CDC(疾病対策予防センター)は夢幻会上層部に「取材」を受けるよう直談判した。
21世紀から過去へ転生した学者であった石井は、悪名高い731の長ではなく理研所属の研究者として頭角を現していたが、今後生じるであろう世界的な疾病に対抗する必要を強く感じていた。国民への啓蒙こそが衛生の第一歩と信じる石井の意図は、今のところ大成功といえただろう。
この取材記事はいくらかぼかされて公表され、それにともない開始されたテレビジョンの科学番組に石井は度々呼ばれ、保健衛生に対する国民の理解に大いに貢献したのだから。
そんな彼と夢幻会の支援のもと、能登島の研究所では、人類を病原体の脅威から守る「戦争」が今日も続いている――
602.
ひゅうが
2011/11/19(土) 23:35:26
【あとがき】――ふと、石井さんに「中の人」がいたらと思って。
アメリカ風邪と戦うには国民の理解と協力もいるのでこんなこともしてるかなと。
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最終更新:2011年12月30日 23:53
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