901 :ぽち:2012/06/06(水) 23:36:03


奇妙なサーカス   後編


夢幻会が集めた兵達と白金こと「顔無し」の手勢の戦いは続いていた。
そんな中、妙にむっつりな顔でツキを、蹴りを繰り出し次々に人形どもを破壊する一人の男の姿があり
そしてその男に話しかげる騎馬の男の姿があった。

「久しいなケンシロウよ」
「お、お前は・・・・・・・・ラオウ!」

彼らは素手で人形どもを砕きながらまるで、それが日常であるかのごとく会話を続ける。
「貴様は今、何をしている?」
「幸い多少の蓄えはあったので働きながら大学に通い、資格を取って教師をしている」
「ほう教師か 世に言う学級崩壊とかもあるのか」
「多少は騒ぐが俺が『黙れ』と言えばおとなしくなってくれる さすが子供とは素直なもの
 時折珍妙な親が怒鳴り込んでくるが『貴様ごときに何がわかる』と理を尽くして話せば落ち着いて話を聞いてくれるな
 学級崩壊なぞ本当にあるのか時折疑問に思うくらいだ」
「それはなによりだな トキはどうしている」
「トキ兄さんは資格を取り、整体師、鍼灸師として働いている そういうあなたはどうなのだ」
「・・・・・・・・・・笑うがいい 天に挑みこの世を掴むといいながら、結局はドカタや警備員で糊口をしのぐ日々よ
 今は北海道の牧場に住み込みで働いておるわ 黒王の面倒も見てくれるしな」
目じりに光るものを宿らせながら天を仰ぐラオウ。


そして白金の前に数名の男たちが姿を現し、ただ一人老人といっていい容貌の男性がにらみつける。
「終わりだ白金よ、貴様のウザっちい横恋慕もこれまでだ」
だが、追い詰められたはずの『顔無し』は全身から凄まじいまでの闘志を湧き立たせる。
その激しさたるや、遠く離れているはずの周囲で戦う男たちの幾人かが思わず反応してしまうほどだった。
「礼を言わせてくれないかな、シマダくん。キミはいま、僕がこの世で最も、この手で殺したいくらい憎んでる連中をわざわざ僕の前に連れてきてくれたんだ」
お前あいつに何かしたのか全然記憶にないよ、といった感じの彼らに『顔無し』は語りかける。
「まずはキミだよカトウナルミ!我が愛するフランシーヌの生まれ変わりであるエレオノールの心を手に入れてるよね。
 そしてエレオノールにとどまらずしろがねのファティマ、しろがねOの馬 麗娜に
 国際アクション女優のミンシアといったか?そしてローエンシュタインのお姫様にフランスの女教師、いったい何人の女性の心を手に入れれば気が済むのかね?」

周囲のジト目に焦るカトウナルミ。
「い、いや俺のせいなのか?俺が悪いのか?」
「それにキミらも何人事みたいな反応してるんだろうね、我が息子才賀勝よ。
かつて通っていた学校のクラスメートに動物使いの少女、同じサーカスの・・・・リョーコといったか?
 果ては黒賀村の三姉妹とすこしは自重して欲しかったね、覗き見しといてなんだけどさぁ
 そっちの男、お前もだよ!」
へ?自分?といった感じに戸惑う眼鏡男
「そうだよお前だよ!内務省特務機関超能力支援研究局、B.A.B.E.L.の皆本光一!
 小学生三人に手ェだしたあげくそのうちの一人の姉と母親と、同僚の部下な女子高生に上司の秘書にも手ェだしやがってこの鬼畜が!」
誤解だ冤罪だ訴えるぞこの野郎!と喚く眼鏡男を尻目に『顔無し』の演説?は続き
「お前たちみたいな複数の美女美少女をげっとするなどという人類最低最悪のクソッタレ野郎は絶対生かしておくわけにはいかない!ディスプレイの前の皆もそう思うだろう?
 だからボクは

スパーン!

突然背後から頭を叩かれることで中断する。

902 :ぽち:2012/06/06(水) 23:37:58

「な、なんだ?」
振り向いた彼が見たものは「蜂のように刺し!ゴキブリのように逃げーる!」
とある青年が「師匠!」と土下座したという噂が流れるほどの、それは見事な逃げっぷりだった。
「お前もだ横島忠男!元幽霊巫女さんに狼娘に狐娘にロボ子に竜神とやら!
 お前はいったい何人に手ェだしてるんだぁ!」
一言怒鳴ると再び嶋田老達に向かい合う。
「そんな人の世の秩序を乱すクソッタレなリア充どもをこの世から皆殺しにする、それもまた僕の目的のひとつなんだよ」
そう呟くと、掌の中のボタンを押す。
「何をした」
「たいした事じゃないよ ただの合図さ・・・・・・・・同志たちへの、ね」

「猛虎高飛車!」
一人の、お下げの少年がまた一体人形を破壊する。
「やれやれ、人形の数もかなり減ったしそろそろ勝ちが見えて・・・・きた・・・・・・・・・なんだありゃ?」
彼が思わず絶句したのも無理はない。
彼らの戦場である小さな古城を包囲するかのように数万を超える男達が現れたのだ。
人種も年齢も体格も全てまちまちな彼らに共通するのは、その眼光であった。
強烈な憎しみに燃えるその瞳だった。

そして彼らはいっせいに手を、斜め前方に向かって突き出す。
まるで誰かに忠誠を誓うかのように。
「「「「「「我ら名前をしっと団!」」」」」」
「「「「「「正しきしっとの名の下に!」」」」」」
「「「「「「振るう刃はリア充のみを!」」」」」」
「「「「「「背後は血潮の海となる!」」」」」」
ひときわ巨体を誇る(ただしそのほとんどは脂肪)白いマスクを被った男が吼える。
「特別顧問からの連絡だ!幾人ものリア充どもがいま特別顧問のもとにいるらしい!
 われらの目的はそいつらの抹殺だ!
 諸君!正義は我らのものぞ! ディスプレイの前の皆も我等の味方だ!」

「お前ら何考えてるんだ!お前らが味方してるのが何考えて何しようとしてるのかわかってるのか!」
義父からの呪いとでもいうべき「正義の味方たるべし」という意思を義理の姉やら同級生やらの美少女「たち」によってたかって矯正された赤毛の魔術使いが叫ぶが意に介しはしない。
当然だ
たとえ人類が滅びることとなろうともリア充をこの世から抹殺すること以上に正しい事などありえないのだから

なあ、あんたもそう思うだろう?

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最終更新:2012年06月07日 23:51