ここは、電気店である。
しかし、店内に足を踏み入れただけでは、ここが電気店だとすぐには認識出来ないだろう。
散乱した細かい電子部品、
液晶が割れた薄型TV、
靴跡の付いた扇風機、などなど。
嵐が過ぎ去ったよう、とまではいかないが、まったく、それにしても酷い有様だった。

その状況を作り上げたのは、ある一人の人物。
そしてその状況を作り上げた人物は現在、休憩中であった。


◆◇◆◇◆◇◆


時は、この殺し合いが開始された直後へ遡る。
少年はこの電気店のトイレで目を覚ました。
何故トイレなのか、判断する術もないが、少年はすぐに外に出た。
ここから逃げる。そう考えたためだ。

しかし、少年を待っていたのは暗闇。
ただ暗闇。
あえて形容するならば、
凶暴な猛獣でも居そうな、
全ての音が消えてしまうような、
立ち止まっていては呑み込まれそうな、
暗闇。

そして、追い討ちを掛けるように、少年の耳に微かな銃声が聞こえた。

「く……くそっっ!!」

少年は電気店へと踵を返した。


そして十分後、場所は再び、なぜかトイレの中。
といってもトイレしか電気が付かなかったので仕方がなかった。


「くっそおぉ!ふざけんなよ!あのクソ野郎!」


こんな所に呼び出された怒りからだろうか、少年からは汚い言葉が飛び出す。
否、彼を動かしている感情は『怒り』ではなく『混乱』だろう。
少年の顔には、何が起こるか分からないという恐怖がありありと見て取れた。
いつ襲われて死ぬかもわからない。
そんな状況で、少年はただ悪態をつくことしか出来なかった。


少年――名前を「長沢勇治」という――は、ただの学生である。
普段は家に引きこもってインターネットに興じている。
まあ、『殺人をしてみたい』という、ちょっと危険な思考を持っていたりするが。
それでも長沢勇治は、ただの学生であった。


◆◇◆◇◆◇◆


そして数分後、少年は「壊して」いた。
殴って、蹴って、叩きつけて、投げて。
あるいは自らの支給品であった、何の変哲も無い、金属バットを振り回して。
ひたすら「壊して」いるその様は、鬼気迫る物があった。
何を「壊し」ているのか、と言われれば、店内にあった電気機器などの商品だ。
――いや、もしかしたら少年は、「自分を壊して」いたのかもしれない。



「壊す」という行為は、快楽に繋がる場合がある。
お城の形のブロックや、高級な花瓶などを、「壊したい」と思ったことがある人は居るだろう。
戦隊ヒーローなどに毎回爆発シーンがあるのも、人々が「壊す」という行為を無意識に肯定しているからである。
他人の不幸は蜜の味というが、他人の不幸に直結するのが「壊す」ことなのである。
時間をかけて作られた物を「壊す」ことで、人々は一種の爽快感が得られる。


しかし、今の少年はそんなことまで考えていない。
気を紛らせるために物を「壊して」いるだけである。
「壊して」――
「壊して」――
「壊して」――
狂ったように、「壊して」いた。


◆◇◆◇◆◇◆


はぁ、はぁ、はぁ……
結構、「壊した」な。
でも、「壊し足りない」。
もっと沢山、「ブッ壊したい」。
どうせなら人間も、「壊して」みたい。
いや、人間は「壊す」じゃなくて――


【殺す】か。

はは、ははは――

そうだな。ここは殺人が『許される』場所だったな。
「壊そう」が、【殺そう】が、何をしても良いんだよな。

――はは、ははははははは!!


◆◇◆◇◆◇◆


そうしてさらに数十分後。
殺し合いが始まってから、既に二時間が経とうとしていた。
暗闇の中、少年がベンチに腰掛ける。
店内にあった自動販売機を壊した少年は、壊したついでに缶コーヒーを数本デイパックに入れてきた。
数瞬悩んでから、一本を取り出して開ける。
口に含んで、冷静な思考を取り戻そうとした。
無論、その程度で取り戻されるはずも無く。
本人は全く意識せず、しかし口元には笑みが浮かぶ。
今は一先ず休憩をするつもりだった。
と同時に、ある決意をしていた。

『殺し合いに乗る』と。


殴って「壊し」、蹴って「壊し」、最後には「ブッ壊す」。
それがこの【殺し合い】のルールだろう?
いやいや、これは【殺し合い】じゃなく――「壊し合い」だ――。



殺し合いに巻き込まれたことのストレスから、少年は「壊れて」いた。
そして「壊れて」いた少年の心は、さらに「壊れ始める」。



【F-7電気店/黎明】

【長沢勇治@シークレットゲーム-KILLER QUEEN-】
【装備:金属バット@ひぐらしのなく頃に】
【所持品:支給品一式、ランダム支給品×2、Keyコーヒー×4@Angel Beats!】
【状態:疲労(小)、精神異常】
【思考・行動】
1:皆ブッ壊す。
2:いったん休憩。
【備考】
※本編開始前からの参戦。
※精神異常は、何かきっかけがあれば戻る可能性もあり。


※電気店の店内は品物が散乱するなど酷い状況です。
※電気店の店内に置いてある自動販売機が壊されました。大量の飲み物の缶が辺りに散らばっています。



【金属バット@ひぐらしのなく頃に】
長沢勇治に支給。前原圭一が使用することで有名な金属バット。


【Keyコーヒー@Angel Beats!】
電気店に備え付けてあった自販機から、長沢勇治が奪った物。
死後の世界で人気がある、ブランド物のコーヒー。



025:散りゆく者への子守唄 時系列 039:fallen down
029:Island Days 投下順 031:歪曲スル正義
START 長沢勇治 057:中二病でも殺したい!

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最終更新:2013年07月15日 20:48