577 : 忍法帖【Lv=2,xxxP】 : 2011/03/28(月) 17:06:46.32 発信元:60.42.116.9
お題は
532の置いてけぼり
533の中年もしくは婚期逃した女性
で投下します!
あんまり置いてけぼり要素ないかも
578 : 思い出話のようです 1/12 : 2011/03/28(月) 17:08:14.12 発信元:60.42.116.9
独り身にとっては広すぎるリビング。
ソファにもたれ、リモコンを手にとってテレビの電源を切る。
金曜9時は面白い番組がない。
('、`*川「はぁ」
まったく飾りっ気のない左手を見つめ、思わずため息をつく。
25歳を過ぎた頃であろうか、周りの友人たちの左手の薬指が気になりだしたのは。
同窓会を開くたびに、ダイヤの指輪が増えていく。
そうして、私だけが置いてけぼり。
('、`*川「なーんでだろうなぁ……」
机の上の手鏡を手に取り、自分の顔を見つめる。
目元と口元の薄い皺が少々気になるが、それでも中の上といったところだろうか。
つまり、悪くはない。
決して過大評価ではない……はずだ。
579 : 思い出話のようです 2/12 : 2011/03/28(月) 17:10:29.46 発信元:60.42.116.9
('、`*川「はぁぁぁ……」
……なんでだろう。
どこで道を間違えたのだろう。
手鏡を置き、会社の後輩から貰った百年の孤独をグラスに注ぐ。
つか今考えてみると普通に嫌がらせだなおい。まぁ美味しいからいいけど。
('、`*川「今日も寂しく一人酒…、か」
いや、一人で悩んでも仕方がない。
これは34年で得た最も役に立つ教訓の一つである。
私は携帯を開いて、唯一無二の親友に発信する。
杉浦 トソン
今日は、存分に相談に乗ってもらおうじゃないの。
580 : ( ゚∀゚)「それ高かったんすよ」 : 2011/03/28(月) 17:12:00.64 発信元:60.42.116.9
思い出話のようです。
581 : 思い出話のようです 4/12 : 2011/03/28(月) 17:13:26.40 発信元:60.42.116.9
9コール目が鳴り終わるとともに、彼女が電話に出る。結構待ったな。
(゚、゚トソン「ペニサスですか」
相変わらず若々しい声だな。
というか、こいつは声だけでなく姿形も若々しいのだ。
大学生の頃から見た目がまったく変化していない彼女を、同級生達は親しみを込めて「化物」と呼ぶ。
('、`*川「今、暇?」
(゚、゚トソン「ええ、子供も寝ましたし、ロマは今日は出張ですから」
トソンはつい3年前に大学3年の時から付き合っていた彼と結婚したばかりだ。
つまり、彼女らは10年間もの交際期間を経て役所に届けを出したのだ。
なんで結婚しないの?と、私は散々聞いてきたが、微笑むだけで決して答えてはくれなかった。
('、`*川「これから小1時間くらい語るけど、良い?」
(゚、゚トソン「……今は9時ですか、まぁいいですよ」
ちょっと前のトソンならあっさり断っていたかもしれない。
子供が出来てから少し丸くなった気がする。そのまま体型も丸くなっちまえ。
582 : 思い出話のようです 5/12 : 2011/03/28(月) 17:14:57.11 発信元:60.42.116.9
('、`*川「単刀直入に聞くけど、私が結婚出来ない理由って何だと思う?」
(゚、゚トソン「性格」
('、`*川「ぅおい!ばっさり切り捨てすぎだわ!」
(゚、゚トソン「……貴女のそういうところが原因だと思いますよ」
('、`*川「うっ……」
ちょっと図星。
だけど、もっと凄いのが結婚したじゃない。
男勝りでがさつなあいつ。
('、`*川「いや、あのツンも結婚出来たんだから、それはおかしいわよ」
(゚、゚トソン「あれは相手が良かっただけですよ」
ツンの旦那を思い出す。
ふっくらした、人の良さそうな感じの人。披露宴でぼろ泣きしてたな。
('、`*川「あの人あれで内藤グループのお坊ちゃんでしょ」
(゚、゚トソン「そうらしいですね」
583 : 思い出話のようです 6/12 : 2011/03/28(月) 17:16:18.56 発信元:60.42.116.9
('、`*川「凄い玉の輿じゃないの……」
(゚、゚トソン「まあ、ツンは運が良かったんですね」
運が良いどころの話ではない。
「出会いのきっかけは彼女が財布を拾ってくれたことでした」とか、ドラマかっ!
('、`*川「ツンはそんな所に嫁いだのに、なんで私は独身なのよ」
(゚、゚トソン「さぁ?運ですかね、正確には男運」
('、`*川「うっ………」
またもや図星。
(゚、゚トソン「貴女は昔っから男運が無かったですからねぇ
浮気やら実は子持ちの不倫野郎やらなんやら」
……耳が痛い。
584 : 思い出話のようです 7/12 : 2011/03/28(月) 17:17:52.04 発信元:60.42.116.9
(゚、゚トソン「堅実なお付き合いよりも情熱的な一瞬で燃え尽きる愛、って感じなんでしょうかね、貴女は」
('、`*川「わ、私は普通にお付き合いしていただけのつもりだったんだけど……」
(゚、゚トソン「傍からみるとそんな感じでしたよ、貴女の恋愛は」
('、`*川「そうなのか……」
(゚、゚トソン「ええ」
('、`*川「確かに、トソンに比べたらそんな感じだったのは否めないけど」
(゚、゚トソン「まぁ、私達の永遠の純愛と比べたらみんなそうなりますよ」
('、`*川「自分で言うな!」
585 : 思い出話のようです 8/12 : 2011/03/28(月) 17:19:24.96 発信元:60.42.116.9
(゚、゚トソン「……そういえば、私達が今まで結婚しなかった理由、話してなかったですよね」
('、`*川「え、うん」
(゚、゚トソン「実は彼、子供を作りにくい体質なのですよ」
いきなり重いわ。確かにロマ君は重そうだけど。ガッチリ系で。
いや、話が重いんだよ。
(゚、゚トソン「で、ある程度収入が安定してきてから治療を始めたのですが、3年前にやっと成功しまして」
('、`*川「そう……」
(゚、゚トソン「……ってのは嘘でして」
('、`*川「嘘かいっ!」
ふふっ、とトソンが笑う。
そうやって暗い話を締めるのは、トソンの昔っからの癖だ。
(゚、゚トソン「まあ、なんだかんだあって幸せな家庭を築いていますよ」
('、`*川「のろけ、ってか嫌がらせかよ……」
586 : 思い出話のようです 9/12 : 2011/03/28(月) 17:20:55.14 発信元:60.42.116.9
(゚、゚トソン「ま、問題は今の貴女の環境ですよ
周りに素敵な男性はいないのですか?」
素敵な人……
盛岡さん、斉藤さん、藻羅君………
('、`*川「いるけど、全員既婚者」
電話口から、ぷっ、と吹き出す音がする。
(゚、゚トソン「そうなりますよねww」
('、`*川「笑うなよ!」
(゚、゚トソン「ふふっwごめんなさいww
じゃあ、一番仲の良い男性は?」
一番仲の良い………長岡?
('、`*川「6歳年下で、お土産に百年の孤独を持ってくるような奴かな」
(゚、゚トソン「ふふふwwwwははっははwwwwwww
良いじゃないですかwwwwwwふふっwwww」
588 : 思い出話のようです 10/12 : 2011/03/28(月) 17:56:01.48 発信元:59.84.250.131
('、`*川「笑いすぎだよ!」
(゚、゚トソン「きっとお似合いですよwwwwwwはははっwwwww」
('、`*川「つかあいつこの前『伊藤さんって、俺のお母さんと同じような趣味してますね』って言いやがったんだよ」
(゚、゚トソン「ははっwwwwははっはwwwwwww最高wwwwwww」
('、`*川「あれはないな……」
(゚、゚トソン「私はwwww良いとwww思いますよwwwwデュフッwwww」
('、`*川「トソン、笑い方やばいってwwデュフって」
(゚、゚トソン「いやwwだってwww」
589 : 思い出話のようです 10/12 : 2011/03/28(月) 17:56:49.52 発信元:59.84.250.131
('、`*川「とりあえず落ち着こう」
(゚、゚トソン「ふぅ……」
右手にある、透明な淡い琥珀色にかがやくグラスを見つめる。
('、`*川「ちょっと、結婚とか以前に難しいな……」
(゚、゚トソン「いいじゃないですか、そういう人も付き合ってみると面白いものですよ」
('、`*川「まぁ面白いだろうけど、ねぇ」
(゚、゚トソン「結婚するならそれくらいの人の方がいいかもしれません」
('、`*川「うーん……」
グラスを煽る。
度数の割にまろやかで飲み易い。これは明日の朝が大変だな。
590 : 思い出話のようです 12/12 : 2011/03/28(月) 17:57:31.96 発信元:59.84.250.131
(゚、゚トソン「ま、決断は早くした方が良いですよ」
('、`*川「そうねぇ……」
(゚、゚トソン「歳も歳ですし、もう後はないですよ」
('、`*川「じゃかましいわ!」
(゚、゚トソン「ふふっ、じゃあ、頑張ってくださいね」
それでは、と言ってトソンは電話を切る。
あっさり切りやがって……
月曜日、あいつに何持って行こうか。
魔王?伊佐美?いや、面白味がないな。
明日辺り、ショボンにおすすめを聞いてみようか。
深い味わいの中、私の意識は薄れていった。
最終更新:2011年11月12日 23:04