967 :派生図書館群像のようです:2014/02/06(木) 20:49:13.00 発信元:111.86.147.164


ワタクシ、近頃思うのです。空が随分重たいな、と思うのです。


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(´・ω・`) はあ

公園というのは本来明るい笑顔と楽しい声で溢れているべきなのですけれども、こうして灰色の寒空の下コートを着込んで冷たいベンチに座っている私の耳に嬌声は無く、笑顔どころか人が居ないのであります。

公園の敷地を出れば、勿論たくさんの通行人がいらっしゃるのですが、生憎と私の他には誰独りとして公園に足を運ぶ者は居りません。

ですからついつい、溜息をこぼしてしまうのです。

それというのも、原因は、私の膝の上にあるドッシリした灰色の本なのでありまして。


968 :派生図書館群像のようです:2014/02/06(木) 20:54:41.04 発信元:111.86.147.165

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(´・ω・`) 続き、こないなあ

この地味な割に頑丈なつくりの本は、独りでに頁が増えていくのであります…不思議な事ではありますが、この本は余所世界の極一部を物語として読める、という代物でありまして。

余所の世界を写すが故に、勝手に、頁が増えるようなのであります。

これを見つけ出しました当時の私は、底知れぬ恐怖をも抱きましたが、時が経つにつれスッカリ愛読書となり今では片時たりとも手放すことはありません。

しかしある日を境に、何故やら頁の増加が止まってしまいました。

969 :派生図書館群像のようです:2014/02/06(木) 21:01:38.37 発信元:111.86.147.178
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(´・ω・`) もう、こないのかな

それで、私は灰色の本と写し出されていた余所の世界について、憂いているのであります。

先に述べましたようにこの本が写し出す、余所の世界にある「 図書館 」の有り様を覗き見て一喜一憂し、またあちらからも、私の職場を同じように覗き、一喜一憂しているはずなのでした。

しかしながら灰色の本の頁が増えないと言うことは、彼方サンに何事かあったのかもしれず、しかし私に知る術は絶無であるという、なんとも歯痒い思いをしておりました。


970 :派生図書館群像のようです:2014/02/06(木) 21:07:33.68 発信元:111.86.147.166

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(´・ω・`) 寒いなあ

この頃私の思考は悪い方へと、放ったビー玉の如く転がっておりまして、そんな私は思うのです。

こちらの世界にも、何事か起きるのではあるまいか、と心配をしていたのであります。

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(´・ω・`) おっと、こんな時間か

ふと腕時計に目を落としてみれば、お昼休憩が終わろうとしておりました。

早く職場へと戻らねば、同僚たちに叱られてしまうので私は本を鞄にしまい、煉瓦敷きの大通りを駆け抜けました。


971 :派生図書館群像のようです:2014/02/06(木) 21:12:01.36 発信元:111.86.147.170


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(´・ω・`) やれやれ、間に合った

私の職場でありますナルィーシュキン・バロック様式の、随分古く随分と洒落た小さな図書館に職員用の扉から入るやいなや、ニコヤカに待ちかまえていたデレという若い女性職員と、目が合ってしまったのであります。

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ζ(゚ー゚*ζ おかえりなさいませ、館長

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(´・ω・`) うん、ただいま。間に合ったよね?

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ζ(^ー^*ζ ええ、ええ。間に合いましたとも


973 :派生図書館群像のようです:2014/02/06(木) 21:17:15.89 発信元:111.86.147.172

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(´・ω・`) なのに出迎えかい。一昨日の事は反省していると、言ったじゃないか

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ζ(゚ー゚*ζ ワタクシ、館長の言葉は、ちゃんと信じていますよ。遅刻の心配などしていません。
ただ、今日はお天気が崩れそうなのに、公園までお出かけになりましたので。
何事か思い詰めているんじゃないかしらんと、不安になってしまったんです

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(´・ω・`) 相変わらず勘の良いことで

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ζ(゚ー゚*ζ 悩み事ならばどうか、ワタクシ達に相談してくださいな

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(´・ω・`) そうだね。でもそれは今日の仕事を終えてからにしよう

私が住んでおりますのは北方の静かな国でありまして、住人は穏やかな人が多く、それほど慌てることなく仕事ができるのでありまして。

私と先の女性職員、それに他の同僚たちは緩やかに終業時刻を迎えたのであります。



975 :派生図書館群像のようです:2014/02/06(木) 21:26:00.20 発信元:111.86.147.178

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ζ(゚ー゚*ζ 兄様

血の繋がりなどありません、しかし彼女は仕事中をのぞき、好んでこう呼びます。

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ζ(゚ー゚*ζ今夜の晩御飯はミセリちゃんが作るんですよ。早く帰ってあげましょう

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(´・ω・`) そうか、あいつも成長したもんだな

ミセリというのは妹であり、私はデレとミセリと共に暮らしております故、このような会話になるのであります。

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ζ(゚ー゚*ζ ふふっ。ワタクシが初めてミセリちゃんとお喋りした夜のこと、良く覚えています

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(´・ω・`) あいつが、まだ中学生の…御盆だったな


977 :派生図書館群像のようです:2014/02/06(木) 21:31:37.54 発信元:111.86.147.173

この国の良いところの一つは、他国の慣習に寛容であり、民族や宗教などに囚われる事がないという点であります。

今、デレと並んで歩く煉瓦敷きの通りにも、品種改良がなされた桜の木が植わっております。

永久凍土の横たわるこの国には、ありとあらゆる文化が混在しているのであります。

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ζ(゚ー゚*ζ ワタクシあの夜、嫉妬したミセリちゃんに本当に刺されてしまうのかと思いましたよ

他人には話したことのない、ミセリとデレと私との思い出話に花を咲かせてはみるものの、私の意識は此方の世界へ向けられてはおりませんでした。

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ζ(゚ー゚*ζ 兄様?

デレはそれを目聡く悟ったのであります。

彼女の澄んだ瞳に見つめられて、私はつい、打ち明けたのであります。

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(´・ω・`) 僕、最近思うんだ。この世界は、ある日突然に、消えてしまうんじゃあないのかって。とても不安なんだよ

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ζ(゚ー゚*ζ ええ


978 :派生図書館群像のようです:2014/02/06(木) 21:38:24.04 発信元:111.86.147.165

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(´・ω・`) デレ、これを見てくれ。この本は、異世界の事が書いてある

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ζ(゚ー゚*ζ はい

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(´・ω・`) 信じられはしないだろうけど、僕はこの本の頁が独りでに増える度、余所の世界を覗き見る事ができた。平行世界と言っても良い

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ζ(゚ー゚*ζ そう

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(´・ω・`) 僕はこの本に描かれる世界の人と会うこともできた。余所の世界の取り留めのない日常に触れ続けていた、それは彼方も同じだった

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ζ(゚ー゚*ζ それで

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(´・ω・`) それが、ここ最近、頁が更新されない。向こうの世界の人と会えない。
物語として書かれる世界を、読むことができなくなった。
その意味…そして、この世界が実は同じ物だとしたら



980 :派生図書館群像のようです:2014/02/06(木) 21:43:34.32 発信元:111.86.147.175

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ζ(゚ー゚*ζ 兄様

ここで、デレはいよいよ私の言葉を遮ると、防寒のため重ね着して尚華奢な両腕でもって私を抱き寄せ、赤子をあやすかのように私の背中を、ぽす、ぽすり、叩いたのであります。

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ζ(^ー^*ζ 一度産まれ落ちたモノは、そう簡単に消えはしませんよ

気恥ずかしさと、情けなさで、あっという間に私の全身はカアッと熱くなってしまいました。


それから幾日たった、重苦しい曇天のお昼時でありました。

相変わらず侘びしい公園のベンチに腰掛け、灰色の本を無意味にめくっていたところ、不意に私を呼ぶ声がしたのであります。

ξ゚⊿゚)ξ ショボンさん、お久しぶりです

どこか冷たそうな雰囲気を纏った、ツンという名の彼女は。

私が覗いていた世界で、私と同じ立場にある人物なのであります。

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(´・ω・`) 館長さん。お久しぶりです、本当に、久しぶりだ



982 :派生図書館群像のようです:2014/02/06(木) 21:48:56.04 発信元:111.86.147.173

ξ゚⊿゚)ξ そうですね。少し、お時間よろしいですか

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(´・ω・`) 勿論ですとも。さあどうぞ、お掛けになってください

ξ゚⊿゚)ξ では失礼。今日は随分と冷えますが、こんな天気に外でお弁当ですか

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(´・ω・`) 本の頁が増えなくなり、そちらの事が気になって、どうにも独りになりたかったんですよ

ξ゚⊿゚)ξ そうですか。やはり途絶えていましたか

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(´・ω・`) 何か、あったのですか?

ξ゚⊿゚)ξ ええ。潰されました、図書館が

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(´・ω・`) そ、れは

ξ゚⊿゚)ξ 政変で排斥運動が起きたんです。だからもう、その本に私達の事が表されることもないでしょう。それを伝えに来たんです


983 :派生図書館群像のようです:2014/02/06(木) 21:50:02.56 発信元:111.86.147.168

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(´・ω・`) そんな、理不尽すぎるじゃあないですか

ξ゚⊿゚)ξ 仕方無いんです。きっと私達の事を書いている何かが、そう決めたんでしょう

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(´・ω・`) そんな…そんなこと…

ξ゚⊿゚)ξ ショボンさん。わたし、あなたにお願いがあります


986 :派生図書館群像のようです:2014/02/06(木) 22:01:40.21 発信元:111.86.147.166

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(´・ω・`) なんですか、なんでも言ってください

ξ゚⊿゚)ξ お願い…書いてください

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(´・ω・`) はい

ξ゚⊿゚)ξ あなたの手で書いて、世界を増やしてください。
わたし達や、あなた達の世界が、一方的でないという事を、証明して欲しいんです

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(´・ω・`) 一方的、ですか

ξ゚⊿゚)ξ わたし達が、読まれるだけでは無いということ…
それぞれが生きている世界は、無限に広がっているのだと。あなたの手で、どうか

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(´・ω・`) 確認、できないかもしれませんよ。書いただけでは産まれないかもしれない。それでも良いのならば




989 :派生図書館群像のようです:2014/02/06(木) 22:05:50.93 発信元:111.86.147.169

ξ゚⊿゚)ξ かまいません

ξ^ー^)ξ ありがとう。そして、さよなら、ショボンさん

こうして、彼女に請われた私は稚拙ながらも言葉を捻り出し、記していったのであります。

灰色の本は、気が付けば忽然と姿を消しておりました。

しかしながら、私は覚えております、その形状、配色、重さに至るまで体が記憶しております。

そこで私は、こうして再現をして見たのであります。

もしも、もしもこの本を…いや本というべき形になくとも手に取った方が、一人でも現れることがあれば…その時はどうか、あなたにも筆を取っていただきたい。

世界を描き出すのに必要なのは、一本のペンと、ほんの一握りの勇気だけなのであり。

おもしろいつまらない、上手い下手など、関係は無いのですから。


991 :派生図書館群像のようです:2014/02/06(木) 22:09:03.89 発信元:111.86.147.165


( ^ω^) なんぞこれ

最果ての地に開館したばかりの、ブーン系小説シベリア図書館の館長であるブーンは、倉庫の奥底で見つけた一冊の分厚い本を閉じた。

( ^ω^) どんな壮大なクッソスレかと思ったら…うーん、それにしても、何の本なんだお…蔵書じゃないし

ブーンは、職員のドクオが倉庫へ持ち込み、仕事の片手間に読んでいて、そのまま置き忘れた様子を容易く想像できたのだが、現実彼は真面目であり、そもそも記載されている情報の少なさから正規に出版されたものでは無いだろうと考えた。

( ^ω^) どこが印刷したのかすら書いてないし…
序章だけしか読んでないけど内容も、まあ、アレだし。手作り?案外、ウチの誰かが?



994 :派生図書館群像のようです:2014/02/06(木) 22:13:05.85 発信元:111.86.147.163

独り言を言いながらブーンが、元在った場所に本を戻した直後、彼を呼ぶ怒声が響いた。

(#@∀@) 館長、こんな所で何してたんですか!

(^ω^; ) ビックゥッッ!!いや、ちょっと整理を…

(#@∀@) そんな事言って、またクッソスレ集でも読んでいたんでしょう!?

(^ω^; ) 違う違う、これは…えーっと…

(#@∀@) いいから早く来てください、商工会議所の方がお見えになっているんですよ!

(^ω^; ) あ、そうなの。うん、すぐ行く。走って行く

(-@∀@) 施錠と鍵の返却は私がやっておきますから、服の埃はらってさっさと行ってください

( ^ω^) すまんすまん、それじゃ頼んだお


996 :派生図書館群像のようです:2014/02/06(木) 22:16:15.68 発信元:111.86.147.177

(-@∀@) まったく…

溜息を吐くアサピーだったが、その眼鏡越しに見送る館長の背中は、どこの誰よりも頼もしく感じている。

(-@∀@) 頼みますよ、館長

アサピーはブーンに聞こえないように、そっと呟いた。


関連(アカラサマーケティング)

  • (-@∀@)とある眼鏡の蔵書目録のようです・SF(すこしふしぎ)版
  • (´・ω・`)時を忘れて覗き見るようですζ(゚ー゚*ζ
  • ζ(゚ー゚*ζ蜜は哀れで甘いようです
  • ('A`)守るために殺すようです

終わり

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最終更新:2014年02月07日 07:55