それはそれは、キレイな夜。
真っ赤な血で汚された夜とは思えない程それは静かな夜。

「な、なんで俺はこんな意味不明な展開に巻き込まれているんだか……」

金髪の少年がその静かな夜、キレイな月から照らされていた。
元は無人島なのかはわからないが海に囲まれている島。
その海面に移る月は波打つ水面でぶれている。

「キレイだなー……」

人が傷付け合い、地面が血で染まり、服を汚している者すら居るだろうとわかってはいるのだがその珍しい水面に心を奪われてしまった。

少年は座り海は呆然と眺める。
本来は寝ている時間ではあるのに今はまったく眠たくない。
人の死を目撃したショックや今のキレイな海。
その2つが少年の眠気を取っ払っていた。

「お前らは無事だよ……な……」

クラスメートの相沢祐一と水瀬名雪も俺と同じ状況に巻き込まれているのはわかっている。
だが俺1人ではこの広い島は探索仕切れないのだ。
だから無事を祈る事しか出来ない。

俺はまだ何も起きちゃいないから心配するな、少年は伝えたかった。

「フハハハハ。貴様なかなか見る目があるではないか小僧」
「え……?」

バシッ、バシッと強い衝撃が少年の体に響く。
6回程叩かれてようやく開放された少年は叩いた主を見た。

巨大な体で赤い髭がインパクトが大きかった。
朗々とした声は非常にインパクトが大きかった。

「貴様の名はなんだ小僧?」

大きな目で見られると睨まれている気さえする。
少年は逆らってはいけないと素直に名前を出す。

「お、俺の名前は北川潤です」
「…………」

と名乗ったのに何故か不機嫌な顔になっている。
北川は自分の何がいけなかったのか頭の整理をはじめた。

「うむ。お前アーチャーではないよな?金髪だし声がどことなく似ている気が……」
「ち、違いますよ」

北川は弓道などやった事もない。
それをすぐに否定した。

「まぁ、良いか」

大男はまた「フハハハハ」と笑いだす。
北川もそれに合わせ愛想笑いを浮かべる。

「聞けぃ、小僧」とせっかく名乗ったのにまた小僧呼ばわりをされてしまった。

「我が名は征服王イスカンダル!」
「い、イスカンダル!?」

北川はその有名過ぎる男の伝説を思い出した。
遥か古代のギリシャ地方の小国マケドニアで生を授かり、20歳という若い年齢で国王となり、ギリシャを僅か2年で統一し、ペルシア、エジプト、中央アジア、インドも統一。僅か13年で大帝国を作った漢の名である。

「だが便利上名簿ではライダーになっておるがね」

北川はそのライダーという名は名簿で確認済みだ。
北川が最初に思い浮かんだ仮面ライダーとはイメージも遠かった。

「小僧、あまり余を名前では呼ぶなよ。嫌っているわけじゃなく秘密なだけだぞ」
「え、……えっとわかりましたおっさん」

北川がおっさんと呼んでも特に怒られはしなかった。

「おっさんも大変だよな殺し合いなんて」
「いや、これは聖杯戦争だよ」
「戦争!?」
「いや、昔の戦争とは違う。今は英霊であるサーヴァントが戦う時代じゃ」

北川はもう着いて行けなかった。
聖杯、戦争、英霊、サーヴァント。
ふだんの自分なら一言も口にしない様な単語がズラズラ出てくる。

「名簿とやらにもあったであろう」

――セイバー
――アーチャー
――ランサー
――ライダー
――キャスター
――アサシン
――バーサーカー

「この7人のサーヴァントで戦う事が聖杯戦争だ。そして1人生き残った者が聖杯を手にし……」

―――願いを叶える事が出来るのだ!―――


北川はポカンと口が開いたままになる。
そんな戦いがあったなら普通は世の中にドーンと公表されるのではないか?

北川は嫌な予感のする聖杯戦争というものをどうしても否定したかった。

人間社会の裏側を見ている気分になった。

「そんなの有り得なくないおっさん?大体願いなんて叶うわけないじゃん」
「お前はあの主催者の言葉を聞かなかったのか?」
「主催者……」

――20億円を賞金に、その20億円を使えば願いを叶える。

ぼんやりではあるが確かそんな事を言っていた気がする。

――金が欲しければそのまま。
――金より願いを優先したければその多すぎる金を使う。

「じゃあ聖杯戦争って本当なのかよ……」

このキレイな島も、海も、街も、草も、木も、砂も、土も、水も、空気すらも……。
殺し合いの為だけに作られたみたいじゃないか?

キレイな自然も、作られた風景、『絵』としてしか北川の目に映らなくなった。

「多分小僧ら一般人はそれを見届ける為か……」
「為か……?」
「サーヴァントの魔力のエサの為か」

ライダーの手が北川に伸びる。
エサの為?
それってつまり……?

タベラレル?
タベラレル?
タベラレル?
タベラレル?
タベラレル?

「フハハハハ。余が小僧を食べるわけないじゃろ」

最初に叩かれた時以上の強い痛みがまた北川に走っていた。

「俺はおっさんに聞きたい事がある」
「さっき真名は答えたぞ小僧」
「いや、違くて……おっさんの聖杯の望みだよ」
「聞きたいか。それはな――」

―――――

それからは2人雑談を始めていた。
ライダーは最初だけ北川を怖がらせようとしただけで案外話してみると普通であった。
王とはなんたるなんとかと覚えてはいなかったが北川がグッと来る言葉がライダーの言葉にはあった。
そしてライダーの王から北川の交友関係の話に発展していた。

「その小僧の友達の小僧に会ってみたいのぅ」
「俺か相沢なのか区別してくれよ」
「フハハハハ」

結構長い時間話してしまっていただろうか?
それは計測をしていた者が居なかったのでわからない。

「会えるかもしれないっすよおっさん。ほら相沢の名前が名簿にもあるし」

あいうえお順だと普通に考えて相沢祐一が一番最初に来ると考えていたのにアーチャーが先であった。
学校の出席番号順だったら万年1番だろうとどうでも良いふざけた事を考えていた。

「アサシンの名前も早いよな……」

北川は聖杯戦争の事を聞いて改めて見る名簿は学校での名簿より高い価値がある様に感じる。

「ん……?これは一体どういう事なんだ?」
「どうした小僧?」

読んでいた名簿を引ったくるライダー。
サーヴァントである7人の名前しか確認していなかったからだ。

「何!?もしかして小僧、こやつの事か?」

ライダーが指を差す。
そこには5文字。
北川は言う様にこれはおかしい。
というか不可解だ。
なのに何故か当たり前の様に名前があった。

『真アサシン』

聖杯戦争に同じクラスのサーヴァントが居るはずはないのだ。
ではアサシンと真アサシン。
区別されしこの2つの名は……。

「――っ、避けろ小僧!?」

ライダーが北川を力いっぱい押した。

転がる北川。

「何すんだよおっさん!?」
「元居た場所を見ろ小僧」

恐る恐るライダーの言うとおりにする北川。

そこで見たのは深く突き刺さっている銀色のナイフであった。

「気配遮断か……。姿を現せ、アサシン!」
「アサシンって暗殺者じゃん!恐っ!」

アサシンには必ず備わっているクラススキル『気配遮断』。
完全に気配を断ち、感知はほぼ不可能になるアサシンの十八番のやっかいな能力。
だが、これにはある弱点がある。
それは攻撃の瞬間のみ効果が薄まってしまうのだ。

「やるな、何者かは知らぬが……」
「うわっ!?骸骨だ!」
「呼ばれたから出たわけだが」
「来なくていいわ!」

北川の怯える声が情けなく響く。

薄暗い風景。
なのにそこだけは白いそれだけがくっきりと見える。
骸骨の面。
それだけが浮いている様にも見えるがそうではなかった。
見えにくいが黒いローブもわずかながら目視出来る。

――真アサシンの登場であった。

「余は王であるライダーなり」
「私はアサシン。貴様……本当にライダーか?」
「貴様こそ本当にアサシンか!?」

それはお互いがお互いに言える事であった。
ライダーが知るアサシンは確かに髑髏の面を被り黒い格好だ。
因縁の相手だし間違うはずがない。だが髑髏の面の形状も違うし、ローブなど着ていなかった。

対して真アサシン。
自分はライダーと戦った、しかもこちらも因縁の相手である。
だが真アサシンの知るライダーは背が高く、細身で目隠しをする様なアイマスクをしていた。
いや、それ以前に女性であった。

ライダーは第五次聖杯戦争を、真アサシンは第四次聖杯戦争の事など知るはずはないのだ。

「私はこの聖杯戦争を勝ち抜き聖杯を手にする。貴様に邪魔はさせないライダー」
「貴様など臣下に値せんわ」

話合いの失敗。
それを意味するのはただ1つ――戦いである。

「1つだけ聞かせろアサシン」
「内容にもよるがな。答えてやろうライダー」

元々アサシンクラスはどのサーヴァントのステータスに劣る。
真アサシンはまともに相手をすれば確実にライダーに負ける事はわかっている。
その間に策を考えている。

「何故この名簿にはアサシンが2人居る」
「知るわけがなかろう」

元々第五次聖杯戦争のキャスターが禁じ手を使い召喚されたアサシンを核に自分が現れたのだ。
当然元のアサシンは死んでいるはずだ。

「だが私の方が名簿でいう真アサシンだろうな。思い当たりがある」
「ほぅ。普通ではあり得ぬ事だなそれは」

もっとも元々冬木の聖杯戦争はサーヴァントとして召喚されるアサシンクラスは全員がイスラム教の伝説の暗殺教団「山の翁」の長であるハサン・サッバーハしか召喚されない様になっている。

そう考えれば元々のアサシン『佐々木小次郎』の方が例外。
あちらも真アサシンと呼ばれてもおかしくはないのだが。

「話は済んだな」
「あぁ、いつでも来いよアサシン」

――今、ライダーと真アサシンの戦いが幕を上げる。

真アサシンが投げナイフを投擲する。
普段なら黒いダークを使うのだが没収され変わりなのか銀色の投げナイフがたくさん支給されていた。

それをなんなく避けるライダー。

「おっさん、これを使うんだ」

武器が持っていなかったライダーに北川が武器をと自分の支給品の中にあった日本刀を投げ渡した。

「これが剣ではなく日本刀か。風情があるのぅ。王には合わない気がするが」

なんて冗談混じりに言うライダーだが日本刀を両手で構える。

「かっ……!?」

『かっけぇ!』と叫びたかったが邪魔になると思い自重する。

「ふん」

ライダーの心臓を狙う3本の投げナイフ。
だが子供騙しと、なんなく日本刀ではたき落とす。

   ギルガメッシュ
流石はアーチャーに認められた漢の中の漢、イスカンダル王である。

このまま投げナイフを投げ続けてもいつぞやのセイバーとの戦いの時みたいに無くなってしまうだろう。
ナイフは有限。
しかも全て避けたりはたき落とされる。

真アサシンは悟る。
やはりアサシンクラスである自分が1対1の戦いには不向きであると。

では自分が向いている戦いにすれば良い。
自分にはまだ最強の宝具の右腕が残っている。

アサシンは殺し屋ではない。
アサシンの名は暗殺者。

1対1で不利なら1対2にしてしまえば良い。

―――――

「どうしたアサシン、貴様もうへばったか?」

おっさんは強すぎた。
アサシンなんて名前に怯えていたけど流石イスカンダル王。
同じサーヴァントを圧勝している。

「へ、減らず口はそれまでにしろライダー!」

同じ様にまた数本の投げナイフ。
さっきから攻撃がくらわないってのに何故ずっと同じ技しか使わないのか。

単に別の技が使えないのか?
――それとも……?

「投げ切ったが最後だぞアサシン」
「なら、それまでに決着を付ければ良いだけ」

投げられる投げナイフ。

「え……?」

頬、右足、左腕、俺の体から血が噴出していた。

「――貴様っ!」

おっさんの激しい叫びが響く。
あれ……?
おかしいな……。

立ってられないや……。

血を失ったから貧血かな……?

―――――

「卑怯だぞアサシン!」
「私は暗殺者だぞライダー。生前は私はこういった人間を殺すのに長けていた。その特技を生かしたに過ぎん」

間違ってはいない。
聖杯戦争はサーヴァントは殺せないとなると魔力供給となるマスターを殺す。

魔力を蓄える為に人を殺す。
イタズラに人を殺す。

「そう睨むなライダー。まだ私は小僧を殺してなどいない」

ライダーが北川の姿を見る。
確かに指が微かに動いている。

首をライダーを見つける様に探している。

「では小僧を生かすも殺すも貴様次第だライダー」

真アサシンの狙い通りに事は動いた。

「貴様の命と小僧の命。助けたいのはどちらだ……」
「……フハハハハ!」

狂った様に、面白おかしく笑うライダー。
当然決まっているとでも言いたげに。

―――――

「おっさん……」

自分の声を出すが弱々しい。
『俺はもう死んでも構わない』と叫びたかった。
だが今の一言呟くだけで脳に酸素が行き渡っていかないぐらいに視界がぐらぐらする。

おっさんは良い人だから、おっさんは楽しいから、おっさんは優しいからそう言いたいんだ。
なぁ、伝わってくれよ……。

「余は聖杯を求める王!答えなど既に決まっておるだろ」

おっさん格好良いよ。
それで良いんだ……。
生きてくれよ。
応援してるからさ。

―――――

「余は王!人と人の絆を大事にする。余を殺せ!」
「お前ほどの者なら聖杯だって手に入れられたであろうよ」

真アサシンがその宝具を隠す為に巻いていた長い長い包帯を剥がしにかかる。

「えげつのない手だな」

憐れみの王の呟きが北川と真アサシンの耳に聞こえた。

「最初の脱落のサーヴァントは貴様だライダー!」





 ザバーニーヤ
「妄想心音」





       ザバーニーヤ
ライダーの知る妄想現像とは発音だけが同じの似ても似つかない宝具であった。

自らの手の中に敵の心臓の模造品を作り、――心臓(それ)を潰す事で本物の心臓も破壊するのであった。

真アサシンにとって人間であれ、サーヴァントであれ、王であれ、心臓(命)の強さは同じであった。

「では約束通り、私は消える。助かったな小僧」

既に動けるぐらいまでには回復した北川の目はライダーばかりに向けられて、もはや真アサシンには向けられていなかった。

「次はキャスター辺りでも狙うか……」

真アサシンはナイフだけ素早く片付け、黒いローブが闇に混ざる様に消えた。


【H-8 堤防/黎明】

【真アサシン@Fate/stay night】
【装備:ベルフェゴールの投げナイフ30/30@家庭教師ヒットマンREBORN!】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×2】
【状態:疲労(小)】
【思考・行動】
1:この聖杯戦争で優勝し、願いを叶える。
2:次はキャスター辺りでも狙う。
【備考】
※桜ルートの真アサシンVSバーサーカー終了後からの参戦。
※ダークは全て没収されています。
※投げナイフは全て回収しました。
※妄想心音は半日に1回しか使えません。
※バトルロワイアルを聖杯戦争と勘違いしており、サーヴァントを全員殺すだけで良いと思っています。



「なんで自分の命を優先しなかったんだよ!?」

苦しそうな声を上げるライダーに責める様に声を上げる北川。
会って少ししか経っていないライダーの為に涙を流す北川。
北川に取ってはライダーは親友であり、仲間であり、憧れになっていた。

おっさんはまだ生きているよな!?

何回でも叫んでしまいたかった。

ただの一般人のこの少年の傷口が開いてぬるい赤が下に滴る。
関係ない、もはや痛みは感じない。

「こ……ぞう……」

真アサシンと戦う前からは信じられないほど弱々しい声。

「治るよな、おっさんなら」
「むり、……だ」

嘘でも良い。
『なおる』とたった3つの平仮名を言うだけで良いんだ。

「大体おっさんが死を選ぶなんて願いと矛盾しているじゃないか!」

―――――

『余は二度目の生を聖杯に託す』

―――――

そう言ったじゃないか!?
叶える事を捨てるな!

言いたい事がいっぱいあるのに上手く言葉にならない。

「王とは……誰よりもせん明に、生き、諸人ヲみせるコト葉を指す言葉……。だが人を守れぬ者……は、王ではない…………のだ」

そして体が段々体が透けていき……。

―――生きろ、潤……―――

小僧としか呼ばなかった少年の名を呼びながら――
――消えていった……。

「おっさぁーん!」

少年の声はライダーの体と共に天に昇っていくのであった。

「ちくしょう……ふざけんなよ……。こんなのってねぇよ……」

――散りゆく者への子守唄。



【ライダー@Fate/Zero  死亡】



【北川潤@Kanon】
【装備:日本刀@現実】
【所持品:支給品一式 ランダム支給品×2 ライダーのデイパック】
【状態:傷(多)、精神的大ダメージ】
【思考・行動】
1:おっさんの意思を受け継ぎ生きる。
2:みんなと脱出する。
【備考】
※共通ルートからの参戦。
※聖杯戦争の事についてたくさんの説明を受けました。
※ライダーのデイパックを回収しました。


【ベルフェゴールの投げナイフ@家庭教師ヒットマンREBORN!】
ベルフェゴールの手作りの投げナイフ(らしい)。ワイヤーなどを付けるとトリッキーな罠を張れるなど万能だが部下のフランからは「趣味が悪い」など酷評される。

【日本刀@現実】
その昔有名なサムライが使ったとされる刀。誰かまでは不明。



021:Little Busters! 時系列 030:こわしや勇治
024:神のみぞ知るセイカイ 投下順 026:Angel Meets!
START 北川潤 057:中二病でも殺したい!
START ライダー DEAD END
START 真アサシン 076:仮面は微笑む。

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最終更新:2012年12月28日 10:55