624 :アテンションゴーのようです[sage]:2011/07/31(日) 23:18:20.31 発信元:124.100.66.42

モララーは無事に高校へ入学した。
入学したはいいが、さしてしたいことも無ければすべきことも無かった。


(,, ・∀・)「こういうときは部活に入ればいいってばっちゃが言ってたな」

(,, ・∀・)「運動部に入って思いっきりしごかれておけってか…」


しかし、硬式野球のノリには付いていけそうにない。
サッカーは経験者との差が激しい。ラグビーは骨を折る。水泳はバタ足で充分だ。
テニスはガラじゃない。バスケは疲れる。体操は嫌だ、何か嫌だ。


625 :アテンションゴーのようです[sage]:2011/07/31(日) 23:18:39.17 発信元:124.100.66.42

( ゚д゚ )「そんなんだからしたいことも無ければしなきゃいけないことも無いんだろ」

(,, ・∀・)「まぁ、そういうことやね」


( ゚д゚ )「しかしまぁ、そんなお前でもひょっとしたらなんとかなりそうな部活があるぞ」

( ゚д゚ )「経験者はこの時点で少ない、体育会系のノリでも無ければ、骨を折る心配もない」

(,, ・∀・)「是非教えてもらいたいものだね」


( ゚д゚ )「ボート部行くぞ、ボート部」


ア テ ン シ ョ ン ゴ ー の よ う で す


626 :アテンションゴーのようです[sage]:2011/07/31(日) 23:19:18.91 発信元:124.100.66.42

3号校舎を出てすぐのところに、どこかの木片でもかき集めて作られたような、オンボロの物置小屋がある。
どうもボート部は、その小屋の一室を部室として使っているらしい。


(; ・∀・)「見るからに埃っぽそうな部室だな」

( ゚д゚ )「なんか部室っぽくていいじゃない、よく分からないけど」


木製の扉の横に「屯出喪高校漕艇部艇庫」といういかめしい看板が立てかけられてある。
ミルナは扉を2、3回ほどノックし、


( ゚д゚ )「失礼しまぁーす…」


と、押した。扉は耳を劈くようなギシギシ音を立ててゆっくりと開く。
中には3人ほどが狭い部室の中にひしめきあい、笑ったり携帯をいじったり何かを食べたり、それぞれが好き好きなことをしている。


( ´_ゝ`)「…いやぁ流石に今回の点検テストは点を取れる要素が無いだろ」

(´・ω・`)「うわっイイネが一つも付いてないしうわっうわっ」

ミ,,゚Д゚彡「食堂のメンチカツうめーなうめーよ食堂のメンチカツ」


627 :アテンションゴーのようです[sage]:2011/07/31(日) 23:20:07.45 発信元:124.100.66.42

(; ・∀・)「うわぁ…」

( ゚д゚ )「あのすいません、ボート部の」


( ´_ゝ`)「確かに俺は秀才だけどさ、今回のはぶっちゃけ無いわマジで」

(´・ω・`)「マイミク少なくないはずなのにイイネ付かないうわっうわっ」

ミ,,゚Д゚彡「メンチカツは凄いなマジで食堂のは特に凄いしうめーなうめーし凄いし」


(,, ・∀・)( ゚д゚ )「ボート部の体験入部をしに来た者なんですが」


( ´_ゝ`)(´・ω・`)ミ,,゚Д゚彡「!?」


( ´_ゝ`)「体験入部だと」

(´・ω・`)「こんなどマイナーな部活に」

ミ,,゚Д゚彡「食堂のメンチカツが売り切れた時よりもありえない」


628 :アテンションゴーのようです[sage]:2011/07/31(日) 23:20:53.94 発信元:124.100.66.42

すると、一番奥にいたフーンがおもむろに立ち上がり、馬鹿馬鹿しいほど丁寧にお辞儀をした。
そして、次のような言葉をやはり馬鹿馬鹿しいほど丁寧に話し始めた。


( ´_ゝ`)「…えー、ようこそボート部へ。部長のフーンです。心から歓迎します。
      ボートは水面の上を颯爽と駆け抜ける、自然の美しさをおもう存分体験できる素晴らしいスポーツです。
      君達のボートライフを精一杯バックアップしていこうと思うんで、どうぞよろしく。」

(´・ω・`)「よかった部員が増えるぞ」

ミ,,゚Д゚彡「メンチカツがたまたま揚げたてだったときと同じくらい嬉しいことやね」


(; ・∀・)( ゚д゚ )「…」

(,, ・∀・)「歓迎されてるのかね」

( ゚д゚ )「メンチカツ程度には」



629 :アテンションゴーのようです[sage]:2011/07/31(日) 23:21:15.12 発信元:124.100.66.42

( ´_ゝ`)「んじゃぁ、期待の新星2人には早速これをやってもらおうか」


フーンは2人を、倉庫の奥にある薄暗い小部屋に連れて行った。
大きい台座のようなものが4台ほど、無造作に並べてある。トレーニングマシンのようなものなのか。


(,, ・∀・)「これは…」

( ´_ゝ`)「エルゴメーターね。
      おおざっぱに言うと、ボートのシミュレーションマシンみたいなものかな」


エルゴメーターは、巨大扇風機のようなものにモニターとローラー付きのシートが設置されているという、至って奇妙な形をしていた。
モニターの下あたりには、紐付きのハンドルのようなものが巻き取ってしまわれており、さらに下を見ると足をくくりつけるような器具が付けられている。


( ´_ゝ`)「距離や時間を好きなように指定して、ハンドルをグイーッって引っ張って、シートと一緒に体を移動させる。
      移動させ終わったら体を元に戻す。それだけね。君達には今から300mTTをやってもらうよー」

( ゚д゚ )「タイムトライアルってことは、これを全力で引っ張ればいいわけですよね」

( ´_ゝ`)「まぁそういうことだね。1年生のしかも最初なら、1分15くらいが平均的かな」



630 :アテンションゴーのようです[sage]:2011/07/31(日) 23:21:35.22 発信元:124.100.66.42

( ´_ゝ`)「じゃぁ、俺がアテンションって言ったら準備して、ゴーって言ったら始めてな。
      これはエルゴだけじゃなくて、ボートレースじゃ必ず使われる掛け声だから覚えておいて」

(* ・∀・)「カッコいいな」

( ゚д゚ )「そういう用語ってなんだかワクワクするよな」


( ´_ゝ`)「じゃぁセットしたな。足もくくりつけたな。スタート用意…
      アテンション、ゴー!!」


( ゚д゚ )(# ・∀・)「ぐおっ」


2人は素早くハンドルを引っ張りあげるが、予想以上に重い。

必死になってハンドルを引っ張りシートをスライドさせ戻しまた引っ張り―
だが、モニターを見る限りは運動量と漕いだ距離がまったく比例していない。焦って焦って、2人はひたすら漕ぎ続ける。
シートが擦り切れそうな音を立て、ハンドルが空振りするような「シャーッ」といった音を立てる…



631 :アテンションゴーのようです[sage]:2011/07/31(日) 23:21:47.46 発信元:124.100.66.42

( ´_ゝ`)「…おっ、2人とも同時に終わったみたいだな」

( ´_ゝ`)「えーっと…どっちも1分13か。まぁ初めてにしてはまぁまぁだね」


(; ・∀・)「これで300m漕いだことになるのか…それにしても重いし疲れるな」

( ゚д゚ )「でも楽しいな。漕いだ実感があるっていうかなんていうか…」


(´・ω・`)「楽しいのかぁ」

ミ,,゚Д゚彡「初めては何でも楽しいもんだよ。俺は食堂のメンチカツを初めて食べたときの楽しさを忘れてない」


( ´_ゝ`)「できればそれが長く続くといいけどなぁ」

( ´_ゝ`)「あと1ヶ月そこらくらいで、エルゴを見ただけで吐き気がするようになってくるからね」


糸売



632 :アテンションゴーのようです[sage]:2011/07/31(日) 23:24:28.92 発信元:124.100.66.42
連載モノです。なんとか続けていこうと思っています。

大して知識もありませんし浅はかですが、どうかよろしくお願いします…。

参考までに、エルゴメーター(ローイングエルゴ)とはこういうものです
http://www.youtube.com/watch?v=yGwYxzDTZ_o



657 :アテンションゴーのようです[sage]:2011/08/08(月) 22:41:16.57 発信元:123.220.116.221

体験入部2日目。
モララーとミルナは、既にボート部に入部する決心を固めている。


(,, ・∀・)「固めているっつってもなぁ…」

( ゚д゚ )「他に行くあてもないし、とりあえずはここで様子見しようぜ」


部室の扉を開ける。相変わらず立て付けの悪い音を立てて扉は開く。
先輩方3人は「来たか」というような顔でこちらを見つめた。


( ´_ゝ`)「おー、今日も来たな」


フーンが自分の横に置いてあったファイルから紙を2枚ほど取り出し、2人に渡す。
A4のコピー用紙に「今後の予定」が、まるで毛虫が這いずり回った跡のようなうねった字で書かれていた。


658 :アテンションゴーのようです[sage]:2011/08/08(月) 22:41:27.65 発信元:123.220.116.221

~今後の予定~

  • 土曜日まで基礎トレ。1年は適当にやってください

  • 土曜日と日曜日は川で乗艇練習。1年は適当に先輩達と漕いでください

  • あと1ヵ月後あたりにはインターハイ県予選。頑張ってください

  • 中間後には関東大会予選。頑張ってください

以上


(,, ・∀・)「恐ろしく大雑把だな」

( ゚д゚ )「インターハイに地区予選とかって無いんですか」

(´・ω・`)「まぁ、高校ボートは恐ろしく競技人口が少ないから、県で勝ち上がればすぐ国だからね
      でもこっちは2年しかいないから、それを勝ち上がるには相当キツいよ」


659 :アテンションゴーのようです[sage]:2011/08/08(月) 22:41:40.59 発信元:123.220.116.221

(; ・∀・)「え?先輩達みんな2年なんですか!?」

( ´_ゝ`)「俺達の上にいた3年がみんな退部しちゃったからなぁ
      アレだ、顧問の寝顔を撮ってたところがバレちゃって、それの責任取る形で一気に4人やめたんだ」

ミ,,゚Д゚彡「プギャーをガチ切れさせると中々面倒なことになるから気をつけろよ」


( ^Д^) プギャー先生 国語読解担当 生活指導主任
       30年前からこの学校にいる大ベテラン
       特技はどうでもいいことで人を叱りつけること


(´・ω・`)「この3人だけで活動していくのも無理があるしね
      だから1年が入ってきたのは嬉しいことだけど、欲を言えばもう少し…」

ミ,,゚Д゚彡「5人くらいでいいよ。クォードが組める」



660 :アテンションゴーのようです[sage]:2011/08/08(月) 22:41:52.08 発信元:123.220.116.221

( ´_ゝ`)「だから新入部員をもっと積極的に呼び込まなきゃ駄目なんだって言ってんだ
      お前らなんて1年の廊下でボート部ボート部って連呼してるだけで終わってるだろ」

(´・ω・`)「まぁどんなに増えてもあと一人でしょ。こんなマイナーな部活、宣伝しようが変わらない…」


ガラッ

  _
( ゚∀゚)「こんちは~」
  _
( ゚∀゚)「ボート部ですよね?仮入部を希望したいんですけど…」


( ´_ゝ`)(´・ω・`)ミ,,゚Д゚彡「!?」


ミ,,゚Д゚彡「入ってきたじゃねぇかお前この野郎
      俺達がちゃんと積極的に呼び込んでるから彼らは来たんだよ」


661 :アテンションゴーのようです[sage]:2011/08/08(月) 22:42:09.31 発信元:123.220.116.221

(´・ω・`)「ねっ」

  _
(; ゚∀゚)「…」
  _
(; ゚∀゚)「…多分そういうことです」


( ´_ゝ`)「残すところあと2人か…」

(´・ω・`)「今更1人だけでヒョコヒョコ入ってくるような新入生もいないだろうけどなぁ」

ミ,,゚Д゚彡「強引にでも誘い込めや」


662 :アテンションゴーのようです[sage]:2011/08/08(月) 22:42:22.56 発信元:123.220.116.221

( ´_ゝ`)「ハイ、そういうことで。1年にノルマだ
      あと2人、誰かをなんとか説得してボート部に入部させよう。期限は今週の土曜日」

( ´_ゝ`)「いかにボートというスポーツが素晴らしいかを力説して、相手に入りたいと思わせるんだ」


(; ・∀・)「まだ漕いだことすらないのに素晴らしさなんて…」

ミ,,゚Д゚彡「そこそこになればボートの上に寝っ転がることができるぜ。素晴らしい」

(´・ω・`)「クォードだったらオールを駆使して前にいる奴に水をぶっかけることができる。素晴らしい」


( ´_ゝ`)「…」

( ´_ゝ`)「まぁ、そういうところを上手に力説してくれってことだね」


糸売



663 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね[sage]:2011/08/08(月) 23:20:24.10 発信元:61.198.168.74

ボートの上にねっころがるのはそこそこにならないと無理なの?

664 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね[sage]:2011/08/08(月) 23:50:11.59 発信元:111.86.147.175

シングルの場合は

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最終更新:2011年10月16日 02:20