850 :マリオネットの手織り文のようです:2014/02/04(火) 18:06:47.26 発信元:111.86.147.167


ブーン系小説シベリア図書館の、祭りの為に開放されているスペースは冬だというのに熱気満ち溢れていて、男性職員はおろか館長すらもウォッカを煽り服を脱いでいる。

そういった喧噪を、さほど広くない第三資料室の窓から眺めているのは、研修を終えて間もない新人司書。
私は彼女に気付かれぬよう、こっそりと歩いた。

(-@∀@) ハローさん

ハハ;ロ -ロ)ハ ぴっ!

(-@∀@) …すみません。しかし可愛い反応ですね



852 :マリオネットの手織り文のようです:2014/02/04(火) 18:10:06.90 発信元:111.86.147.163

ハハ;ロ -ロ)ハ びっくりしましたよ、アサピーさん

(-@∀@)すみません、つい…それにしても

私は彼女が見ていた方の窓辺に立ち、階下を見下ろした。
祭り会場である、広く吹き抜けになっている閲覧室が、二階にある此の部屋から見えるのだ。

(-@∀@) 参加しないのですか?許可されているのに

彼女は質問から逃げるように、私が立っているのとは反対側にある、シベリアの街並みが見える窓に視線をやった。

静かに雪の降る外側の窓とは対照的に、館内側の窓からはかすかに人々の声が聞こえてくる。


853 :マリオネットの手織り文のようです:2014/02/04(火) 18:16:27.89 発信元:111.86.147.171

ハハ ロ -ロ)ハ ちょっと苦手なんです、ああいった場は

(-@∀@) ふむ…そうでしたか

彼女は白い雪と灰色の空から、手元にある白い紙と黒色の文字へと視線を戻す。

(-@∀@) それは…保管庫の資料ですね

ハハ ロ -ロ)ハ はい。館内の資料との食い違いがあったので、調べていたところです

彼女の背後はカラフルにファイルされた資料でびっしりと埋め尽くされているが、その中の何冊分かは抜き出され彼女の手元にあるのだった。

(-@∀@) 熱心ですね

ハハ ロ -ロ)ハ そ、そうでしょうか

(-@∀@) ええ、そうですよ。私は純粋に貴女を誉めています

ハハ*ロ -ロ)ハ アサピーさん…

一瞬間、微笑んだ彼女はすぐに俯いてしまった。
一体どうしたのだろうか?私は心配になる。


854 :マリオネットの手織り文のようです:2014/02/04(火) 18:20:02.32 発信元:111.86.147.171

ハハ ロ -ロ)ハ …でも私、記録を読むことしか、できません

(-@∀@) ……ん?

私は思わず首を傾げた。

(-@∀@) いけない事みたいに言いましたが…それが、どうかしたんですか?

ハハ;ロ -ロ)ハ や、その、なんていうか…

(-@∀@) 職員として使命感にでも駆られているので?

ハハ ロ -ロ)ハ …だって、私がブーン系を書きたくなっても、動機がちやほやされたいからで、文章だってどこかで読んだような部分ばかりだし…

(-@∀@) もう一度言いますが、それのどこがいけないのですか?

ハハ;ロ -ロ)ハ えっ…

(-@∀@) もっと視野を広げてみましょう。
他人に自身の存在を認められたいから人はコミュニケーションをとるし、人間の思考は主に他人や先祖のパクリです。
だから、それは当然なのですよ



855 :マリオネットの手織り文のようです:2014/02/04(火) 18:25:22.95 発信元:111.86.147.169

ハハ ロ -ロ)ハ 広げすぎじゃありませんか?

(-@∀@) だまらっしゃい。そもそも、あそこで騒いでいる連中は…

私は祭りの会場をみやる。目を放した隙に裸の人が増えていた。とはいえ、例年と比べれば少ないが、数は重要ではない。

聞けば都合が悪いため、しかたなく自宅で全裸になり気分だけでも味わう猛者もいるらしい。

(-@∀@) あなたの言った事が当てはまったとして、多分、気にもしませんよ。見れば分かります

ハハ ロ -ロ)ハ そうでしょうか…

彼女は引き寄せられるように窓を開け、身を乗り出し。

ハハ*ロ -ロ)ハ ……すごい……

襲いかかる絶叫、歓声、嬌声、慟哭、悲鳴に体を震わせた。


856 :マリオネットの手織り文のようです:2014/02/04(火) 18:31:03.89 発信元:111.86.147.173


(*'∀`) おい少年!俺ぁ、お前の作品読んだぜ!めっちゃ面白かったぞ!

(・∀・*) 本当!?ありが…

(・A・ )

(*'∀`) おうとも!ハラショー!





(*'∀`) ハアハア n
⌒`γ´⌒`ヽ( E)
( .人 .人 γ ノ
ミ(こノこノ `ー´
)にノこ(
【(*‘ω‘ *) ビンビンだっぽ】

(・∀・;) ひっ…ぎゃああああーーーっ!!


ハハ ロ -ロ)ハ …

(-@∀@) …

彼女は、そっと窓を閉じた。



858 :マリオネットの手織り文のようです:2014/02/04(火) 18:36:14.76 発信元:111.86.147.176

ハハ ロ -ロ)ハ …そうですね、確かに

(-@∀@) そうでしょう、そうでしょう

ハハ ロ -ロ)ハ でも、もし誰にも読まれなかったら…

(-@∀@) ありえません。私が必ず読みますからね

ハハ*ロ -ロ)ハ アサピーさん……でも

(-@∀@) まだ何か?

ハハ ロ -ロ)ハ ええ…まだちょっと、勇気が、足りません。あとほんの一握りが、足りないんです

ハハ*ロ -ロ)ハ だから、アサピーさん

彼女は、おそるおそる、右手を差し伸べる。耳まで真っ赤になりながら。
嗚呼、まったくこの眼鏡っ娘ときたら、時折こんなにも可愛い仕草を見せるのだ。まったく実にけしからん。

ハハ*ロ -ロ)ハ ちょっとだけ…私に、分けてくれませんか?

(-@∀@) ハローさん…

(*@∀@) 私でよければ、喜んで。いくらでも



860 :マリオネットの手織り文のようです:2014/02/04(火) 18:41:34.92 発信元:111.86.147.174

彼女の手を取り、歩き出す。

ああいう場は苦手、と彼女は言ったが、それは「どう振る舞えば良いのか」や「誰とどの程度絡むべきなのか」など分からない事だらけ故の躊躇いもあってのことだろう。
誰かが一緒なら大丈夫なはずだ。祭りが盛り上がるのと同じ事。

それにたとえ独りであっても、一度踏み出してしまえば、案外平気なものである。

ハハ*ロ -ロ)ハ ところで、アサピーさん。ずっと気になっていたんですけどね…

(-@∀@) はい、何でしょう

ハハ*ロ -ロ)ハ 裸で、寒くないんですか?

(-@∀@) え?…あっ

(@∀@-)

(-@∀@)

(@∀@)

まったく…やれやれだ。

ハハ*ロ -ロ)ハ ほら、呆けてないで行きますよ―

私はハローに引っ張られていくアサピーを見送りながら、盛大に溜息を吐いた。

…さて。

2人が退室したので、もう座ったりしても私の存在は露呈しないだろう。


861 :マリオネットの手織り文のようです:2014/02/04(火) 18:46:25.14 発信元:111.86.147.177

私は今、空気のように透明となっている。

だから接触したり物を動かすなどの目立つ行動を控えれば図書館の誰にも、私を知られることはない。

…ああ、服を着ていたら怪奇現象に見えてしまうので当然、全裸である。

2人が部屋を出た今なら誰も居ないのでパイプ椅子を出し、派手に音を立て座り窓に頭を預けた。

町並みの見える反対側の窓は相変わらず寒そうだが、こちらはガラス越しにでも熱気が伝わってくる。



863 :マリオネットの手織り文のようです:2014/02/04(火) 19:03:05.14 発信元:111.86.147.175

語り合う彼等のそれが、心地良い。

私も、言葉を語り、語らせることが好きだからだ。

私の言葉は、とても微弱な力でしかない、分かっていても出力するのは何故か?

私は『言葉使い師』に憧れているからだ。

神林長平先生のSF小説から上辺だけを拝借した言葉である。

幼い頃から本好きな私は十代前半で比較的新しいジャンルに出逢い、数多の名作と同じように心を弄ばれた。

キチンとした文章だけでなく簡素な言葉の羅列にも、多感な私の感情は、劇の人形の如く思うがままに持ち上げたりパッと落とされたり突き動かされたりした。

やがて操られるうちにこのジャンルならば、どうしようもない貧相な人生の中で芽生える感傷や激情を、無学な私でも言葉を用いて発散できる事に気が付いた。

864 :マリオネットの手織り文のようです:2014/02/04(火) 19:07:13.94 発信元:111.86.147.164
今まで暗喩的風景画でしか表現できなかった事、自分の世界を他者に肯定されたいという欲求

…そして、私の感情を操り日々を彩ってくれる言葉使い師達に、恩返しをしたいという思いがあって、私は恥ずかしながらも出力する。

まあ現実は難しい、では何もできないのか?

そんな事は無い、出来ることは幾つもある

…だから私は窓を開けて。



866 :マリオネットの手織り文のようです:2014/02/04(火) 19:12:04.34 発信元:111.86.147.174


(;*゜ω゜) うっひょおおおたまんねえええ…ん?

( ;^ω^) なんか当たったお…紙飛行機?なんか書いてあるし…って言うか、どっから?


そして私は文を折り窓から飛ばす。

同じように言葉を使い、私の夢想以上に私を踊らせてくれた者へ

…あなたの紡いだ言葉に胸を踊らされ、感情を操られたのだと知らせるために次々投下する。

私以外も踊らされてしまえと願いを込めて、この人達の世界は、こんなにも楽しいのだと少しでも広がるように。


868 :マリオネットの手織り文のようです:2014/02/04(火) 19:18:10.65 発信元:111.86.147.166

…自分で築いた世界を持て余しつつ、羞恥心故にさらけ出せないでいる、そこの貴方。

別に、私は強いらない。

これはあくまで趣味だから全て、あなたの好きにすればいい。

でも私は、まだ見ぬ貴方に期待をしている。

趣味なのだ、勝手に待つのも自由だろう?気が向いたら、で良い。

あなたの世界で、私を踊らせてはくれまいか。









あなた達は言葉使い師。

どうか私を操ってくれ。


869 :いやあ名無しってほんとにいいもんですね:2014/02/04(火) 19:24:44.07 発信元:111.86.147.165

終わり

続きまして
ブーン系小説シベリア図書館の過去短編(第11スレ~第20スレの2レス以上の短編)感想投下します

他の人は俺にかまわず、好き放題しちゃってね

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最終更新:2014年02月07日 07:49