828 : いやあ名無しってほんとにいいもんですね : 2011/01/28(金) 22:55:23 発信元:121.102.74.111

( ^ω^)「ようやく完成かお…」

その男の前に立ちはだかる大きなもの…

──それは畳半畳分のかまくらであった…。

普通かまくらというのは雪国などでおなじみの雪で作られる半球型の住居だ。

それをこの男、ブーンは缶詰の空き容器で難なく作ってしまったのだ

構想1ヶ月、材料集めに3年弱、…製作費用は計り知れない。

( ^ω^)「思い起こせば──」

──3年前──

桜が咲き乱れる4月からブーンは社会人なった。

期待に胸を膨らませ、新都社の門をくぐった。

苦労して勝ち取った大企業新都社。

( ^ω^)「うはwww夢広がりんぐwww」

意気揚々と会社に向かっていく…。

そして何とか初日が終わり帰路につく。

ブーンの住むマンションの近くに差し掛かってきたことである。


829 : いやあ名無しってほんとにいいもんですね : 2011/01/28(金) 22:56:19 発信元:121.102.74.111

( ^ω^)「あ、こんなところに酒屋さんがあったのかお」

こじんまりとした雰囲気に明るい蛍光灯に照らされた色とりどりの酒のビン。

ブーンはあれこれ手にとって見てまた棚に戻す。そんな動作を15分くらい続けた。

( ^ω^)「いろいろあるけどこれにするお!」

悩んだ挙句選んだものは一般的には初心者向けのチューハイだった。

( ^ω^)「…さてと、お酒は決まったしおつまみおつまみ…。」

酒の量とは裏腹に一角のスペースに納まっていた。

( ^ω^)「…あー僕の好きなカルパスがないお…」

困惑するブーン。下に目を向けると銀色に輝く缶詰を見つけた。

( ^ω^)「おっ、これはww」

お弁当のおかずにもってこいの秋刀魚の蒲焼の缶詰だった。

( ^ω^)「よし!これにするお!」

意気揚々とレジに向かい支払いを済ませてその店を出た。

そのまま急ぎ足で自分の部屋までたどり着いた。


830 : いやあ名無しってほんとにいいもんですね : 2011/01/28(金) 22:56:59 発信元:121.102.74.111

がちゃっ、と部屋のドアを開ける。なんとなく新居の臭いが鼻を捕らえた。

そのまま来ていた服を放り投げテレビの電源を入れ先ほど買ってきた缶詰、

そして缶チューハイを並べた。

( ^ω^)「いただきまーすww」

ブーンは缶を手に取った。

プシュっという軽快な音がした。そのまま飲み込む。

カシスオレンジの爽快な味が口の中いっぱいに広がる。

( ^ω^)「いやあああやっぱ仕事終わりの酒はうまいおwww」

次に缶詰を開けた。そのまま皿に移し、頂く。

一口口に入れた瞬間さんまの風味とタレのさっぱりした味が口の中いっぱいに包む。

( ゚ω゚)「うっひょひょおおおおおおこれはうまいwwwうますぎるおおおおおw」

ブーンは幸せに満ち溢れた。

ほぼ毎日ブーンはこの缶詰を買った。もちろん酒のつまみとしてだ。

──そして1週間がたった。

いつものようにくたくたになりながらも部屋のドアを開けた瞬間のことだった。


831 : いやあ名無しってほんとにいいもんですね : 2011/01/28(金) 22:57:52 発信元:121.102.74.111

( ゚^゚)「うっ」

つんと顔をしかめるようなにおいがした。

とにかくどこから匂ってくるのか鼻をたよりに捜した。

──数分がたった。

( ^ω^)「ここかお」

台所のシンク。…つまり”流し”だった。

流しの隅に追いやられていたそれは缶詰から発されていた。

( ´ω`)「一週間もほったらかしにしていたせいだお…」

…ブーンはなにかとめんどくさがりやだ。

( ^ω^)「とりあえず片付けるお」

スポンジに洗剤をつけ、軽く水を付けて缶詰の空いたものを洗い始める。

( ^ω^)「ここまできてこれだけ集まったのかお…」

( ^ω^)「これは何かに使えるかもしれないお…!」

一般的には到底考え付かない思惑だ。

…その日から部屋の片隅に洗われた空いた缶詰の設置が始まった。


832 : いやあ名無しってほんとにいいもんですね : 2011/01/28(金) 22:58:42 発信元:121.102.74.111

きれいにかつ数がわかるように10個つみあがったら次のところに置く。

それを毎日繰り返した。酒は変わったが…。

──数ヶ月ほどたったころだろうか。

結構な数がそこにはつまれていた。

( ^ω^)「…これは…。」

偶然ブーンはテレビであるものを目撃する。

空き缶でできた家だ。意気揚々と語るその家の主人。

ブーンは心からすげえとおもった。

ふとブーンは空いた缶詰の集まりを見た。

( ::::ω::::)「これで…家を…」

( ^ω^)「いやいや無理に決まってるお!」

( ^ω^)「…でもかまくらならできるかもしれないお…。」

ブーンは机からA3サイズの紙を取り出した。

…が、一向にペンが進まなかった。なかなか難しいようだった。

──そして数週間がたった。


833 : いやあ名無しってほんとにいいもんですね : 2011/01/28(金) 22:59:24 発信元:121.102.74.111

やっとの思いで図面を書き終えた。そして壁に張り出す。

次の日から製作が始まった。

竹でアーチ状にし大体のカーブを作る。そして缶詰を積んでいく。

つなぎにはセメントを使った。

食べては洗って乾かし積む…。そんな作業を3年続けた。


──そして今に至る…。

( ^ω^)「さ、中はどうなっているのかな…。」

かすかに魚の臭いを漂わせていたかまくらの中に身をかがめながら入るブーン。

( ^ω^)「うん…。悪くないお…。」

ブーンはなんともない充実感に包まれた…。

( ´ω`)「やっとあの味から離れられるお…」

ブーンの挑戦は始まったばかりだ…!


834 : いやあ名無しってほんとにいいもんですね : 2011/01/28(金) 23:00:04 発信元:121.102.74.111

終わりです
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最終更新:2011年10月16日 23:52