森の出口に現れたのは、短髪の男だった。
それも、何処かで見覚えのある。
確か、白の坊ちゃんの側近だったと思う。
なかなかに楽しそうな人物じゃないか。

「お兄さん、御機嫌よう」
「お前は闇也か?」
「その通り。お兄さんは白使でしょ?」
「だったらどうした?取り敢えず、その命もらい受ける!」

彼はダッとこちらに駆け出して、拳を突き出す。
私はそれが当たる瞬間に身をよじって避け、間合いを取る為に森の方へ飛んだ。
武器を出す様子はない。
武術を得意としてるのかな。
それはなんというか、好都合なんだけど。
右手に持っていた鉄扇を閉じてから、しまう。

「楽しませてくれるでしょ?」

妖艶に、にたり、と微笑んでから、私は彼に向かって走る。
それと同時にお兄さんもこちらに向かって動き出した。
繰り出される拳を流れるように避けて、背後に回る。
振り返る前に鉄扇を閃かせ、背中に一太刀浴びせた。
血が飛び散る。
それをもろともせずにお兄さんはこちらを振り向き、拳を突き上げて私の鳩尾に一発あてた。
息が一瞬詰まり、反動で数歩後ずさる。
それも短い間だけで、すぐに持ち直して相手を見据えた。
相手はこの一発で私は落ちると思っていたのか、驚いたような顔をしている。
まさか。私は痛くもかゆくもないんだよ。
ただ、内臓がダメージ喰らってる可能性もあるけれど。


そのまま暫く戦闘を続けていると、森の方から龍の兄さんが飛び出してきた。
加勢してくれるみたい。
2対1で戦闘を繰り広げていると、森の中から銃声が聞こえ、そのあと出口の方から人が数人出て来たのが目の端に写った。
そちらに目を向けると、白の坊ちゃんと側近の片割れが呆然とこちらを見て立っている。

なんやかんや遣り取りがあって、結局私対お兄さん、龍の兄さん対あの二人、と言う構図になった。
どちらとも動かず、様子を窺いあっている。
ふと、誰かに見られているような視線を感じたので気配を探ると、茂みの中に一人居るのが判った。
面倒だなぁ。
て言うか、圧倒的に人数が不利ってヤツでしょ?
早く終わらせなきゃね。
右手の鉄扇を開いて、戦闘態勢にはいる。
と、茂みの中から女の人が飛び出してきた。
手には刀が。
手加減はしてくれなさそうな雰囲気。
…しょうがない。

「二人とも、地獄見てきてね」

私は走り出した。
最終更新:2006年11月23日 00:36