611 :('A`)ロンドンより愛を込めて のようです:2011/11/26(土) 21:30:31.82 発信元:221.30.151.167

ロンドンに着いたドクオは、予め借り上げられていたイースト・エンドの安フラットに荷物をおろした。
翌日件の会社に行き、拙い英語で資料を次々に提出した。


('A`)「It's Nice to see you mr. jeff Rin、First of all・・・」

( `ハ´)「・・・・・」


担当者は華僑の男であったが、高圧的であり、英語が出来無いドクオを完全に見下していた。

しばらくするとドクオが無能であることを見抜き、しまいには通訳を付けて
シベリアに直接電話をかけて情報を確認する有様だった。



('A`::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::



こんな事を幾日も続けているうち、ドクオは疎外感と焦操感に苛まれた。
(仕事の不得手もあったが、金をけちって朝も昼も夜もファーストフードばかり
食していたのもいけなかった)。



612 :('A`)ロンドンより愛を込めて のようです :2011/11/26(土) 21:33:03.61 発信元:221.30.151.167

やがて最初の土曜がやってきた。
11時頃にベッドから這い出し、フラットから出てレンタカーを借り、そこらへんをぶらぶらした。
でも何もドクオの孤独な魂の慰めにならなかった。

適当なところで車を止め、


('A`)「欝だ・・・・・・・死のう」


そんなことをブツブツ言いながらイースト・エンドの陰鬱な町並みを彷徨った。
しかししばらくすると彼は色めき立った。


('A`)「あ・・・・・あれはっ・・・!



   同士スターリン!!!!」


それは店の看板であった。
でかでかと店の上に掲げられているスターリンの肖像。
まるで親しい知人に再開した時のように、ドクオは歓喜した。




613 :('A`)ロンドンより愛を込めて のようです :2011/11/26(土) 21:34:30.16 発信元:221.30.151.167


    , -.―――--.、
   ,イ,,i、リ,,リ,,ノノ,,;;;;;;;;ヽ
  .i;
'       "ミ;;;;:}
  |} ,,..、_、  , _,,,..、  |;;;:|
  |} ,_tュ,〈  ヒ''tュ_  i;;;;|
  |  ー' | ` -     ト'{
 .「|   イ_i _ >、     }〉}    Сталин
 `{| _.ノ;;/;;/,ゞ;ヽ、  .!-'
   |    ='"     |
    i゙ 、_  ゙,,,  ,, ' {
  丿\  ̄ ̄  _,,-"ヽ
''"~ヽ  \、_;;,..-" _ ,i`ー-
   ヽ、oヽ/ \  /o/  |}



Russian Restaurant Stalin
The man of steal

「ロシア料理 スターリン」

ただ残念なことに「鋼鉄の人」の意、「The man of steel」が「The man of steal」になっており、
「盗人野郎」なってしまっているのはいただけなかった。

ドクオはもちろんそんなこと気づかず、吸い込まれるように入っていった。


ーしかし、これが地雷であった。



614 :('A`)ロンドンより愛を込めて のようです :2011/11/26(土) 21:37:03.31 発信元:221.30.151.167

ロシア料理の店にロシア人コックがいない(こういうことはよくあるのだ)。

陽気なジャマイカ系のドレッド兄貴ひとりで店番とコックを兼ねていた。
客は誰もいなかった。


(’e’)「Oh,Hello hello hello」


などと言いながらメニューを渡してきた。
そして大げさな身振りで、


(’e’)「See the menu, Then order、OK?」


と言った。


('A`)「ボ・・・・ボルシチある?」


(’e’)「Okay」


ジャマイカ兄貴は厨房に行き、鍋に火をかけ、鼻歌交じりに戻ってきた。
そしてドクオの隣のテーブルの席にドッカと腰を降ろして話しかけた。



615 :('A`)ロンドンより愛を込めて のようです :2011/11/26(土) 21:39:09.50 発信元:221.30.151.167

(’e’)「I'm St.Jones, from Jamaica.Where are you from?」


('A`)「s....siberia in russia」


(’e’)「Oh!Nice place to see, But musta be frozen!

    I've been living in this fuckin London, for 10 years・・・」


それからジャマイカ兄貴は朗々としゃべりはじめた。ドクオはほとんど聞きとれなかったが、
所々で「fuckin」と言っているのだけはわかった。

やはりモララーが示したように、この言葉は万能であるらしい。


しばらくすると店内はなんだか焦げ臭いにおいが漂った。
鼻をひくひくいわせて、ジャマイカ兄貴は慌てて席をたち、


(’e’)「Oh!No,No,No, Noooooooooooooooo!!!」

(’e’)「FUCK!」


といいながら厨房に突進した。

派手な金属音と焼けた鍋に水を注ぐ音がし、奇っ怪な匂いが充満した。

616 :('A`)ロンドンより愛を込めて のようです :2011/11/26(土) 21:41:43.85 発信元:221.30.151.167

しばらくしてジャマイカ兄貴は、

(’e’)「Sorry,Man」

と言ってドクオの前にシチュー皿を置いた。

ロシア料理以前に、明らかに人の食べるものではなかった。
でも隣に座って微動だにせずこちらを向いているジャマイカ兄貴の気迫に押されて、
恐る恐る手を付けた。


ドクオの顔はみるみる青くなった。


('A`;)ウェーッ


たまらなくなってドクオは店から飛び出ると、レンタカーに乗り込んだ。

陰鬱なロンドンの街並みを呪いながらドクオは飛ばした。
気分が悪くなってめまいがした。
おまけに、安物のレンタカーは乗り心地最悪で下腹部に振動を強く与えた。


腹の虫が泣き出した。そして、こういう時に限って信号は赤ばかり。



617 :('A`)ロンドンより愛を込めて のようです :2011/11/26(土) 21:44:05.54 発信元:221.30.151.167

('A`;)「い、いかん・・・・っ 漏れる、漏れる!」


('A`;)「おっ!」


オアシスを発見した。道路の左手に、公衆便所があったのだ。
道端に車を寄せて停めて、ダッシュで駆け込む。


多少のフライングはあったが
そう、多少のフライングはあったのだが、



<<FAXを送信中です>> ← イメージ音です 脳内再生してください




 ・・・間に合った。




618 :('A`)ロンドンより愛を込めて のようです :2011/11/26(土) 21:46:03.94 発信元:221.30.151.167

('A`)「ふぅやれやれ・・・・・」


('A`)「ありゃ?」


見ると婦人警官が車のそばに立っている。
どうやら駐車違反を挙げられてしまった・・・・。



('A`::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::



つくづくついていない。

ζ(゚ー゚*ζ「No Parking here, sir. Would you show me your driver's lisence?」

('A`)「あ、あ、あ」


ζ(゚ー゚*ζ「huh?」

ドクオは財布から国際免許証を取り出そうとした。




619 :('A`)ロンドンより愛を込めて のようです :2011/11/26(土) 21:48:46.46 発信元:221.30.151.167

ところがどっこい、それはモララーがくれた例のカードであった。


つ【FUCK】  ζ(゚、゜*ζ  「・・・・・・・・・・・・」


パーン     _, ,_
_, ,_   ζ(゚、゜*ζ
('A`(☆ミ⊃


ドクオは地面にくずおれた。
バラバラっと財布の中身が散乱した。

その内の一つ、名刺を婦人警官は取り上げた。
婦人警官は驚いた顔をした。
そしてなんとロシア語で話しかけてきた。


ζ(゚o ゜*ζ「あなた・・・・・、シベリアの人なの?」


('A`)「え・・・・・?あんたロシア語わかるの?」



620 :('A`)ロンドンより愛を込めて のようです :2011/11/26(土) 21:50:26.05 発信元:221.30.151.167

ζ(゚o ゜*ζ「私のママ、ヴィップグラードの出身よ!」


('A`)「そ、そうなの・・・・か・・・」


(;A;)「ウッ・・・・・」

母国語を聞いて、いままで塞いでいた感情の弁が吹き飛んだ。

ドクオは声を上げて泣いた。
泣きに泣いて、しまいには婦人警官の足元にすがりついた。
物見高い通行人がジロジロと見つめる


ζ(゚、゜;ζ「ちょ、ちょっと、あなた・・・・」


ドクオは構わず泣き続けた。

****



621 :('A`)ロンドンより愛を込めて のようです :2011/11/26(土) 21:52:04.56 発信元:221.30.151.167

婦警の名前は リタ・デレノフスカヤと言った。
ニックネームでデレーニャと呼ばれていた。

ソーホー地区にあるしゃれたフラットの5階に彼女の部屋はあった。
夕方、ドクオは彼女の部屋に招かれた。
話を聞いたデレーニャが、同情したのである。彼女は駐禁も見逃してくれた。


ζ(゚ー゚*ζ「入って」


大きな紙袋をもちながらドアを開ける。
ドクオも両手に紙袋を持ちながら入る。


('A`)「お邪魔します」


紙袋をテーブルの上に置くと、部屋の全貌が明らかになった。



622 :('A`)ロンドンより愛を込めて のようです :2011/11/26(土) 21:54:23.42 発信元:221.30.151.167


('A`)「うわ、洒落た部屋だなあ」


黒のバックの上にガーベラの花柄がパターン化された壁紙。
モノクロームの唐草模様の天井。
カラフルな本がいっぱい詰まった赤い小さな書棚。
50年代を思わせるレトロなブラウン管TV。
寝心地が良さそうなベッド。
そして窓辺に溢れんばかりに飾られたドライフラワーの薔薇。


キッチンが一体型のワンルームだが、こざっぱりしていて手狭な印象は無かった。


なによりいい匂いがした。
俺や先生の部屋とは大違いだ、とドクオは思った。



623 :('A`)ロンドンより愛を込めて のようです :2011/11/26(土) 21:56:24.05 発信元:221.30.151.167

ζ(゚ー゚*ζ「何が食べたい?」


('A`)「えーと、アザラシ丼」


ζ(゚ー゚*ζ「そんな田舎料理作れないわよ

       ボルシチでいい?」


('A`)「そう、それでいいや。

   今日とんでもないシロモノを食わされた」


ζ(゚ー゚*ζ「あそこで食べるなんて正気の沙汰じゃないわ

       あのね、世界中どこいっても、まあまあはずれなしなのは中華料理。

       なぜかって?中国人はどこにでもいるからよ」


('A`)「中華料理は・・・しばらくいいや」

ドクオはあの華僑の高圧的な相手方を思い出した。




626 :('A`)ロンドンより愛を込めて のようです :2011/11/26(土) 22:02:34.57 発信元:221.30.151.167

ζ(゚ー゚*ζ「ところでさ、」


デレーニャは笑いをかみ殺しながら尋ねた、


ζ(゚ー゚*ζ「なんであんなカード見せたの?」


ドクオの中で忘れていた怒りが吹き出した。


('A`#)「ハメられたんだよ、アンニャロメ!ちくしょう・・・・

    言葉に困ったらこれを見せろって渡されたんだ!」


ζ(゚ー゚*ζ「・・・・今後の付き合い方考えたほうがよさそうね

       相手が悪かったら殺されてたわ」





627 :('A`)ロンドンより愛を込めて のようです :2011/11/26(土) 22:03:56.84 発信元:221.30.151.167

ドクオは真顔に戻って逆に聞いた、

('A`)「FUCKってどういう意味なの?」


ζ(゚、゜;ζ「ん、えーと、それは・・・・・・・

       使っていくうちにわかるわよ、あ、いや、あまり使わないほうがいいわね
       喧嘩を売るような言葉だから」


('A`)「でもさっきのあんちゃん別に挑発するでもなく、Bob marley is fuckin' greatとか言ってたぜ

   ねえ、どういう意味なの?」


ζ(゚、゜;ζ「ん・・・とにかく悪い言葉よ


       そ、そんなことより!」




628 :('A`)ロンドンより愛を込めて のようです :2011/11/26(土) 22:07:05.76 発信元:221.30.151.167

ζ(゚ー゚*ζ「ヲッカ飲む?ちょっとだけならあるけど・・・・」

ヲッカと聞いて、ドクオのロシア人の血が騒ぎたった。

(゜∀゜)「飲む!飲む!」


歓喜の雄叫びを上げた、

(゜∀゜)「ヒヤホーイ!ウラ--------ッ!!

    レーニン万歳!スターリン万歳!フルシチョフ万歳!
    ブルジネフ万歳!ゴルバチョフ万歳!エリツィン万歳!プーチン万歳!

    ジントニックなんかクソ食らえだ!
    俺はロシア人なんだ!!!!」

ζ(゚ー゚*ζ「そういう時に使うのよ

       fuck off all gin'n' tonics!って!」


(゜∀゜)「Yeaaaaaaah! fuck off ! fuck off!」


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最終更新:2011年12月07日 23:08